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それを隣で心配そうに見ていた楓もこれはいつもの冗談ではないと
「向こうも今は冬なので寒い筈ですよ。暖かいなんておかしいわ。きっと姫様の結婚が相当ショックだったんだ。それでこんな風に何て可哀相な平助」と疑いも無く信じきっていた。
アラタはこのまま寒い外にいると更に病状が悪化するといけないので2人を剣道場に入れ
「お前は今日の練習は休んでおけ、絶対参加するな」と俺と南を剣道場の隅に座らせると
「後でうちの専属の医者にでも診てもらいましょう、まだ開院には早いのでここで待っていて下さい」と、これからどうするかとコソコソと楓と話し合って思案し始めた。
ちょうどその時道場の扉が開くと
「あら、確か練習は今日からだったわよね。まだ始まらないの、それに皆で集まって何しているの?」とヒカリがやって来た。
「姫様、どうしてここに、結婚されたのでは?」と驚いたアラタが尋ねると
「そっか、皆私が誰かと結婚したと思っているのね。していないわよ。
それにしても平ちゃん、先に行くなら行くって言ってよね。
戻ってきたら家に誰もいなくて心配したじゃないの。
それに何よ、朝から南さんとべったりくっ付いて、新年早々私の前で浮気してどうするのよ!」
「俺にもよく分からないけど、南が家からくっついて離れないんだよ」
「そんな言い訳は許しません。帰ったらお仕置きです」
そんな2人のやり取りを聞いていて
「えっ、ちょっと、これどう言う事なの」と南が一番驚いていた。
南の思い違いから次々と誤解が繋がって話が全然違う方向に行ってしまったので、俺とヒカリで詳しく説明すると、人騒がせな2人だなと、皆納得して各自新年の挨拶を済ませると今年最初の練習を始めたが、南は道場にいるのが気まずいのか途中でこっそり帰ってしまった。
朝から良い思いをした俺だったが、練習はその反動からかヒカリからこっ酷くしごかれた。
今年最初のアラタ達との練習が終わると
「おい平助、少し腕を上げたんじゃないのか」とアラタが尋ねてきたが
「そうかな、俺には分らないけど・・」と知らない振りを装ったが、ヒカリが横から俺の腹を指で突いていた。
「もう、何するんだよ」
「これも指輪と私のお陰よね」
「はいはい、分っております。色々ありがとう御座いました」
「2人で何をヒソヒソ話しているんだ。腕を上げた理由でも何かあるのか?」
「アラタさん、それは愛の力なのよ、早く貴方も彼女を作るといいわよ」
「姫様、新年早々冗談がきついですよ、アラタさんも頑張っているんですけど、南さんがちっとも・・」と楓が困っていたが
「おい楓、余計な話を姫様にするな、あの事は2人には内緒だから」
「何が内緒だ、南をどこかにでも誘って断られたのか?」
「ピンポン、さすがに平助、南さんの元彼だ、よく分かっている」
「おいおい、元彼とか止めろ、単なる幼馴染だ」
「平ちゃん、その元彼って何なの、そう言えば今朝からべったりだったわね」
「拙い、余計な火の粉が俺に飛んできた。そうだヒカリ、アラタにお願いがあったな、早く一緒に頼のもう」とその場を切り抜けた。
「そうね、早く頼みましょう」
「アラタ急で悪いけど、ヒカリをお前の家に住まわせて欲しいんだが、いいかな?」
「本当に急だな、それでどうかしたのか、お前の家に一緒に住むと拙い事でも起きたのか?」
「それがな、ヒカリが警察を辞めてきたんだよ。こっちで長く住みたいんだと。
ほら一応彼女は高校生の従妹と言う設定で俺の家にいるけど、
さすがに学校が始めると実家に帰らないといけないだろう。
だから、長くは俺の家には住めないんだよ。だから正月明けからお前の家に住まわせて欲しいんだ。どうかお願いします」
「ちょっと待ってくれよ、空いている部屋は幾つもあるので住むのはかまわないけど、それより警察を辞めてきたって、姫様それは本当に本当ですか?」
「本当なのよ。そろそろ結婚してもいいかなと思って辞めちゃった。それにお父様の了解もちゃんと貰ったし。私には何の問題はないから、お願い部屋を貸して下さらないかしら?」