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「本当はもう出す技は無いんでしょ?」
「あるけど・・、でも君に風邪を引かれると夜が困るんだよな」
「そんな言い訳は卑怯よ」と氷をほとんど割って挑発してきたが
「この世界だと魔導が効き過ぎるんだよ、だから次の技は力の入れ方が難しいんだ・・」
彼女が氷から抜け出し何か技を出そうと精神を統一し始めたので、このままではまた激しい戦いが続き夜に支障が生じかねないので
「じゃ、試しに少しだけ技を出すけど駄目なときは駄目って早めに棄権してよ」
「もう煩いわね。今精神統一してるんだからブツブツ言わない」
「お願いだから風邪だけは引かないでよ」
「分ったわよ。やれるものなら、やってみなさいよ」と更に挑発するので
「じゃ、いくよ。水の精霊よ、風の精霊よ、我が願いを聞け。フルフローズン」と叫ぶと、彼女の回りにだけビュービューと吹雪が起こり視界が見えなくなった。
精神統一をしていた筈だが吹雪が彼女を包み込むと息苦しくなり
「ハクッヨン、うっ・・。何これ、始めて見るわよ、それにチョウ寒いんですけど・・」と言う間もなく彼女はシベリアで発見された氷河期のマンモスのように厚い氷の中に閉じ込められてしまった。
「この氷は硬いわね・・、でも割れそうよ」と最初は余裕で念を込めて氷を割ろうとしたがいたが、さっきとは違いまったくヒビは入らなかった。
「あら、おかしいわね。うっ・・、息が苦しい・・」と2、3分もすると息が出来ずに顔が赤から青色に変わった。今度はドタバタと力の限り足掻いてみたがそれでも厚い氷は自力では割れず、次第に氷の中の彼女の表情がなくなっていった。
「ちょっと拙いな。ほら、だから言ったんだよ。我慢しすぎだよ。それにしても少し効き過ぎたかな。ブレイクフローズン」と直ぐに叫ぶと、彼女の回りの氷が直ぐに全て解けたが、酸欠した彼女は床にバッタと倒れてしまった。
「おい大丈夫か? 生きているか?」と急いで駆け寄って、ぐったりしている顔を軽く叩いて息を吹き込むと気が付いた。
「あんた、私を殺すつもり」とハッハッ息を吸って怒っていたが
「だから言ったでしょ」と気にも留めずに彼女を確り抱きかかえるとそのまま風呂に走り湯船に投げ込んだ。
「ハクッション、うっ、寒い」と彼女は風呂の中でガタガタと震えていたので
「どうだい、大丈夫かい?」
「どうにか大丈夫よ。それにしても今度の新しい技は凄いわね」
「そうだけど、まだ上手く力の加減ができなくて・・」
「平ちゃんなら、そのうち、上手く使えるわよ。それで暖かいお風呂に入れてくれるのはいいんだけど、服のまま入れるってどうよ。それにここ男風呂でしょう」
「そうだけど、無理を言うなよ。君の服を脱がせる訳にも、男の俺が女湯に入る訳にも行かないだろう」
「それもそうだけど、私の着替えの下着とかはどうするのよ?」
「君の下着って・・、ごめん、そこまでは考えてなかった」
「もう、早く部屋に戻って着替えを持ってきてよね、このままじゃ風邪を引くから」
「そうだけど、君の下着もかい?」
「当たり前でしょ、パンティーやブラよ。平ちゃんの好きなものを持って来てよ」
「困ったな、俺の好きなものって・・」
「新妻を裸で廊下を歩かせる気なの? それに今から服も脱ぐからそのまま見ているの? それとも一緒にお風呂に入りますか?」
「いやいや、今から取って来ます」
ヒカリは風呂の中でゴソゴソと服を脱ぎ出したが、俺はそれを直視できなくて下を向いていた。
「それにしても私に勝つなんて平ちゃん相当強くなったわね」
「何言ってんだよ。君が本気を出せば俺なんてまだまだだ。それに、柱の陰から見ていた人達の手前俺が勝た方がいいんだろう」
「何だ、知っていたの。謁見の時にお父様達が婿は私より強くないと駄目とか言うのよ。そんな男なんてこの国にはいないのに。それじゃ私、一生結婚できないじゃない」
「それはまた無理な話しだな。この国どころじゃないよ。本気になった君に勝てるそんな男はどこにもいませんよ、もしかして君が最強かも」
「まぁ、失礼な婿様ね、こんなか弱い新妻を最強とか」
「まぁ、最強より君の可愛さが勝っているからいいけどね」
「こんな所で惚気話は言いから、早く着替えを持って来て」
それから、彼女が風呂から上がり俺が部屋から持って着た服に着替えを済ませて廊下に出てくると
「平ちゃんの下着の趣味は可愛いのが好きなのね」
「おいおい、それが君の部屋のベッドの上に置いてあったからだよ」
「スケスケのも置いてあったでしょ」
「あれは刺激が強すぎる」と2人で夕飯を食べに宿に戻った。