5-2-3
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「平助も一息付いただろう? じゃ、そろそろ始めるぞ」と先生の一声で俺は気合を入れ直して立ち上がったがやはり俺の足は重かった。
そして両者が対峙して初めの合図がかかった。俺の体力が既に底を付いていたので早やく指輪の力を使いたかったが、余りにもあっさり勝つと不自然に思われるので俺は自分からの攻撃は控えて副部長の攻撃を防ぐ事に徹した。
しかし副部長は体力を回復、温存させたかった俺とは違い休憩の間も軽く体を動かしていて動きが良かったのであわや1本の場面が多く見られた。
「さすが副部長だ、平助とは動きが違いすぎる」「さっきの勝利はまぐれだな」などと部員の声の中から
「平助、力を出さないか、このままだと補欠だぞ」とアラタの激が飛んできた。
「それは分かっているが・・」
「平助、攻めないか、引分けは無いぞ、勝負が決まるまでやるぞ」と業を煮やしたアラタが声をかけた。
「勝負が決まるまでやるって、俺は既に5試合目だぞ。むちゃくちゃ言いやがって、こちらにも都合があるんだよ」と愚痴が出てしまい、時間が経てば俺が不利になるのは確実だと
「先ずは1回は攻めてから、次に指輪を使うかな・・」と残っていた体力で思い切り飛び込むと、疲れていた俺が攻めて来ないと思っていたのか、不意を付かれ思いもかけずに見事に一本が入ってしまった。
「一本」のコールが響くと、信じられない事でも起こったのかの様に場内がざわめき出したが、指輪を使わなかったこの俺が一番信じられなかった。そして先生から
「平助、副部長にも勝つとは相当な実力だな。出場選手として考えておこう」と褒められた。
その後の練習も無事に終わって俺は皆から祝福されたが、少し恥ずかしかった。
「アラタが変な所で声をかけるから、ついつい・・」
「勝ったのはお前の実力だ。いつもお前と練習している俺だから分かるんだ。その実力がいつも出せればお前は確実にレギュラーだな」
「レギュラーか。これで2人とも全国大会に行けるな。楓もヒカリも喜ぶ。そうだ南はどうかな、誘ってみるか?」
「さすがに南さんは無理だろう、場所が愛知で宿泊だし、それにお金もかかる」
「お金は今度はお前が交流会の賞金で旅費や宿泊費を出してやれば良いのさ、それに南の母さんには俺から了解を取るから安心しろ」
「お前が南さんの親から了解を取ってくれるのか、交流会で勝てたのは南さんのお陰だし、それなら旅費なんて安いものだ」
「じゃ、戻って南に相談だ、ヒカリ達も2人より3人の方が楽しいだろう」
「そうだな、それに俺も南さんが応援してくれると嬉しいな、張り合いも出る。目指せ日本一だな」
「なんだ! 今まで日本一は目指してなかったのか?」
「言葉のあやだ」
家に戻ると母さんに大会に行ける事だけを話すと直ぐに南を訪ねた。
「3月の末に剣道の全国大会があるんだけど、応援に来てくれないかな?」
「全国大会、凄いわね、それに平助も出るの?」
「俺はもしかすると出られるかもな、でもアラタは確実に出るぞ」
「じゃ、行くわよ。でぇ、場所は?」
「それが場所は愛知県なんだ。それで宿泊しないと日帰りは無理だ」
「愛知で宿泊か、旅費とかがかりそうね」
「そうなんだけど。それは安心しろ。アラタが交流会のお礼に全部出してくれるそうだ」
「出してくれると言って貰えるのは嬉しいけど、でも赤の他人のアラタさんに全部出してもらうのは拙いでしょ」
「それが交流会で勝ったのであいつにも賞金が出たんだよ。それも凄い額だ」
「凄い額って・・もうしかして数百万円とか?」
「そんなには無いけど、旅費には十分な額さ。それに交流会で勝てたのは南のお陰だから気にしなくても良いと思うよ」
「私のお陰って言ってもね、宿泊するのが私1人だとやっぱり無理だよ」
「ヒカリと楓も行く予定だし、宿泊は女性3人だし、心配は要らないと思うけど、どうかな? それに暇な時間にヒカリ達は観光や買い物をするらしいぞ、どうだ一緒に行かないか?」
「買い物かぁ・・良いわね。分かったわ、母さんに頼んでみる」
「そうと決まれば、じゃ、俺も一緒に頼んでやるよ」
「そうね、母さんは平助に甘いからそれが良いわね」
その後直ぐに南の母親からも了解を得たのでこれで南も行ける事になったが、肝心のヒカリは既に異世界に戻っていたので連絡が取れないかった。




