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奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
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4-2-4

4-2-4 1月3日 朝

バンパイア国には一週間居たが召喚された日に戻ってくるので元の世界ではまだ1月3日だった。俺としては冬休みが一週間伸びたみたいで嬉しかったが覚めると、部屋にはヒカリの姿はなかった。

「そうだヒカリは? 確か残しておいた公務を片付けてから召喚される手筈だったけどな。また俺一人で送喚されたのかな。それにしても本当にあっと言う間だったな」とベッドから起きると少し体を動かしてみたが疲れは残っていないし頭も痛くないので、3ヶ月ぶりの異世界への往復だったが後遺症も出ていなかった。

「召喚に体も少し慣れたのかな。この調子だと春休みに約束していた名所旧跡巡りでも行こうかな」

俺は久しぶりに彼女に会えた嬉しさですっかり春のバンパイア族の習慣を忘れてしまっていた。


「それにしても、前々からの心配事が見事に片付いたな。国王にも会えたし、念願の聖剣の名前も思い出して彼女に聖剣の事も打ち明けられたし、それに何と言っても魔導の実力が上がった」と凄い充実感が俺を満たしていたが、お腹は満たされるどころか腹ペコだった。

「もしかしたら先に起きて朝食の準備でもしているかも」と着替えて食卓へ急いで下りても誰もいなかった。


「やっぱり朝食の準備ができていない。彼女はまだ戻っていないのかな。それなら仕方ないな、久しぶりに自分でパンでも焼いて食べるか」と勝手の分らない台所でゴソゴソしていたが食パンは見つからなかった。

「くっそ、母さんがいないと、どこに何があるのやらさっぱり分らないな」と色んな引出を開けてみて、何か他に朝食になるものを捜していると玄関の方から

「おはようございます。平助起きたの?」と明るい南の声がした。


「俺は台所だよ」との返事を聞いていつもと変わらず自分の家のように上がってくると、台所は酷く散らかりその中を俺がイライラしながらゴソゴソとしていた。

「何しているの。こんなに散らかして。朝ごはんまだでしょう。確かおばさんが帰ってくるの午後だよね」と昨日のヒカリと他の男との結婚写真を気にしておにぎりと簡単なおかずを持って来てくれていた。

「おにぎりだ。お腹が減っていたんだので助かった」とお礼もそっちのけで、直ぐに食卓にも行かずに台所に座り込んでむしゃむしゃと食べ始めたが、南は横で俺が散らかした台所を片付けていた。


「そうそう、俺、たった今戻って来たんだよ」と口をもぐもぐしながら急に変な事を言い始めた。

「戻って来たって、どこから、夜中に一人でどこかに行ったの? 冬の寒い夜は風邪をひくわよ」

「向こうは、暖かったよ。花も咲いて蝶々も飛んでいるし、まるで春だな。ぽかぽかさぁ」

「ぽかぽか暖かいって、夜中にどこに行ってきたのよ」

「あぁ、急な用事があってねヒカリとバンパイア国にちょっと行って来たよ、それが結局一週間も居てさ・・」


その答えを聞くと南は何かおかしいと直ぐに辺りを見回し大声で

「ヒカリさん、ヒカリさん、居ませんか?」と呼んだがどこからも返事がなかった。

「やっぱり変だわ」と訳が分らず少し不安になり、深呼吸をして少し考えてみたが

「やっぱり昨夜はここに泊まるべきだったわ。他の人と結婚したヒカリさんが一週間も平助と一緒だったなんてありえない。きっとショックで悪い夢でもみたのね」と結論付けると、片付けるのを止めて俺に近づき優しい声で

「平助、大丈夫なの? 急にヒカリさんが結婚したので動揺しているのね」と俺の両手を握ると、哀れみをした悲しい目で見つめると少し涙ぐんだ。


おにぎりを無心に食べていた俺にはその仕草の意味が全く分らず、お腹が満たされたので陽気に

「えっ、信じないの。本当だよ。講義や剣術の練習は辛かったけど為になったし、毎日のピクニックは楽しかったな。でも南にお土産を買うの忘れた。ごめん、ごめん」

「寒い冬に毎日ピクニックなんて・・、いいのよそんな物、平助が元気なら・・」

「それでさぁ、こんな小さな剣が名前を思い出せって俺に話しかけるんだ、それで名前を叫ぶと大きくなるし、それに飴玉みたいな宝石を貰うし、それから俺の技がビシバシ決まり、剣の先から氷が飛ぶんだぞ。床から氷の壁も出てきたし、ヒカリは氷詰めになって死にそうになるし、まるで夢のようだ」と身振り手振りでまるで特撮映画のような話を楽しそうに話し出すと、それは止まらなかった。



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