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奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
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1-5-1

1-5-1 8月5日木曜日

 ピポピポピー、けたたましく朝6時に目覚ましが鳴り、いつもと同じ2階の自分の部屋、同じシングルベッドの上だったが、昨夜の夢が、満員電車に乗っている疲れたサラリーマン姿の自分だったので今日の寝起きは良くない。

「普通17歳がこんな夢を見るか、もっと明るい夢を見せてくれよ」とブツブツ言いながら目が覚めた。

 今日は、夏の朝6時にしてはやけに蒸し暑いなと首筋を掻きながら

「やっと赤みが引いたのにまた刺された」とため息をつくと、まるでベッドがギュウギュウ詰めの満員電車のようにやけに狭いし、俺の近くに酔っ払いまで乗っている感じだ。

「何だこの匂いは、なんだかお酒臭いぞ」

横に目をやると大人のヒカリがトレーナー姿で寝ているというか、ベッドを半分以上占領している。


 思わず息を飲み込み、これはラッキー何と言う幸せと寝顔も美人だなぁと顔を近づけてみると、酒臭い上に「この平助のバカ」とか「この鈍感野郎」とかムニャムニャ言っている。

 すると急に起きて俺に抱きつき、酒臭い顔を近づけて「この奥手野郎」と言うと、何もなかったようにまたベッドで横になって寝だした。

 昨夜の大人姿の彼女への憧れや愛しさが見るも無残に崩れ、ヒカリのイメージが清楚な女子高生から愚痴を吐き散らすお局OLに急に悪くなりだし、それに、な、なんだ凄く飲んで、酔っ払って寝ている。

「もし毎朝これだと俺やっていけないなぁ」と股間の聖剣がさっきまで朝一番だったが直ぐに元に戻った。


 昨夜部屋にいなかったけど飲みにでも出かけたのか、何かあったのかな。 

おいおい、待て待て、飲酒するなんてヒカリは今いくつなんだ。

確か「大人の姿は5年後の私です」とか言っていたしな。

 たけど、大人の彼女に会うのはいつも夜なので気づかなかったけど、このお肌の荒れようはどう見ても20代前半じゃない、騙されたアラサーだ。

すると10年以上後じゃないか、じゃ本当の彼女は何歳なのだと疑問が頭を駆け巡り始めた。

 

 ちょっと待て、彼女の年齢も確かに重要だが、そのことより母は大人の彼女をまったく知らないので、このまま見つかって「5年後のヒカリちゃんだよ」と冗談は通じないし、

「部屋を間違って俺の部屋で寝てましたぁー」なんてそんな言い訳はできないぞ、

ここで彼女に何か騒がれると非常にマズクなる。

そーっとそのままにして、いつものように何食わぬ顔で朝ごはんを食べようとさっさとトレーナに着替えて1階に下りると直ぐに母がいつものよに

「ヒカリちゃんは?」

「母さん、何度も起したけどヒカリちゃん今日も駄目みたいだよ」

「今日も駄目なの、仕方ないわね」と呆れていた。

そして、いつものように2人では会話のないままの朝ごはんを済ませて、母は仕事に出て行った。


 ヒカルから詳しく昨夜の事情を聞きたいけどあの酔ったままでは当分起きないだろうし、もし起きて朝から酔った勢いで絡まれてもないやだし、そうだ、ここはいつものジョギングで、逃げ出そうと玄関を出ると朝の勉強会に向かう隣の南に出くわした。

「おっ南、おはよう」と朝から力なく挨拶すると

「おはよう平助、なに、そのげっそりした顔、それに、これってお酒の匂い?」と顔を近づけてくる。

「汗臭いんだよ、トレーナー洗ってないし」とごまかすと、南はイヤな顔をして離れるが

「首筋、また虫に刺れたの」と心配してきたが

「昨夜、公園でまた刺されたよ。虫除けスプレーが必要だな」と笑ってその場を走り去った。

軽く辺りをジョギングして、公園でトンファーの復習などして体を動かし時間をつぶしていたが、宮本アラタとの約束の時間に近づいたので会いに向かった。


 さすが金持ちの家は違っていた。何度か車でアラタの家の前は通ったことがあったがこれほど広いとは家の中で迷子にならないかな。

ベルを鳴らし少し待っていると、かわいいメイドさんが出てきて「若様は剣道場の方にいらしゃいます」と大きな庭を横切り、庭の外れにある剣道場へ俺を連れて行ってくれたが、1人で来ると迷うぐらいの庭だった。

それにしても、自宅に剣道場があるとはアラタは俺と同じ高校生だろうか。


 剣道場の大きな扉を開けるとアラタが朝の練習の休憩中だったのか奥の方で汗を拭き、水を飲んでいた。

俺をここまで連れてきたメイドさんはアラタに俺が来た事を告げると、彼の汗を拭いてあげて、なぜか剣道場の隅に座った。アラタは一息ついたのか

「やっと来たか、中村平助、待っていたぞ」俺に声をかけてきた。

俺はアラタとは同級生にもかかわらず余り話したことがなかったが、俺は彼女のことに必死だったので、あいさつもなくいきなり頼んだ。

「朝早くから用立てしてすまない。お願いがあるんだ。すまないがヒカリちゃんのことを教えてくれないか」すると

「俺も去年より前は知らないし、悪いが詳しいことは俺にも守秘義務があるので無理だ」と味も素っ気も無い答えだった。

お前はどこかの官庁の役人かと思ったが「お願いだ、君が知っていることだけでもいいから教えてくれ」と深く頭を下げると、アラタは俺の赤くなった首筋を見て

「じゃ訊くが、お前の首筋の傷は何度目だ」と変なことを訊いてきた。


 同級生なのにお前だと、えらい上から目線の奴だ。やっぱり嫌な奴と思ったが、そこはヒカリのためにぐっと我慢して、どうして首の傷の回数を聞くのかと疑問に思ったが、彼女に出会ってから数えてみると、出会ったから2日目と今日で

「2度目だ」と答えると

「1週間も立たないのにもう2度目だと。姫も困ったものだ、もうお決めになられたのか」と訳も分からないことをブツブツと呟いた。

「姫だの、決めただの何のことだ。俺にはちっとも分からない。詳しく教えてくれ」と頼むと、アラタは少し考え込んで何かを決めたように

「平助、お前にその意思はあるのか、彼女と共にやっていく意思はあるのか」と強く訊くので

「その意思はあるのか」何のことかよく理解できなかったがたぶん彼女のことが好きかと訊いているのか、「やっていく」とは親の反対があっても付き合っていくことかと自分で勝手に理解して

「あぁ、あるとも、この命にかけて、どんなことがあろうともヒカリと2人でやっていくいとも」と格好をつけ、胸を張って答えると

「全て納得済みか、では剣を準備しろ。言っておくが、これには一国の運命と姫の命がかかっているのだからな、もう後戻りは出来ないぞ。そう心に刻んでおけ」とアラタは聖剣を取り出し「ハイドロソード」と剣を呼び出し「ここからは俺の独り言だと思ってよく聞け」と剣を構えた。


 俺もなぜアラタは聖剣を構えているのかと良く理解できなかったが、アラタとヒカリの間に俺が割り込んで三角関係になりそれを清算するつもりなのかとついつい聖剣を手すると「ハイドロソード」と剣を呼び出し構えると、互いに剣を持ち向かい合い

「首の傷は、血の花婿の証」と言ってアラタは剣を振り下ろしてくるがそれを交わすと

「2度目の傷は、選択の証、愛する相手を守る役にお前が選ばれた証だ。

3度目の傷は、契約の証、互いに相手が死んだら自分も死ぬ証だ。

3度目の傷の前に、心臓に杭を打てば全ては終わり、証は消える。

だがもう二度と会うことはできぬ、彼女は灰になり闇に漂うのだ。

さあ、お前が選択する番だ。心臓に杭を打つか否か」と次々と独り言を言いながらか剣を振り下ろしてくるが俺がそれを交わすと

「剣を交わすのは上手くなっているようだな、では、アクアビート」と叫ぶとアラタの聖剣の先から尖った氷が俺に向かって飛んでくる。

それをどうにか交わして、俺からアラタに剣を振りかかると

「アクアーウォ-ル」と叫ぶと床から氷の壁が出てきて俺の攻撃を遮る。


 その後、アラタの攻撃だけが30分続いたので聖剣は元に戻った。

「くっそう、30分間でこちらから攻めたのは僅か1回だけか」とヘトヘトになった俺に

「平助、お前の意志が固いのは良く分かった。後はお前と姫の問題だ。だがこれだけは言っておこう、今だけを見るな、全てを受け入れろ」と忠告し、

「楓さん後はよろしくおねがいします。俺はサウナに行く」とだけ言い残し、アラタは俺をサウナに誘うそぶりもみせずにサウナへ行ってしまった。

 

「後はお前と姫の問題だと、あいつはヒカリを諦めたってことか。それにしても、血の花婿の証って何を言いたいのだろう。俺にどう関係があるのか、また分からないことが増えてしまったが、俺はサウナに行くだと、汗を掻いている俺も誘え、一緒に入ろよとか言え」とぶつくさ言いながら汗だくのまま道場に倒れていた。

 メイドの楓さんが隅から冷たい水と救急箱を持って俺に近づき

「平助様、おケガなどありませんか」と心配してくれて、少し擦り傷があったのでやさしく治療してもらったが、なぜかいきなり俺の頬にチュをすると

「平助様、これから頑張って下さいね」とニコッと笑い俺を励ましてくれたが、これから何を頑張るのか俺にはよく分らなかったが、なぜかやる気が湧いてきた。


 俺は、家に帰りながらアラタの色々な攻撃は、もしかしたら聖剣の秘密を教えてくれるためにわざとではと思ったが、あいつは性格が悪いので有名だ。

アラタはそんなにいい奴ではない、絶対に違うと納得した。

 その後、家に帰って2階の俺の部屋に上がりドアを開くと正座した女子高生のヒカリが神妙な顔で俺の帰りを待っていた。


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