2-6-4
2-6-4
そして9月になり新学期も始まり、俺はアラタに薦められていた剣道部に入部して、今度は剣道部員として秋の都大会に向けた練習が日課になり、毎朝と放課後は学園の剣道場で汗を流す日々が続き、勇者としての剣術の練習はしていなかった。
そんな生活にも慣れてきて部活の練習ではどうにか少しずつ他の部員とも互角に立ち会えるようになってきていたので、ひょっとすると都大会に出場できるかもと思っていた。
それと楓も新学期から学園に転向してきて、剣道部に入部し毎日練習に励んでいるようだったが、クラスが違うのでなかなか話す機会はなかった。
そんなある日に夕飯を無言で食べていると突然母が俺に相談事を言い出した。
「急な話なんだけど、光ちゃんが今度の連休に大学の説明会や体験入学会に出たいから、また2、3日泊めてくれないかって田舎から電話がったのよ。どう平助、泊めてもいいかしら」
俺はもうそんな時期か、私立大学で入試の早い学校だと後1年だからな。
特に推薦やOA入試だともう1年無いのか、俺もそろそろ大学に行くなら本腰を入れて勉強しなければヤバイかなと思い、
「勿論、2階の部屋も空いているし、2、3日なら何の問題もないよ。それに勉強を教えてもらえるしね」と母との会話のない食事から、また家が明るくなるなと喜んで了承した。
「じゃ、いいのね。そう向こうには伝えておくわ」と母が次の日にでも田舎に電話をするようだった。
それから、毎日の練習が忙しくて光ちゃんの事はすっかり忘れていたが、9月のある金曜日の夕方に、俺が学力試験が近いので今日は剣道部の練習が休みになって学校から早く帰ってきていた。
しかし、やっぱり勉強はせずに部屋でスマホをいじっていると
「こんばんは、お久しぶりでーす」と玄関から若い女性の明るい声がしたかと思うと、直ぐに「はーい、久しぶり光ちゃん」と母の声もした。
従妹の光ちゃんが無事に着いたみたいだった。
「そっか、今週体験入学会があるのか」とスマホを止めると、
他に何もする事がなかった俺は、なにか荷物でも運ぶのを手伝おうかと2階から下りてみると、玄関には光ちゃん少し小柄な女性の姿があった。
「あれっ、光ちゃんってこんなに小さかったかな」とよく見ると、それは、どこから見ても俺を色仕掛けで騙してまんまと逃げたヒカリがまるで学校帰りの様に制服姿で悪びれた様子もなく笑顔で立っていた。
彼女の姿を見て少し頭から湯気を出していた俺が「このやろう」と叫ぼうとしたが、彼女がそれより先に俺に気が付くと
「元気だった、平ちゃん」とニコニコの笑顔で向こうから挨拶してきたので、
「この女、また俺から金を騙し取る気だな、今度はどうやって俺を騙すつもりだろう、絶対最後にはとっちめてやろうか」と思ったが、俺の体は思いとは裏腹に靴もはかずにさっさと走り出し、気が付くと母の目の前である事も気にせずにヒカリを思い切り抱きしめていた。
急に抱きつかれても彼女は驚きもせずに、俺に顔を近づけて
「ただいま、私の素敵な勇者様」と彼女が耳元で呟くと、俺は思わず
「お帰り、俺のかわいいお姫様」と言ってしまうほど、俺はまだ心の底までもどっぷりと彼女の虜のままだった。




