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剣道場に行くと既にアラタと楓さんは剣道着に着替えていた。
いつもならお昼寝をした後なのですっきりしている筈の奴の顔が、何か考え事でもあるのか珍しく暗かった。
午後の練習を望が見学をしてもいいかと訊くと「それは、かまわん」と許してくれたが、余りにも深刻そうなので
「おい、今日は顔が暗いぞ、何か悩み事でもあるのか」と尋ねると
「すまんな平助、どうしても教えてくれないか、おいしいスイーツの店を知らないか」と明日行くお店のことで悩んでいた。
「何だそんな事で悩んでいたのか」とこいつも俺と変わらない男だったと嬉しくなり、以前ヒカリと行く予定で調べていたことが役に立ったと、いくつかの店を教えてあげると
「硬派の平助が、こんなに店を知っているとは驚いた。人は付き合う相手でこうも変わるものかな」と納得していた。
アラタは悩みが無くなって急に明るくなったが、今度は何か思い出したらしく
「そうだ、急にすまんが、明日の朝の練習は学園の剣道部も一緒だ。安心しろお前の知っているや奴ばかりだ。お前も俺だけじゃなく他の相手とも立ち会った方が、自分の腕も分るし、絶対お前の為になると思って頼んでおいた」
「そうだな、すまんな気を使わせて。俺も剣術を初めて1ヶ月でどれほどの腕になったか、自分がどれほど強くなったか知りたいし」と了承した。
「そうだ、この際だからお前も剣道部に入らないか、そうそう練習の後は庭でBBQもあるぞ」と俺を驚かせた。
「おいおい、入部はちょっと、俺は剣道のことはまったくの素人だし、それに急にBBQなんて、明日の午後はみんなでスイーツじゃないのか」と念を押すと
「しまった、BBQの予定を先に入れていたんだ。明日は南さんとの約束が」とアラタが酷く残念そうにしていたので
「明日のBBQは南と望も誘えば済む事だろう、それは俺が2人に尋ねてやるから、でも俺の剣道部の入部は少し考えさせてくれ」
「入部のことは余り気にするな、顧問の先生にも俺から許可を頂いたし、3年生がいないので上級生に気を使わなくていいし、それに秋の都大会もある。俺以外の者と戦ってみるのもいいぞ」と言われたが、
ここまで世話になっているあいつのの頼みだったし、本番前に試合ができることは必ず役に立つと思って前向きに考えると返事をした。
「午後の練習は、少し息抜きだ明日の為に剣道を教えてやる」と、アラタは俺に剣道の道具一式を着けさせると、簡単に剣道のルールを教え始めた。
「お前も知っていると思うが、これが面、これが胴、これが籠手だ。こう入ると1本でお前の負けだ」と竹刀を持って実演してみせると
「全部は難しいので、相手の攻撃を交わして、相手の面と胴だけを狙って叩け、
そして素早く離れろ。お前には初めてだから籠手の攻撃を交わすのが難しい筈だ。それだけを注意すれば、今までの練習でどうにかなる」とアラタは簡単に言うと
「じゃ、まずは籠手を避ける練習からだ、いくぞ」と楓さんも加えて試合形式の練習に入った。
さすがに奴の得意な剣道だ、いくら教わっても籠手の攻撃は交わせなかったが
「俺の籠手が交わせるのは最低でも有段者だ、今のお前が交わせないのは当然だ、気を落とすな。お前はまず闘いに慣れることを考えればいい。
そして、相手の隙を見つけて素早く叩け」と俺を励ますが、さすがにあいつにに叩かれ続けた俺の手が痺れてきたので休憩を取った。
籠手を外すと手が腫れ上がっていたので楓さんに氷で冷やしてもらうと
「また南に叱られるな、今日も薬を塗ってもらわないと」と溢してしまった。
「おいおい、それはどういうことだと」とそれを聞いたあいつの顔色が変わったので、しまったと思ったが裸の俺が南に薬を塗ってもらったとは言えずに、その後の練習は「少し息抜きだ」が何処かに飛んでいってしまった。けど、楓さんは激しい稽古ができたと喜んでいた。
俺より少し送れて途中から見学に着ていた望が自転車の件でアラタにお礼を言うと、奴は自転車の2人乗りは危険なので絶対しないようにと俺を叱り、今日は普通の稽古なので調査員の彼女にも何か武術はやっていないかと訊くと恥ずかしそうに「えーっと、剣道を少々」と、とんでもないことを言い出すので
「嘘、あいつ俺には何にも言わなかったけど」と俺は驚きの余りしゃっくりが止まらなくなったが、剣道着姿の彼女を見るといつもの優しい彼女とは違い凛としていたのでしゃっくりが止まった。
彼女は軽い体操と素振りをすると練習に参加し。それから午後の稽古を真剣につけてもらったが、剣道着姿の彼女と向かい合うと、昔こんな場面を経験したことがあったような感じた。
望は軽く俺に稽古をつけると夕飯の支度の為に先に帰ったが、アラタは彼女の動きを熱心に見ていて「たぶん彼女は、全国級だ。10本の指に入るだろう」と俺に教えてくれたが勇者の実力の調査に来るぐらいだ、それは当然かもしれない。
すると楓さんが「あの人は全国2位です」と教えてくれたが、楓さんは以前から望を知っているのか、そんな感じだった。
俺はアラタにお前の剣道の腕前はと訊くと、「大したことはない、今年はケガで出ていないが、去年は個人戦と団体戦で総体優勝くらいだ」と高校1年生で優勝したと、とんでもないことを言い出した。
そう言えば学園の剣道部は全国大会出場の常連校だったことを思い出すと、明日の朝の練習は俺が参加しても大丈夫だろうかと心配になった。




