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余りにも俺が異常な話をご飯粒を飛ばしながら楽しそうに話し続けるので
「そう楽しかったの。それで剣とお話をしたのね。それに剣から氷が飛ぶの、床から氷の壁も出てくるの、そしてヒカリさんが氷詰めになるのね。そうそう・・」と俺を見つめると涙が止まらないようだ。
「南どうしたんだ、泣いているぞ。俺の話がそんなに面白いのか?」
「そう、面白いのよ。平助私がずっと一緒にいてあげるから」と俺の両手を更にギュッと握った。
「このまま独りにしては危ないわ。おばさん早く帰ってこないかしら」と心配そうにしていたが、おにぎりを食べてしまったが俺が
「じゃ、これからアラタのところで練習があるから行かないと」と南が握り締めていた手を切ってすっくと立ち上がりと
「駄目よ、今日は寝ていなくちゃ、体に障るわ」と俺の手を引っ張った。
「おいおい、寝ていろなんて俺はさっき起きたばかりなんだぞ。それにアラタにもバンパイア国に行った話しをしてあげたいんだ。あいつ凄く驚くぞ」と手を払い除けた。
南は平助を力付くでこの家にと留めることは無理だと判断して
「そうだ、アラタさんに相談してみましょう。分ったわ、私が付いて行ってあげるから一緒に行きましょうね」と上手く返事をした。
「2人で道場に行くなんて珍しいよな。仲良く自転車で2人乗りで行こう」と自転車に載ろうとすと
「今日は駄目、2人で歩いて行きましょう」と南がなぜか俺の手を強く引いて言い張るので、仕方なくそれに同意したが、彼女は俺と腕を組むと確りと寄り添い歩くので
「おいおい、今日はどうしたんだ、いつものお前らしくないぞ。もしかして、寒いのか?」
「寒くはないわ。いいのよ、これからは、こうなるんだから」と意味の分からない返事をした。
俺は南の大きな胸に腕が当っていたので嬉しくなり、顔から力が抜けてにやけていたが、いつもなら「このスケベ」とか「変態」とか南は言うのだが、今日は更に俺の腕にしがみ付いていた。
初めてだろうか南とこんな風にして歩くのは。俺は正月からなんて運がいいのだろうか。でも、これをヒカリに見られると地獄だな。でもあいつはまだあっちの世界に違いないとニヤニヤしている顔を隣から見ている南にとって、そんな事を考えている俺の顔は能天気のように見えたのだろうか、更に悲しいげな表情になった。
練習の準備をしていたアラタと楓が腕を組んで歩く2人に気が付くと
「平助、お前は姫様が結婚したからと言って、直ぐに南さんに乗り換えるとは、何が硬派だ。女垂らしの獄悪人じゃないか。正月早々殺生は気分が悪いが成敗してくれる」と血相を変えて怒り出したが
「いいのよアラタさん。平助はもう・・」と弱々しく少し涙目で言うので
「南さん、それはどういう事ですか?」
「それが、心配だったので家を訪ねたら、平助が痴呆症の老人の様に台所でウロウロしていて、どうしたのと尋ねたら、一週間バンパイアの国に行って来たとか剣の先から氷が飛んだとか、最後にはヒカリさんを氷詰めにして殺して、それが楽しかったとか意味不明な事を楽しく言い出すの、それを見ていて私、悲しくて、悲しくて」と更に涙が止まらなくなった。
「姫様を氷詰めにして殺したって、これは自分を裏切った姫様に対する怨みから来る加害妄想じゃないのか。あぁ、姫様の結婚がこんなにもショックだったとは、
昨日は気付かなかったな。これは大変だ。おい平助、それは本当か?」
「おう、昨夜急いで行ってきたぞ。向こうは暖かかったぞ。それにヒカリを氷詰めにしたら息ができなくて顔が真っ青で苦しがってな、大笑いだぞ」とアラタにも信じられない事を平然と言うので
「たぶん一時の錯乱状態かもしれません。このままだと何をしでかすか分りませんので、南さんこいつを確り捕まえておいて下さい」とアラタもすっかり納得したようだった。