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奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
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 8時頃にアラタの家に着いたので少し早かったかなとベルを鳴らすと、メイドの楓さんが出てきて「若様は剣道場の方に」と既に彼が練習を始めていたことを知って驚いたが、楓さんもこんなに若いのに住み込みで働いているのか、感心な人だと少し興味が湧いてきた。

 また広い庭を抜け剣道場の扉を開けるとアラタが奥で休憩を取っていたが既に汗を掻いていた。

 こいつは朝はいつから練習を始めているのだろうか、朝食はちゃんと取っているのだろうか、もしかすると1日中剣道ばかりしているのかな不思議に思っていると

「すまん、平助、今から軽く朝食を取るので、その間に楓さんに柔軟体操から教えてもらってくれ、それから明日からは直接剣道場の方に来てくれ」と俺を楓さんに預けると、彼女が持ってきたサンドウィチを食べ始めた。なんだ、アラタもちゃんと朝食は取っているのかと安心した。


「それでは、平助様、まずは軽く柔軟体操でも」といつの間にかトレーナー姿になっている楓さんに柔軟体操を指導してもらったが、日頃から使わない部位や手足を違った角度に屈伸しても体が思うように曲がらない。

 アラタはサンドウィチを食べながら俺を見て少し笑いながら、

「それじゃ、直ぐケガをしてしまうぞ。いくら剣術の練習をしてもなんにもならないいぞ。ほらほら、力を入れて曲げろ」と楓さんに強く言うと、彼女がギュッと押すので「イタタ、イタ」と俺が音を上げると「硬派の平助もお手上げだな」と笑っていたが「最低限、そこは家で出来るように後で楓さんによく教わってくれ」と忠告した。


 どうにか柔軟体操が終了すると、軽くの筈なのに俺はここまでで息が上がっていた。すると食事を終えたアタラが「今日からまずは基礎練習からだ。俺は手取り足取り教えはしないので、俺を見て自分で感じて練習しろ。まずはこれからだ」と昨日貰った剣道着に着替えた俺に竹刀を渡すと

「1、2、3・・」と自ら数えて振り始めた。

俺も見よう見まねで竹刀を振ると

「力の入れ具合が・・、足の踏み込みが・・、ブツブツ」と言ってくる。

 本当はアラタはいい奴かも知れないと思い始めたが、数分もすると俺はアタラと同じ動きをしているはずなのにゼイゼイ息が上がってきたが、アラタは平気な顔をして淡々とこなしていく。

 俺を指導をする前に既に早朝ひと練習しているのにアラタのこの余裕のある表情、それに比べると俺は、この差はなんなんだ。

 俺を見てアラタは少し休憩をしようと墨に正座すると呼吸を整えるだけで疲れた様子はなかった。あいつは化け物か、それとも俺が・・。

 俺は、その頃には昨日と同じようにボロ雑巾のようにハアハアと息を切らしながら道場の床に大の字に寝ていた。


「平助、お前は半獣と戦ったことがあるか」急にアラタは訊いてきた。

「1度あるけど、戦ったと言うよりただ逃げただけかな」と答えると

「以前、俺は半獣と戦って不本意ながらケガをしたことがある。

もちろん相手にはそれ相応の深手を負わせたがな」

「あんなに強いお前がケガをするとは、その相手は相当強いのか」

「あぁ強い、強すぎて怖いぐらいだ。だが、あいつらも完全無欠ではない、隙は必ずある。半獣はその強い力で押してくる。それを避け続ければ勝機は必ずある。

そして、これが一番重要だが、半獣はそのままの姿では長くいられない。

そして聖剣を使いこなすことは出来ない。

なぜなら、聖剣は勇者しか起動できないからだ。

半獣に勝つには体力をつけて早く聖剣を使いこなせるようになること。

そして、一撃で倒すことだ、例えどんなことがあろうと躊躇せずに」

 そういえば、ヒカリが半獣に変身すると体力を消耗すると言っていたし、半獣は聖剣を使えこなせないのかと思ったが、でもなぜアラタが俺に半獣との戦い方を教えてくれるのか不思議だった。


「さぁ、5分たったぞ、次はこれだ」と言って、俺に防具をつけさせると「俺が攻めてくるのを避け続けろ」そして「相手の動きをよく見て感じろ」と言うのだ。

「感じろ、感じろ」と戦いは理論ではないことを教えたいのか、だがまだ剣術の練習を始めて1週間、剣道の練習を始めて2日目の俺には疲れは感じたが、ほかに感じるものはなかった。


 確かに昨日はアラタの攻めを上手く体の動きだけで交わせたはずだが、あれはまぐれだったのかも知れない。

今日はなかなか上手くは交わせない。いや、現実はこうなのかもしれない。

 仕方なく、アラタの攻めの動きが読めずに自分の体力と速さだけで攻撃を交わしていたが、数分で俺の動きが遅くなると鋭い一本が次々と面や胴に入り防具の上からでも俺が吹き飛ばされる。

 アラタと俺とは体格、身長はそんなに変わらないのにこの差はなんだろうか。

きっと、今まで1日をふざけて遊んできた俺と真面目に練習してきたアラタとの差だろう、その差が積もり積もってこうなったのだ。

「強くなりたい、強くなりたい」でも、俺は練習の途中でまた道場の床に大の字に寝ていた。


「さぁ、今日はこれからだ、平助、起きろ」と、床に寝ている俺を無理やり起こし

アラタは小さな剣を取り出し俺に渡すと名を呼べと言う。

仕方なく俺はアラタの剣を手にして「ハイドロソード」と呼び出し剣を大きくして構えると

「平助、聖剣を感じろ、聖剣が何を考え、何を求めているのか感じて会話しろ」

「冗談はよせ、俺に聖剣と会話しろだと、心や意志のない剣とどうやって会話するのだ。気が違ったのかアラタ」と反発したが

「心や意志がないだと、未だ分からないようだな、心からそう思うなら勇者になる資格などお前にはない。姫を諦めて、だまって引っ込んでいろ。

その剣が元に戻るまで一人考えてみろ、その答えが出なければ残念だが練習は今日で終わりだ。俺は、汗を掻いているのでサウナに行く」とだけ言い残し楓さんと2人して剣道場から出て行った。


 俺は広い剣道場に一人残されたが、どう考えてみても「分からない、分からない、何を言っているのだアラタは」

仕方がないので目を閉じ無心に聖剣の重みだけを感じてみるが、その答えは直ぐには出てこなかった。

「俺は何をしているのだ、何のためにこんなことをしているのだ」と考え始めた。

20分たち、25分たって俺が焦りを感じて答えを求めても剣には何の変化もなく、もちろん俺も何にも分からなかった。


 ふと、俺に考えがることがなくなったのか「勇者にとって一番大切なことは何か知っていますか」ヒカリが俺に問いかけた言葉が思い出された。

すると「お前は何のために勇者になるのだ?」と、どこからか声がした。

「何のため、俺はただ大好きなヒカリの笑顔をいつまでも傍で見ていたいからだ」

「毎晩出歩くそんな女のどこがいいのだ?」

「何か俺には言えない事情があるんだ!」

「お前には嘘をつき真実を話さない、そんな女のどこがいいのだ?」

「彼女も嘘がつきたくてついているのじゃないんだ!」

「お前はあの女が一生半獣のままでもいいのか、恐ろしい半獣のままでもいいのか?」

「それは、それは」声はヒカリを否定するばかりだった。

 

 俺は遂に反論できずに苦しさの余り剣を振ると突風が巻き起こり「ガチャン」とその勢いで俺の剣が届かないはずの剣道場の扉が外れた。

すると、何もなったように30分過ぎたのか剣は元の小さな剣に戻った。

「しまった、扉を壊してしまった。でもなぜだ、あの風は何なんだ。扉はここからあんなに離れているのに、決して剣では触れていないはずなのに」

 しかし、このままではマズイと扉に近づいてまた元に戻したつもりだったが、上手く出来ずに見た目が少し変わっていた。

「まぁ、これでいいか」と俺は小さな剣を道場の床に置くと黙って帰ってしまった。

 サウナから剣道場に戻ったアラタは見た目がおかしな扉を見て「どうにか挨拶だけはできたようだな。でも、ちゃんと元に戻せよな」とぼやいていた。




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