4-2-2
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国王は彼女からその答えを聞くと無言で何かを考えていたが
「お前の考えは分ったが、あやつに全てを話した方がもっと上手く行くのではないのか?」
「まだ全てを話す訳にはいきません。もし全てを知ってしまうと彼に迷いと焦りが生じるでしょう。それに私を信じなくなります、それが一番怖いのです」
「それで、本当の事はいつ話すのだ?」
「はい、後1年ありますので、それまでにじっくりと下地を作っておきます。
ですのでそれまでは絶対に秘密です」
「残り1年、本当にそれまで秘密にできるのか、あやつが真実の剣を使いこなせると言う事は、あやつには我等の嘘や策略は通じない、全ての真実が分ると言う事ではないのか?」
「確かに、おっしゃられる通りですが、今はまだ」
「まぁ、その答えは後でもよい。今日のところはお前も疲れている筈だ、早く一眠りしてまた宿に戻りなさい。そうしないとあやつに怪しまれるぞ」
「はい、それではお父様、失礼いたします」
それからヒカリは自分の部屋に戻ると寝ないで平助と一緒に異世界に居られる一週間の計画を立て彼を鍛える準備を進めた。
朝起きるとまだ自分の部屋ではなく宿だった。
「あれ、既に送喚されているとばかり思っていたけどまだ宿だ。大事な用事は済んだし、俺の用事も済んだが、彼女にまだ何か残っているのかな?」
「何ブツブツ言っているの、貴方の愛する新妻はここにちゃんと居ますよ」とベッドの横でゴミ等を片付けていた。
「なんだ、そこにいたのか、隣に寝ていないのでどうしたのかと思ったよ」
「ごめん、早くに起こしてしまったみたいね」
「そんな事は気にしなくていいけど、君はもう起きていたのかい。俺よりも遅く寝て早く起きて、君はちゃんと寝ているのか? それじゃ体がもたないだろう、まだ朝早いので俺の隣で少し横になるかい?」
「大丈夫よ、貴方が知らない間にちゃんと寝ていますよ。それにまだ若しね」
「まだ若いとは・・。それならいいけど」
「何よその奥歯に物の挟まったような言い方は、何かご不満でもあるの?」
「不満、そんな物はないよ、反対に良く働く奥さんだと感心しているところです」
「ウフフ奥さんね。じゃ、あなた少し早いけど朝ごはん食べる?」
「あなたね、勿論頂くよ」
ベッドから起きて着替えていると彼女がその様子をじっと見ていた。
「おい、そんなに俺の着替えを見て何かあるのかよ?」
「聖剣をどこに身に付けているのかなと思って・・」
「確かに身に付けているけど、シャツの下だから裸にならないと見えないよ」
「そうなの、これからもずっと身に付けておくの?」
「確か昔もそうしていたと思い出して、だからこれからそうするつもりだ」
「そうなの、だったらお願いがあるの、そうお願いと言うか、約束して欲しいの、真実の剣を使って私の心を覗かないで欲しいのよ」
「君の心を覗くって、そんな事がこの剣はできるのか?」
「たぶん、剣を使いこなせるようになると自然と他人の心が読める筈よ、だから国王が決断する時に臣下の言動が本当か嘘かを判断する為に使ったのでしょ」
「へえ、そうなんだ。良くそんな事を知っているね」
「当然よ、私が捜査の担当だったから色々調べたのよ」
「俺には君の心を覗く趣味は無いけど、そうならないように気を付けるよ」
「お願いね。もし私の言動を疑って心を覗いたら殺すからね」
「おいおい、それはお願いじゃなくて、脅迫だよ。おっ、怖い」
「それじゃ宿は今日までなので後で自分の荷物をまとめておいてね」
「宿は今日までって、てっきり目が覚めると元の世界に送喚されているかと思っていたよ。まだ何か用事が残っているの?」
「大事なものは済んだけど、用事ならまだまだ残っていますよ、だから送喚はまだ先よ」
「用事が残っている、それって・・」
「その話は後でね。平ちゃんが王族の一員になったので宿から春の宮殿に移ります。ちゃんと部屋も用意したしその方がお互い便利でしょ」
「確かに深夜まで書斎を使えるし武道場もあるし、それに君も行ったり着たりしなくて済むしね」
「そうと決まれば朝ごはんを食べましょう」