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母が荷物を片付けて一息付くといつものように
「平助、年賀状は着ていなかった。今年は多かったの?」
「年賀状なら居間のテーブルの上にあるよ、まぁ、数はいつも通りかな」
母は早速手にとって年賀状をパラパラと見るとヒカリの従姉から来た葉書に目が留まった。
「あら、この葉書は誰からかしら、珍しいわね外国からだわ。この葉書は平助の知り合いの人からなの? それにしても綺麗な花嫁さんね。こんな綺麗な花嫁さんが早く平助に来てくれると嬉しいけどね」と俺に聞こえるように大きな声で話しかけると
「そうでしょ、平ちゃんにこんな綺麗なお嫁さんが来てくれると嬉しいでしょう。おばさん」とヒカリが笑顔で飛びついた。
「そうね、平助はこの頃、彼女を連れてこないから心配していたのよ。それに少し無愛想でしょ、このままじゃ一生独身じゃないかって・・」
「それじゃ。この写真よりもっと綺麗な女性がいますけど、平ちゃんにはどうでしょう?」と尋ねると
「この花嫁さんより綺麗だなんて。その人は芸能人かしら・・。でも、平助には年上よりもっと若い子がいいわね。そう同じ年の楓ちゃんとか南ちゃんとかいいかもね」と正直に答えた。
「楓ちゃん、南ちゃんか・・。そうですよね、もっと若い子がいいですよね」と落胆していた。
「でもね、おばさんは明るいヒカリちゃんみたいな子が本当はいいんだけど・・。余り進めるとヒカリちゃんが嫌がるかなと思って。ヒカリちゃんにその気があるならうちにお嫁に来る? 来てくれるとおばさん嬉しいけど・・」と聞かされると
「えっ、私でいいんですか?」と元気を取り戻し
「でも、ヒカリちゃん、その気が無いんでしょ?」と尋ねられ
「えっ、まぁ、無い事は無いんですけど・・」とモジモジしていると
「平助次第なのね。ごめんねあの子は少し・・」
「おいおい、そこで何を話しているんだ、俺に筒抜けだぞ」と注意をした。
このまま結婚相手がヒカリになっても勿論いいのだが母とヒカリの間で勝手に他の事まで決まりそうなので、買い物にでも行こうとヒカリを連れ出し、駅前の商店街をブラブラ歩きながら雑談すると
「おばさんが、私に平ちゃんのお嫁さんに来ないかって」とニコニコ喜んでいた。
「そうかい、それは良かったな」
「これですんなり2人の間も話せるわよ」
「もうその必要はないかもな」
「どうして?」
「もう母さんは薄々感づいているよ、もしかするとお見通しかもな」
「じゃ、結婚も直ぐに許してもらえそうね」
「結婚と付き合うのは別の話だと思うけど、それに母さんは気がよく変わる人だからな」
「そっか・・。でも大丈夫、ギュッとおばさんの心を掴むから」
「どうやって掴むんだよ?」
「だって、お土産に高級化粧品を持って来たから大丈夫よ」
「おいおい、俺の将来の結婚相手はお土産で決まるのか?」
「女性ってそう言う者よ、贈り物が大事よ、それも欠かさずに送る事が大切なのよ」
買い物をして家に戻ると母さんからお年玉を貰った。ちゃんとヒカリにもあげていたが、ヒカリからお土産として例の高級化粧品を貰うと
「これが欲しかったのよ、ありがとう。ヒカリちゃんが一番ね」と彼女を抱きしめて喜んでいた。ヒカリの言うとおり女性の心を掴むには贈り物が一番だと知った。
もしかしたらヒカリにクリスマスにも何もあげなかったので、これは俺に素敵なプレゼントをくれとの彼女からの合図なのかもしれないと悟ったので、後で何か探して送ろう。