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奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
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 夕飯の後、いつものように俺が公園に行こうとすると、玄関先で時計を気にしていたヒカリが

「今夜の練習は、いつもの公園ではなく別の所でします。お迎えが来ますからもう少し待って下さい」と急に言い出したので

「どこなの、ひょっとすると夜のデートかな」と思って俺が訊き返すと

「そこは平ちゃんが、一番良く知っている場所よ」と笑って答えた。

 少し待つと黒の自家用車が玄関に止まり、2人が乗り込むと行き先も言わないのに直ぐに発車した。

 

 車の中で隣に座ったヒカリにデートの場所か昼間見た変な夢かの話をしようかと迷ったが、最後の夜なので彼女と出会った時から気になることがあったので話してみることにした。

「公園で最初にヒカリちゃんに会った時に、

君は私のこと覚えていませんかって俺に訊いたよね。

そして、俺が以前どこかでお会いしましたかって答えたら

あっそぅ、もういいですって冷たく答えたけど、

その時、俺ははっきりとは思い出せなかったけど、こうして君に触れていると、ずーっと昔に会ったことがあるんじゃないかと少しずつ思い出していたんだよ。

それで、やっと、思い出したんだよ。遅くなって、ごめん」

「やっと思い出しましたか。私は公園で平ちゃんを一目見て思い出しましたよ。

私の愛するあの方だって、それで飛びついてキスでもしようと思ったんですけどね、でも貴方は・・」

「何だ、君は直ぐに思い出せたのか。俺はやっと思い出したていうのに、誰かが俺を困られようとしたのかな」と俺がふざけると

「貴方はいつもそうやってふざけていましたよ。でもそれが私の心を和ませるんですよ」

「ごめん、昔からそうだったのか。それで、俺の愛する君の本当の名は」と彼女の名前を呼ぼうとした時、彼女は俺の口に手をやって

「私は、ずーっと貴方だけが大好きな森ヒカリですよ。昔も今もそして未来も。

でも5年後は変わっているかもしれませんね」とにこやかに笑ったので

「えっ、どうして」と不思議そうにすると、彼女は俺の腹に1発強めのパンチを入れると

「5年後も、森ヒカリでいいんですか」と酷く怒ってくるので

「俺は、5年も待てないや」と答えると

「じゃ、3年後にしますか」と彼女は笑って俺に寄り添った。


 車の後部座席で2人でじゃれ合っているうちに広い林を抜けると、俺の一番良く知っている場所、そうアラタの剣道場の前に着いた。

俺がお昼に外した扉には「修理中」の紙が張られていたが、いつもとは違いアラタの家には似つかわしくない男が出てきて「こちらへ」と2人を誘い入れた。

 剣道場に入ると奥でアラタは珍しく引きつり笑いをしていたが彼の回りを数人の屈強な男が取り囲み異様な雰囲気だった。

すると、男達の横に座っていた1人の老人がヒカリの前に出て頭を下げて彼女に話しかけてきた。


「姫、お懐かしゅう御座います。今宵はそのようなお姿で参られましたか、その姿も懐かしいですな」

俺は、ヒカリの女子高生の姿が懐かしいとはどう言う意味かと思ったが、

「じぃ、これはどういう事です。何のまねですか」ヒカリが驚いた顔で訊くと

「この無礼は後でこのじぃが責めを負います。ですが、姫がお相手をお決めになられたとの話を聞き、まことに申し訳ございませんが」と頭を下げると、

「こうも新手が多いとわたくし1人ではどうしようもなくて、申し訳ございません」と今度はアラタがすまなそうにすると

「アラタ様は何も悪くは御座いません。わしらがちょっと汚い手を使いましたもので、それで仕方なくアラタ様がお話下さったのです」と老人がアラタをかばった。

「じぃ、汚い手とは、何をしたのです。無関係なアラタさんに」

「それは後々アラタ様にお許しを頂くことにしまして。姫、姫のお相手は今夜はご不在ですか、今夜、最後の練習のために剣道場へ2人で来られると聞いていたんですが」と老人は辺りを見回すが俺とヒカリの2人しかいないのを不思議に思い、

「そこの従者よ、勇者様はいずこにおられるのだ?」と俺に訊いてくる。


 確かに俺は見た目もお姫様とは比べようも無い貧乏顔だし、服もノーブランドのトレーナーで身長も普通だし、がたいも大きくはないし、でもヒカリと手を繋いで隣に居るってことはどう見ても俺が勇者でしょ、従者扱いは酷いよなと

「ご老人、ご心配されるな。その勇者はさっき俺がコテンパンに倒して、お姫様は我が物になりました」と冗談を言うと

「あはは、面白い冗談を言う従者よなぁ。それで、お前はなぜ姫の手を握っておるのだ、もしかして、お前の名は何と言う?」と訊いてくるので

「中村平助、17歳、高校2年生」と答えると

「お前が中村平助か、こんなちんけな男が勇者だと」と一同が笑い出した。

「姫、何を考えておられるのです。国の存亡がかかっている時に。その男が勇者ですと。我々が望む国を救うべき勇者ですと。冗談にしては余りにも酷すぎませんか」と老人が彼女を糾問したが、

「いつもいつも、貴方達は見た目だけで決め付けていませんか。貴方達の重要なのは家柄や財産、形式や慣習などで、ものの本心を観ようとはしない。その結果が祖国を滅ぼそうとしていることが、まだ分からないのですか」と激しく反論すると、一同はシーンとなった。


「姫が、そうおっしゃるならば、その証を示して下さい」と老人が男達に合図を送ると、アラタを取り囲んでいた男達の中から1人が出てきて老人の横に着くと

「この者は、まだ交流会には出場しておりませんが、腕は確かです。

この者と戦って勝てば、我々は何も言わずにこの場から消えましょう。

もし負けたならば姫は我々と一緒に国にお戻りを願います。

そして、国を救うべき新たな勇者をお探し下さい。」と言って、俺の是非を確かめもせずに剣と盾を手渡した。


 俺は老人やヒカリが言っていることがまったく理解できなかったので、戦うか否か思案していると、

「じぃ、何を無茶なことを言うのです。平助様はまだ17歳、これから剣の修行をなさるお方だと言うのに、じぃの警護とはまだまだ差があるのは明らかでは有りませんか」確かに警護の屈強な男と俺を比べると一目瞭然であった。

「姫、勇者がこれから修行ですと、それでは遅いのです。それでは間に合わないのです。姫と一緒に今すぐ国に戻って頂けなければ間に合わないのです」と老人は言ったが、

「ここで平助様にもしものことがあれば、私もここで命を立ちます。国の存亡やお父様などは関係有りません」と彼女が真剣な顔で答えると、老人は少し思案して

「分かりました。もし10分間この者と戦って倒れなければ、その男の素質を認めましょう。それでよろしいですか、姫」と彼女に合意を求めたが、彼女は納得していないように見えたので、

「俺はそれでいいよ。ただし、人と人とで正々堂々と最善を尽くすなら」と言うと

「望むところだ」と護衛の男が応答した。

「これで決まりだ」と老人に言うと、まだ彼女は納得していないようなので

「すまないヒカリ、俺も勇者だからここでイヤですって、逃げ出せないんだ」

「そうですよね、勇者様は逃げ出せないんですよね」と目に涙を貯めていたので、俺は彼女を抱きしめて

「心配はいらないよ、俺も一様勇者ですから」と冗談を言うと

「また、ふざけってばっかり」と彼女はニコッとした。


 剣道場の中央で互いに剣と盾を持ち向かい合って「正々堂々と最善を尽くそう」と両者が口にすると、老人が「始めよ」と開始の合図がなされた。

 最初は両者共に間合いを取って相手の動きを見ていたが、直ぐに時間が無いと男は剣を振り上げてかかってくるが俺は盾で受け止めると、アラタのそれとは格段に違いズシッと重かった。体格がものをいっている。

 そして男は剣を振り上げて上下左右から次々とかかってくる。

これではマズイと少し離れて距離をとって息を整えて、今度はこちから剣で攻撃すると、男は軽く盾で受け止めて、さらに前に出てきて俺に攻撃をしてくる。

体が出来ていない俺の攻撃は利かないようだ。

このような攻防が続いていると力の差が直ぐに出てきて俺は押されぱなしでいた。

 たかが10分、男の攻撃を交わし続ければ、最悪逃げ回ればどうにかなると考えていた俺が馬鹿だった。いつもの相手とは違い今の相手は護衛でその道のプロだ。それにいつもの公園の練習と違い、ここは剣道場で広さは限られている。どう逃げても隅に追い込まれてしまい、そこで集中攻撃を受けてしまう。いつまで耐えられるだろうか。

「後5分、何をしている、グズグズするな」と老人の声がすると男の剣にも力が入り俺は盾で受け止めるとさっきよりもズシッと重く、手にはそのズキッと衝撃が走った。

そんな攻撃が次々と続くとどうにか盾で受け止めはするが、そのたびにズシッと手に負担がっかり、ついに盾が握れなくなり手から離してしまった。

「しまった」これでは負けると思い逃げようとしたが、足にもその衝撃はきていたらしくガックと跪いてしまい、動けなくなった。

 ここぞと、男が渾身の力を込めて剣を振り下ろし、それを剣で受け止めようとしたが剣が上がらない、剣を持つ手にも力が入らないのだ。

「これで終わった。ヒカリは国へ連れて行かれてしまう」と思った瞬間、俺はなにも叫ばないのに、いや叫んでもできやしないのに、床から氷の壁が出てきて男の攻撃を遮った。

「ばかな、叫んでもいないのにアクアーウォ-ルが出現した。聖剣があの男を認めた」と老人は驚きと共に10分が過ぎたことを告げた。


 その後、俺は護衛の男に「すまない、約束を破ってしまって」と謝ると

「気にするな、お前は叫んではいない。あれは聖剣の意志なのだからどうしようもない。お前は聖剣に認められたのだ」と許してくれた。

今日のところは、老人は俺をどうにか勇者と認めたらしくヒカリに挨拶をして護衛達と共にどこかに消えて行った。

 アラタは「後の掃除が大変だ、また苦情を言われるぞ。今日は2回目だ、なんて日だ」と笑いながら、車で帰る俺とヒカリを見送るとサウナに行った。後から聞くとメイドの楓さんがあいつらに捕まっていたらしいので、アラタも手が出せなかったみたいだ。

 車の中で隣に座ったヒカリが俺に話しかけようとしたらしいが、俺は直ぐに眠ったみたいだ。たぶん朝は剣道場でアラタ、昼は闘技場で半獣、夜は警護の男と3連戦だったので肉体的にも精神的にも相当疲れていたのだろう。ヒカリとの最後の夜と言うのに馬鹿な男だ。


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