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「難しいって、俺達に賭ける訳じゃないのか?」
「勝負の世界は厳しいのよ、賭けるなら絶対に経験と実績から昴さんと本部長ね」
「おいおい、相手側かよ。でも、よく考えるなら実力からすればそれが順当だな」
「そうなのよ、でもそれじゃ当っても倍率が低いの、だから儲けが出ないのよ」
「勝っても、儲けね、賭け事は難しい、でぇどうするんだ?」
「今日のお昼に出場選手が公表されたから倍率が出ていたけど無銘の新人2人の倍率が異常に高いのよ、だから単勝で賭けて儲けるなら絶対に貴方達2人よ・・、でも迷っているのよ」
「迷っている? 新人2人の正体を知っているのはお前だけだから俺達に一点買いして当れば大儲けだ、でもこれはインサイダーじゃないのか?」
「あら、平ちゃんにしたら難しい言葉を知っているわね。でも勝負は互角と思うから一点買いは難しいし・・、全財産賭けるから新人2人が勝ってくれないと困るのよ、私達は無職の夫婦なんだから」
「全財産って、おいおいそれは止めてくろ、後の生活もあるだろう」
「何言っているのよ、勝負なのよ、全財産を賭けて勝負しないとこんな大きなチャンスはもう来ないわよ」
「顔色が変わったぞ。本当に賭け事は恐ろしい。少し落ち着けよ。全財産を賭けて試合をするなんて、俺はそれを知ったら萎縮して力が出せなくなるぞ」
「力が出ないって・・、よく考えたらそれもそうね。平ちゃんチキンだから」
「こらぁ、人をチキン呼ばわりするな。これでも一応古の勇者だぞ」
「あらごめんなさい、それに賭け方も色々あるから今晩ゆっくりと考えるわ」
「それがいい、君も今晩色々考えてみろ。でも全財産を賭けるのは駄目だぞ。それに俺は希望に満ち溢れた高校生なんだ、ここで行き成り無一文になるのは辛い」
「さすがに無一文にはならないわよ」とヒカリは笑っていた。
「それで気になったんだが、この賭金も国の大事な収入って言っていただろう」
「確かにそう言ったわ、大事な収入よ」
「この国の収入は主に何だ。国民や企業からの税金じゃないのか?」
「国民から税金を頂く前提として、国民に収入がある事が重要よね。それは国に幾つもの産業があって、企業が栄えて多くの従業員を雇ってお給料を出せる事よね」
「そうだよな、国に産業が無ければ、結局は税収は無い訳だ。資源を見つけるか、どこかの国を攻めて取ってくる訳にも行かないよな」
「昔はそうだったのかもしれない、だから戦争が多かったのかもね」
「そう言えばそうだな、今は平和だし、誰も戦争は望まない」
「去年私達は一緒に旅行をしたわよね」
「新婚旅行もしたし、他の旅行もした。それでバンパイア国はほぼ一周したかな」
「それで単に観光で旅行をしたと思っているの?」
「違うのか、俺は単にお前が旅行好きかと思っていた」
「確かに観光地にも行ったけど、色んな所も観て回ったよね」
「そう言われると回ったな。どうしてこんな所って言うのも確かにあった」
「それでこの国の産業は何だと思った?」
「主に観光と農業かな、工業地帯は余り無く特にハイテクな産業は無かったと思うけど」
「ピンポン、だから税収が少ないの。確かに自然に満ちた良い国だけど、国や国民が豊かではないのよ」
「だって首都は栄えていたぞ」
「首都は海外との交流もあって確かに豊かよ。でも田舎はまだまだ学校や病院も少ないし、特には北部は氷の国よ、人さえいない。だから平ちゃんにこの国の将来について少し考えて欲しかったのよ」
「この俺にか、この国にも頭の良い奴が大勢いるだろうし、そいつらが考えるんじゃないのか?」
「確かにいるけど、発想が皆同じなの、数百年前と同じよ。だから全然進歩しないの」
「そうなのか、俺には良く分からないがな」
「だからこの国には新しい人材や発想が必要なのよ、特に若い発想がね」
「それで俺やアラタをこの国に取り込もうとしているのか?」
「詳しい話しは交流会の後でするけど、忘れないでよ平ちゃんは私の婿様で将来はこの国を背負う人だから。これからも色々難題を持ってくるわよ、そしてそれを乗り越えて欲しいの」
「難題って、この俺に背負わせるのかよ、参ったな学校の勉強もできていないのに、国の難題とは・・」
「悩みたくないなし、背負うのが嫌なら私ときっぱり別れますか?」
「分かれる、自由・・それも少し考えてみようかな」
「えっ! 今何とおしゃいましたか? 私と別れると、それは即ち貴方の死を意味しますが・・」
「嘘です、冗談です。君と別れるぐらいなら死んだ方がましです。ん・・、どちらにしても死しかないのか」
「気づくのが遅いわよ」
「気楽になる為に、大好きな君と別れる訳無いだろう、これからも勿論頑張りますよ、どんどんその難題を持ってきてくれよ、ビシビシ解決するから」
「はい、それじゃ、お礼のチュね。じゃ確り頑張るのよ」
「おいおい、俺達は今は散歩中で人前だぞ」
「気にしない、気にしない。明日は試合に勝ったらチュじゃすまないから」
「人前では止めてくれよ、歩けなくなるぞ」