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試合チ終了直後にヒカリが女子高生の姿風で呂から戻って来て偉そうな態度でじいさん監督から試合の結果を聞くと
「引分けですか、アタラさんは随分腕を上げられたようですね」と感心していたが、周りのスタッフは誰もその娘があの姫様と知らなかったので
「関係者以外は立ち入らないで下さい」と注意されてプンプンしていたが、じいさん監督が上手くスタッフに説明して許可を貰ったが監督の横から離れられなくなってしまった。
俺はヒカリとスタッフとのやり取りを見て笑っていたが、それで少しは緊張が和らいだ。
「おい、どうしてその姿に戻ったんだ、その姿じゃここでは部外者になるだろう」
「そうだけど、夫が試合をするのにその妻が傍にいないと不自然でしょ、それにこの姿ですと気兼ね無く平ちゃんに抱き付いてチュができるでしょ」
「そう言う事か、チュの場面をテレビで流されたら女性が俺に近づかなくなる作戦か」
「あら、私の作戦がよく分かったわね」
「それで悪いんだが次の試合は俺の好きなようにやってもいいか」
「そう来ると思っていたわ。こちらのチームの負けが無くなったので踏ん切りが付いたのね」
「さすが自ら妻と言うだけの事はある。俺の考えはお見通しだな」
「だって、その右手の剣は国宝の剣じゃないでしょ、もしかしておもちゃの聖剣なの」
「そうだ、相手もハイドロソード、同じ聖剣どうしで戦ってみたいんだ」
「本当にそれだけなの、今の試合を見て国宝の古い剣じゃ折れるかもと心配して、それで国宝の剣を守ろうとして止めたんじゃ」
「さすがに国宝は壊しちゃ拙いだろう。元々この剣は俺には使い勝手が良くなったし、なんせ古すぎる。もしもヒビでも入れば責任問題だし、無職の俺達に弁償は無理だ」
「そうだけど。でも分らないのは、それで平ちゃんはそれで満足なの、おもちゃじゃ全力で戦えないわよ」
「10分間ぐらいは大丈夫。俺が全力を出してもおもちゃは壊れないよ。それに今の俺の全力でどこまで伝説の勇者に太刀打ちできるのか知りたいんだ、だからどうしても同じ聖剣じゃないと・・」
「それであの薬も飲まない訳か、古の勇者では勝ちたくないんでしょ」
「あれは俺であって俺でないんだよ、だから・・」
「はいはい、そろそろ時間よ。じゃ、頑張って、くれぐれもケガだけはしないでね」と俺を急かした。
スピーカから第3試合目の両選手の名前が大きく流れたが歓声はまったく起きなかった。観客は2人の名前を知らないようだった。俺さえ自分の正式な名前を知らないのでそれは当然かもしれないし、伝説の勇者の名前は忘れ去られていたのだろう。
会場中央に対戦者2人が並びスクリーンに各自の顔が映し出されると、やはりその下に経歴や実績が出ていたが、ここからが違っていた。スクリーンにアップになった俺の顔に多くの観客が気が付いたのだろう「ヘイスケ」と男の声援が巻き起こったが黄色い声は無かった。今度は彼の経歴を見て歓声ではなく、会場がどよめき出したが彼は物静かだった。
審判から2人に注意事項の説明が終わると2人は対面した。
「伝説の勇者ってこんな顔なのか、それに40歳くらいかな。長旅で疲れただろう」と思っていると、副審が会場の隅に陣取ると2人は礼をして距離を縮めていくと
「始め」と審判の一声で歓声が最大限になった。
俺は両手で聖剣を持って構えた。いつものトンファーはホルダーに刺したままだった。これに対して彼も両手で聖剣を持って構えた。2人とも盾は持たずにいたが俺は聖なる盾と真実の剣を身に付けていた。