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「平ちゃんの言う通りね。覆面なんて被っている場合じゃないわ。たぶん総力戦になるわね」
「姫様のおしゃられる通りですね。持てる技を全て出しても勝てるかどうか・・」
3人とも本部長の正体を知って緊張していたが、楓だけが違っていた。
「あぁ残念だけど、お2人さんの覆面デビューはお流れみたいですね、楽しみにしていたのにな」
「何だ楓、そんなに覆面を期待していたのか?」
「少し面白そうだと思って、それでこの一週間で色々絵柄も考えて、サンプルを作ったんですけどね、全部無駄になったみたいですね」
「そう落ち込むなよ」
「だって、一週間徹夜だったんですよ」
「なんだ、このごろ楓は寝るのが遅いと思っていたが、そんな事をしていたのか?」
「アラタさんにはばれていたんですね、でももったいないな」
「そのサンプルの覆面は祝勝会のお楽しみ残して置くといいぞ」
「そうですね、先ずは試合に勝たないといけませんね」
「それにしても、俺達が本気を出さないといけなくなったな」
「なんだ平助は本気は出さないつもりだったのか、相当な自信だな。いつからそんなに強くなったのか?」
「まぁ、そう意味じゃないけどな、例えだ」
「計画は白紙に戻して俺達は正体を隠さずに全力を出すしかないぞ。そうと決まれば、こちらの名前はどうなっておりますか?」とアラタがヒカリに尋ねると
「何故それを訊くんだ、俺達の名前なんて関係あるのかよ?」
「それがあるんだよ、意外と重要かもしれないぞ」
「私はバンパイア国の王女としての正式な名前を記載していますし、平ちゃんも王族の一員ですので、バンパイア国の正式な名前を記載しています」
「俺の正式な名前って何だ、俺に読めるのか?」
「それは後で優しく教えるわよ」
「そうすると、私の名前はどうなっているのでしょうか?」
「アラタさんは、お父様から以前称号を頂いていますので、バンパイア国での貴族の名前で記載してあります」
「おいおい、アラタ、お前は貴族様だったのかよ」
「そういえば、称号と勲章を頂いたような記憶が・・。でも、お城も領地もないのでそんな事はすっかり忘れていたな」
「何だ、名前だけかよ」
「そう言うな。・・と言う事は、向こうはバンパイア国の出場選手が俺達2人とはまだ知らないのか、これだと当日皆は驚くな」
「向こうを驚かしても仕方がないだろう、試合に勝たないと意味がないぞ」
「それもそうだが、対戦相手が半獣と思って対策を練っていたのに、試合直前に対戦相手が俺達だと知ればその対策は無駄になり焦りが生じる筈だ」
「そうか、相手に焦りが生じれば俺達にも勝ち目が出てくるのか?」
「やっと分ったか平助、その通りだ。でも相手が相手だけに僅かだがな」
「それでも勝率が上がる事は大切なのよ」
「さすが勝負師ヒカリだな、今回ももちろん賭けてるんだろう?」
「ここで、その事は言わないの」
「そうだな、でぇ、俺の正式な名前を早く教えろよ」
「それを今ここで知りたいの、心理作戦とかの話はもういいの?」
「だって俺はまだ自分の名前を知らないんだぞ、俺が心理的に参っているんだ」
「じゃ、これを自分で読んで下さい」と、またスマホを手渡されたが文字がまだ少ししか読めないのでチンプンカンプンだったので
「すまんアラタ、俺の名前はなんて読むんだ?」
「俺に訊くなよ。俺も文字は読めないんだぞ、悪いが楓早くこいつの名前を読んでやってくれ」
「どれどれ・・」と異世界の言葉で読んでくれたが、俺とアラタには全然聞き取れないので
「もっとゆっくりと読んでくれ。それにそれは人の名前なのか、早口言葉じゃないのか」と尋ねると
「発音は難しいですけど、直訳すると第一王女の婿だが元々は異世界の駄馬の骨・・という意味ですね」
「駄馬の骨って・・、それは確かに俺の名前だ」