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奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
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1-1-2

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 突然、メールの着信音が鳴った。こんな朝早くから誰だろうと開いて見ると大会本部事務局からだった。

「 勇者様 各位

ご参加された勇者の皆様、無事に元の世界に戻られましたでしょうか。

こちらの手違いで、別の場所に送喚された勇者様は誠に申し訳ございませんが本部事務局までご連絡して下さい。

なお、本部事務局に時計の落し物の届け物がございますので、心当たりの方は本部事務局まで連絡して下さい。         本部事務局より」

「落し物の連絡までしてくれるとは、至れり尽くせりの大会だなぁ」と思ったが、

「おいおい、このメールどの回線を使って送信しているんだ」

そう考えるとこれは面白そうなので、お試しモンスターのことでもメールして聞いてみるかと思ったが通信料がべらぼうに高いといやなので止めてしまった。


 続けてメールの着信音が鳴った。また本部事務局かと思い開いてみると

「勇者様へ 図書館横の公園でお待ちしています。 お試しモンスターより」

おいおい、今度はモンスターからだ、俺の部屋に現れるかと思っていたが公園だと、冗談じゃないぞ。

もしも、公園で暴れて人にケガでもさせると大騒ぎだ。

母に叱られてお小遣いを減らされるどころの問題じゃないぞ。

急いで返信しないと、まぁ、恥ずかしいけどとりあえず発信名は勇者でいいか

「直ぐ行きます。決して暴れないで下さい。 勇者より」

 

 俺は、お試しモンスターに直ぐにメールを返信すると、どんなやつが待っているのか、もし、異世界で見かけた気味の悪いやつだとどうしようか、聖剣や盾も手元にはなく、たった1週間の新米勇者に何ができるのかと心配しながら、取り敢えず金属バットを片手に持ち急いで自転車を飛ばして公園に向かった。

数分で息を切らして公園に着くと、いつもの日曜日の朝の公園と変わらず静でそこにはモンスターの姿はどこにも無い。

 ただ、この辺では見かけない制服を着た少し小柄な女子高生が立っていた。


 こんな朝早くから汗を掻きながらハァハァと息を切らして片手に金属バットを持った男が若い女性に声をかけると、絶対俺の方が怪しまれ変態と勘違いされて警察にでも通報されかねないと思ったが、そんなことより人がケガでもすると大変だと、思い切って後ろからちょっと尋ねてみた。

「すみません、公園で怪しい人を見かけませんでしたか?」

「怪しい人ですか、いいえ、見かけませんけど」顔を振り向いて答えてくれると

一目見て昨夜見ていたアニメのキャラなんてなんだったと思うほどのショートカットの小顔で目の大きくて、めちゃめちゃかわいい俺の究極の理想のタイプだった。

「もしかして、あなた勇者様ですよね?」とその女子高生がいきなり俺に訊いてきたので彼女を見て半分違う世界に行ってしまっていた俺だが、勇者の響きに一瞬驚き、息を呑んだ。

ゆぅ、勇者って、もしかして俺のこと知っているのかな、と不思議に思ったが

「はっ、はい。一応ゆぅ、勇者ですけど」

「もう、本当に困りますね。仕様書と裏書をちゃんと読んで下ださいよ」

俺は、彼女の言っていることが直ぐには理解できずに、いつもの癖で取り敢えず謝ってしまった。

「えっ、すみませんって、それで、君はどなたですか」

「私のこと覚えていませんか」と彼女は最初は少し残念そうにしていた。


 訳が分からず、咄嗟に勇者と答えたら、私を覚えていませんかと急に言われても、こんなかわいい娘は俺なら絶対に忘れるなんてないは筈だ。

少し恥ずかしさを我慢してじっくり彼女の顔を見て、よく考えてみてもやっぱ思い出せず、さらにじっくり見ていたら

「そんなに、見ないで下さい。恥ずかしいじゃないですか」と注意されたので、

仕方なく、見るのを止めてまた訊いてみた。

「失礼ですけど、以前どこかでお会いしましたか」

よほど、思い出して欲しかったのか、俺の問いに落胆し

「あっそぅ、もう結構です。じゃ、本題に入りますね。

私がさっきメールしたお試しモンスターで、えーっと名前は森ヒカリです。

今は人間の姿をしていますが夜はモンスターに変身しますので、これからよろしくお願いします」


 俺が彼女を覚えていないと分かると彼女は事務口調で次々に話していったが、俺の頭はモンスターだの、覚えていないのかだの、彼女が言う事が何のことだがさっぱりで、頭の中は混乱していたのでついつい口調が荒くなった。

「夜はモンスターに変身します。よろしくって、おいおいどういうことだ」

「詳しお話しはここでは何ですので、後はお部屋でお話します」

「お部屋って、どこのお部屋だよ、まさか俺の部屋なんてことないよな」

「準備がありますので、先に帰っていて下さい。それじゃ、また後で」と彼女は自己紹介だけして、詳しい話は後だと言って、さっさとどこかへ帰ってしまった。

 俺は、彼女を引きとめようと考えたが、若い女性の手を摘むと変態扱いされては大変だと諦めて事情がよく分からないまま公園に佇み、あんなかわいい娘と俺が知り合いだなんて

「森ヒカリ、モンスター、よろしく、また後で」頭の中で疑問がグルグル回りだし、未だに訳が分からず頭が痛くなり始めたので、仕方なく自転車を押して家に帰った。


 家に帰り着くと母がそわそわしながら玄関で俺の帰りを待っていた。

「平助、ちゃんと準備できているの、今日から光ちゃんが来るのよ」

そう言えば従妹の光ちゃんが夏休みを利用して田舎から東京に遊びに来るとは聞いていたが、それが今日だったとは完全に忘れていた。

今日は朝からドタドタとなんて日だと頭にきたが、2階の部屋の準備は未だなので、さっそく隣の部屋を掃除しなくては

「んん、ん、確か、さっきの子もヒカリだったよな、偶然かな。

んん、ん、俺の部屋の隣にもう一部屋あったかな、確か有ったかな。

ん、んん、従妹の光ちゃん、そんな娘いたかな、いたよな」


 また、急に色んな疑問が出てきた。俺は物事を深く考え出すと頭が痛くなる性分なので、朝から訳の分からないことばかり起こり、さらに頭が痛くなってきたので薬でも飲んで部屋で横になろうと2階に上がると隣に確かにもう1部屋ある。

そっとドアを開けると俺の私物で物置状態だ。確かにもう1部屋あるな。

俺、どうにかしたのかな。従妹の光ちゃん、確かにいたような、そうそう子供の頃田舎で一緒に遊んだよな。確かに遊んだ、遊んだと自分で自分を納得させていた。


 これも異世界への召喚と送喚を僅か1週間間で行った後遺症かなと納得したが、まだ頭が痛かったが薬は飲まずにいた。

それから、隣の部屋の掃除に1人で3時間もかかりきれいにしたが、自分の部屋のベットの上は確保したものの、ただ荷物の多くを一先ず移しただけなので今度は俺の部屋が物置状態になってしまった。

相変わらず机の上は数年前から作りかけのパズルがそのままだったし、剣と盾のおもちゃは机の引出しに入れただけだし、

「あっ、仕様書と小袋、福袋が入ったいつもの赤いカバンは、どこだ、どこに置いたのだ」案の定どこかに紛れ込んでしまったようだが、その時にはもう簡単には見つけ出せない状態になっていた。





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