4-1-10
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ヒカリはその光景を不思議な目で見ていた。
「どうしたのよ。また大きくなって。さっき道場で使ったおもちゃの剣でしょう。でもおかしいわね1日に2回は大きくならない筈よ」
「それが違うんだよ。俺も信じられないけど、これは本物の聖剣なんだ」
「またまた、私を騙そうなんて嘘が下手すぎるわよ。こんな小さな剣が本物だって。おもちゃを2本持って来たんでしょ」
「たぶんここで君に詳しく説明しても信じてくれないと思うんで、俺に上手く騙されたと思って聞いてくれないか。これは君がよく知っているおもちゃの剣ではなくて、真実の剣と言う古の聖剣なんだ。正真正銘の本物の聖剣なんだよ」
「またまた。ん・・真実の剣って・・確かどこかで聞いた名前ね。あら、どこだったかしら、私も思い出せないけど・・」
「おいおい待てよ、どうして君が真実の剣を知っているんだよ?」
「どうしてでしょう、でも確かに知っていた筈よ。でもどうしてそんな古の聖剣を平ちゃんが持っているのよ?」
「それを最初から話し出せば長くなるけど、確か賞金で貰った銀貨1枚で露天商の福袋を買ったんだが、その中身がこれだったんだよ」
「福袋に入っていた。またまた、銀貨1枚で本物の聖剣なんて絶対に買えないわよ。本物なら金貨10枚でも無理無理」
「確かに君の言う通りかもしれない。でも運よく入っていたんだよ、この聖剣が福袋の中に・・」
「ちょっと待って、何か思い出したから・・。特捜本部が確か何かの事件で露天商を調べたけど・・。買ったのは去年の8月頃よね?」
「そうだよ、君に出会う直前だから7月末かな、俺が泊まっていた共和国の田舎の街で、大会の最終日だったと思うけど」
「あっ、思い出した。その頃国宝の盗難事件があって、博物館から聖剣と盾が盗まれたのよ。それで私も担当になって色々調べたけど・・。そうそう、それで犯人が分らなかったので疑わしい平ちゃんを監視しに来たんだわ。本当にすっかり忘れていた、ハッハハ」
「何だって、今何て言ったんだ。疑わしい俺を監視しに来たって、どう言う事だよ?」
「あら聞こえてたの。しまったわ、本当の事をしゃべちゃった」
「おいおいブツブツ言わずに、ちゃんと正直に全部話せよ」
「もう聞こえたならしょうがない。警察辞めるから全部話すけど、事件の参考人の1人が平ちゃんだったのよ。それで、私が貴方の担当になって素行調査と監視に来たのよ」
「嘘だろう、君が俺を監視していた! じゃ、今まで俺の事を調べてずっと監視していたのかよ? あぁ、嫁に犯罪者として監視されていたなんて最悪だ」
「ずっと監視していた訳ないじゃないのよ。一目見たら久しぶりに会う元彼でしょ。ほら、その後はもうラブラブ、チュチュでしょう。監視なんてしてないわよ。でも浮気の監視はずっとしたけどね」
「しまった、この答え方は・・」女子高生姿のヒカリは少し間が抜けていたんだった、脱線した話が長くなるといけない。
「その監視の話はもう終わりにして、それでこの聖剣をどうしようかずっと悩んでいたんだよ。だから確かめたかったんだ。その答えがやっと今出たんだ。この剣は聖剣ライトニングソードだったんだよ。それに元々は俺の剣だ、俺の友だ。もう誰にも渡さない」と力説すると
「そうね、何百年ぶりに手元に戻ってきたんですもの、返さなくていいと思うわよ」とあっさり認めてくれたが、本当に俺の話を理解してくれたかどうか疑問だった。
「そうと決まれば、平ちゃんの大事な話が終わったのでコーヒーでもいれてくるわね」と彼女は隣の部屋に行った。
隣の部屋に入りドアを閉めるとヒカリはホッとして呟いてしまった。
「やっと思い出したのね。本当に長かった。名前を思い出すまで5ヶ月もかかるとは・・」