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奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
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4-6-4

4-6-4

控え室から長い通路を下向き加減で通り抜けると会場入り口に着いた。会場を見上げると外から見た感じよりも更に広く感じられた。2階から4階の観客席も相手側応援席の一部を除いて満員だった。

「おぉ、早朝にも関わらず入っているぞ。これで野次が少ないといいんだが」

「さぁ、お2人さん観客席に手を振ってね。スクリーンにアップになっているし観客には私達の顔が見えている筈なので下を向いても意味がないわよ」

俺達3人が会場に姿を現すと歓声が舞上った。さすがにヒカリに対する声援が一番大きかったが、観客は俺達2人の事は分かっているのだろうか。しかし、その心配は観客席からの声援で直ぐになくなった。それは、俺やアラタの名前を呼ぶ声が聞こえたからだ。


「おいおい、今アラタ様って聞こえたぞ、もう俺達の事がばれているぞ」

「今俺達の顔を見て気付いたんだろう、スクリーンだと4階からでも分るみたいだ」

「それじゃ昴さん達も気付いたかな」と先に会場に整列していた昴さんを見ると、やっと俺達に気付いたのか口をぽかんと開けて信じられないと驚いていたのが直ぐに分った。本部長の表情は俺にはよく見えなかったが、ヒカリが軽く会釈をしていたらにこやかに笑った。

「ほら、昴さんは今頃俺達が分ったみたいだな」

「これなら、作戦は成功だな」


朝9時から予定通りに開催セレモニーが始まった。国王から開催の宣言がなされると国王は衛兵に守られて貴賓席に下がったが、国王が試合に出れば勝てるのではないかなと思うぐらい元気だった。

「どこが心労だと、人の名前を駄馬の骨にしやがって」

「こら、ここでブツブツ言わないの、試合に集中して」

審判を挟んで出場選手が一列並ぶと、それぞれの国家が流れた。初めて聞く国家だが観客席は総立ちだった。それから俺とアラタが会場の隅に履けると、試合会場には第1戦の出場選手のヒカリと武道大会優勝者それに審判と2名の副審だけが残った。


スピーカから第1試合目の両選手の名前が大きく流れると歓声が高まった。

会場中央に対戦者2人が並びスクリーンには各自の顔が大きく映し出されると、その下に経歴や実績が出ていた。俺は字が読めないのでその内容は詳しくは分らなかったが、更に色々な数字が出ていたのでこれが賭けの倍率だと分った。


対戦相手は武道大会で一度は見ていたが余り覚えていなかった。

「あの時は、試合を放棄した後だったので相手を全く気にしていなかったな」と今度はよく見ると、さすがに賞金獲得第1位で武道大会に出場しただけの事はあった。体格はヒカリより2回り大きく筋肉隆々で力がありそうだ。彼女の体重は正確には知らないが体重差は50kgは違うのだろうか、こんな大男にぶち当たられると彼女はひとたまりもなく床に薙ぎ倒されるだろう、しかしそこは彼女の経験と技量でどうにかする筈だ。


スクリーンに映るヒカリの顔の直ぐ下に大きく文字が出ていた。これが正式な名前かなと思ったが、長い文字がズラズラと書いてあり、どこまでが名でここが苗字がさっぱり分らない。

「セカンドネームや母方の名前や父方の名前等もある筈だから、ありゃ、じゅげむだ。俺にも覚えきれない名前だな」と諦めた。

審判から2人に注意事項の説明が終わると対面し副審が会場の隅に陣取ると互いに礼をして、観客席からの歓声が盛り上がり始め2人が距離を縮めて互い目が合うと

「始め」と審判の一声でその歓声が最大限になると俺は試合に引き込まれた。

ヒカリは右手に国宝の剣と左には俺と同じ特注のトンファーを持って構えた。これに対して相手方も右手に聖剣と左手には聖なる盾を持った典型的な勇者の構えだった。


相手が小柄だと過信したのか互いの力量を測る小競り合いもなく、直ぐに勇者の方から仕掛けていった。

「じゃ、まずはアクアビート」と叫ぶと聖剣の先から尖った氷が彼女に向かって次々と飛んでいくと歓声が沸いた。

「いきなりそう来ましたか、10分しかないので技の大安売りね」と国宝の剣で次々と叩き落し氷は床で解けていくが、俺の技より氷が柔らかく速度も遅いので簡単に叩き落していくと観客席から大きな拍手が沸いた。


「南さんのお守りは凄いわね。思った以上に魔導の力が弱められている。これならいくら優勝者の技でも簡単に防げるわ」と少し驚いていたが、相手も女性がいとも簡単に叩き落すので顔色が変わってきた。

「女だからと少し甘く見ていた。優勝者がこんな小さな女性に負けたら恥だ。全力を出さねば」と今度は呪文を長く唱え気合を入れて

「フルアクアビート」と叫ぶと前よりも氷が硬く速度も速くなり、その量も増え攻撃の時間も長くなったがヒカリが同じように叩き落していくと観客席から大きな拍手が沸いた。


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