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「確かに事務局に頼まれたけど、お金なんて積まれていないわよ。それに事務局が違います」
「事務局が違うって、なんだそりゃ?」
「確かに共和国の出場選手は決まったけど、バンパイア国がまだ決まらないの。
いえ、一度決まったけど、厄介な病気が流行って出場選手の全員が出場できなくなったの、それに補欠の選手までもかかってしまって、だから誰か出場できる者はいないのかってバンパイア国の事務局に頼まれたのよ」
「そうなんですか、バンパイア国の事務局にですか」とアラタは納得したようだが、俺はそれをヒカリが頼む理由が分らなかった。
「事情は良く分ったけど。なぜ、お前が頼まれるんだよ。お前は交流会の関係者なのか?」
「それが、お父様が関係者なのよ」
「国王がか・・、それじゃ参ったな」
「そうなのよ、今回の交流会はバンパイア国の首都で開催されるでしょ、だから主催者のお父様が大変お困りなのよ。だから、また体調が悪化してしまって・・」
「おいおい体調が悪化って、それは本当かよ? あんなごついおっさんがそんな事で体調を崩すかな」
「失礼ね。色々悩んで精神的に参っているのよ」
「怖い顔とは違って意外と神経質なんだな」
「人の父親を何だと思っているのよ、それに貴方の義理の父親でしょ」
「すみません、そうでした」
「それなら開催日を大幅にずらすとか、それが無理なら一掃の事中止にできないのでしょうか?」
「日程をずらすと他の行事に影響が出るし、伝統ある交流会を中止するなんてそれは無理よ。それに主催国が不参加って訳にも行かないし、そうかと言ってまったくの弱い選手を出すと他国に恥をさらすって・・」
「由緒ある国際大会ですし、さぞかし国王もお悩みの事でしょうね」
「そうなのよ、だから私にお鉢が回ってきちゃったのよ」
「それは分るとして、俺やアラタがバンパイア国の選手で出場できるのか、さすがに共和国の勇者様がパンパイア国の代表では拙いだろう」
「平助の言う通りだと私も思います。さすがにそれは無理かと」
「それはそうだけど、ほら元々2人は共和国の国民でもないし異世界人で中立でしょ。それに特に平ちゃんはもう私の婿様で王族の一員だから大丈夫よ」
「お前、いつから王族になったのか?」
「確か一週間ぐらい前かな、そういえば記念の指輪も国王から貰ったぞ」
「お前な、全然その凄さが分っていないな。そうすると平助は王族の身分があるのでいいとして、やはり無関係な私は無理かと思います。
確かに国王には恩義がありますが、さすがに出場は無理かと」
「そうね、アラタさんは共和国じゃ人気者ですし、ファンが許さないかもね」
「そんな、人気者でもありませんし、ファンなんって全然いませんよ」
「まぁ、アラタさんたら謙遜して、ファンレターが毎週来ているじゃないですか」と横から楓が口を挟んだ。
「楓、その話は本当か?」
「本当ですよ、異世界に召喚された人がファンレターの束を持って来ていますよ」
「くっそ、俺にはまだ1通も着ていないぞ、間違ってアラタのに紛れていないなったか?」
「紛れていない、お前のは今までないぞ」
「くっそう、異世界の女子中高生は何をしているんだ」
「平ちゃん、妻帯者があからさまに何を言っているのよ。そんな事よりアラタさんが出場できる良い方法はないかしら・・」
「双子の弟はどうだ?」
「平ちゃん、漫画でもその設定は無理よ」
「そうですよね、アラタさんは顔がばればれですので、難しいですね」
「一掃の事覆面レスラーのように顔を隠せばいいじゃないか。そうすると誰もお前とは分からないぞ」
「仮面でもいいですよ、目元を隠せば分らないかも、それにタキシード仮面のように素敵かも」
「楓、またアラタの人気が高くなるぞ」
「ちょっと待ってくれ、覆面とか仮面とか恥ずかしい」とアラタは断ろうとしたが
「それは良い考えね、これで決まりね」とヒカリの一言でアラタの出場も決まった。