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「それで、お前の方は技は上手く使えるようになったか?」とアラタが訊くので
「聖剣の技の方はまぁまぁだ。それに引換えあの人殺しの剣の技は試合では使えないな」
「それはどうしてだ、バンパイア国の秘蔵の剣だぞ。真実の剣も使わないと言うし、人殺しの剣でも使わないと勿体ないだろう?」
「確かに勿体無い、でももし使うと何人死ぬかは分らない。たぶん観客席の半数は即死だな。たまたま技ができたので使ってみたんだがな、そりゃ酷い目にあった。使った場所が誰もいない指輪の世界で助かった」
「観客席の半数が即死するって、いったいどんな技だ?」
「口に出すのも恐ろしい技だ。それにしてもあの剣を使って戦っていたバンパイアの王族って凄く恐ろしい奴らだな」
「私の先祖をそんな風に言わないでよ。これからは貴方の先祖にもなるのよ」
「うっ、そうだな。でも先祖が大量殺人者とは怖い話だ」
「それはどこの世界でも同じだ。戦国時代なんて織田も豊臣も徳川も一緒だ、勝てば官軍だ、平助、そう気にするな」
「そうだな。昔の話しだしな」
「昔って、最後に使ったのはここ数十年前じゃないかな」
「ヒカリ、それは本当か。そうなら、やはり使うのは止めだな。祟りが怖い」
「現代子が祟りが怖いって、ホラー映画の観すぎよ。そう言えば平ちゃんは怖がりだったのよね、ジェットコースターにも乗れなかったって・・」
「それを言うなよ。まぁそれに今回は俺達はケガさえしなくて、無事に帰れればそれでいいと思うがな」
「そうだな平助、なんせ相手は伝説の勇者か昴さんだ、俺達より年上で職業が警察官じゃ戦いには慣れているからな、無理をしない事だ」
「そうだ無理をするとケガをする。そう言えば南にも同じような事を言われたぞ」
「お前も南さんにそう言われたのか、俺だけと思っていたのに・・」とアラタが落胆していた横で
「ケガがなによ、若いのにケガを怖がってどうするのよ、全勝するのよ、そして賞金を全部貰うのよ」と一番年上で裕福なヒカリだけが欲に目が眩んでいた。
「それで、今度の試合の時にでも姫様との関係を昴さんに話すのか?」
「ヒカリの復職の可能性もあるし、それを話すと後々やっかいな事になりそうなので、それはまだ話せない。それで、ヒカリは俺の許婚者の従姉という事にして、俺の許婚者は応援席に来ている設定だ。応戦席にいる従姉妹は皆よく似ているので区別が付かない、それで大丈夫だ。これだと俺が王族の一員でもおかしくないし辻褄が合う」
「また従姉か、俺には余計にややこしくなっている様に思えるけどな」
「この機会にお前がよければ彼女でも作れよ。ヒカリの従妹でよければ試合会場のそこらにいるぞ。それに俺が言うのもなんだけど、ヒカリに劣らず可愛いしそれに若くてキャピキャピだし、中には半獣にならない従妹もいるらしいんだ」
「そんな事をしたら、お前と従兄弟になるじゃないか、お前との親戚関係は勘弁してくれ」
「従兄弟ぐらいならまだましだと思うけど。国王はこの試合が終われば誰かをお前の嫁にと紹介するつもりだ、そうなると絶対に断れないぞ。もしかいたら義理の兄弟になるかもな、俺をお兄さんと呼ぶ日も近いぞ」
「それだけは絶対に断るよ、たとえ国王の命令でもな」
「そうは上手く行くかな、お前だけは送喚されないで一生バンパイア国から出られないかもしれない。もう貴族にもなっているし、半分はバンパイア国民だからな」と俺が脅すと
「なに冗談言っているのよ、お父様はそんな事はおっしゃっていませんでしたよ」
「何! 今までの話しは全部お前の創作か? もし国王に紹介されたらどうしようかと肝を潰したぞ」
「ヒカリ、そうあっさり本当の事を言うなよ。折角だからこの際にアラタにバンパイア族の彼女でもと思ったのに・・、これでバンパイア国に強い勇者が増えると思ったのにな」
「そうだったの、ごめんなさい。それではアラタさん、明日は可愛い従妹でも紹介しましょうか? どう言うタイプがお好みですの?」
「好きなタイプは・・」
「何だお前もその気だったのか」と明日朝に召喚を控えていたが、終始練習は笑いで溢れていた。