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コソコソと本棚の横で冗談を話しているとふと良い事が思いついた。
「そうだ聖剣の本も買えばいいのか、そうだろう?」
「たぶん首都の専門店に行けば買えるけど、聖剣の専門書は異世界への持ち出しは運が悪いと反逆罪になるかもしれないので無理よ」と注意された。そういえば共和国でもお土産を買う時にそんな事を言われたのを思い出した。
「じゃ、後でどんな内容の本が欲しいか教えてね。今度平ちゃんが召喚された時に直ぐに読めるように準備だけはしとくわよ」
「分った、そうするよ。でも以前からずっと思っていたんだけど、大人のヒカリは賢いな」
「今更何言っているのよ、もう大学は出ているのよ。それにまるで高校生姿の私が間抜けみたいじゃないの」と笑っていた。
田舎の小さな図書館では思うような収穫はなかった。
それから今度は街に出て本屋を探してみたが、田舎なので本屋も小さくなかなかお目当ての本は見つからなかった。
これ以上探しても無駄だし、既にお腹はペコペコの飢餓状態になっていた。
仕方なく本探しは諦めて遅いお昼を食べに店に入った。
そこで、朝からどうしても気になっていた事を彼女に訊いてみた。
「教えてくれないかな?」
「教えてって何を、メニューでも知りたいの? ここで美味しい物は・・」
「確かにお腹も空いているけど、教えて欲しいのはそんな事じゃなくて・・」
「なんだ料理じゃないの、でぇ他に何が知りたいのよ?」彼女は不思議そうな顔をしていたが、俺が少し真面目な顔で尋ねた。
「国王に娘の君が直ぐに会えるのは分るが、いくら可愛い娘がお願いしたとはいえ異世界のどこの馬の骨とも知れない男が、国王に昨日の今日で会えるものなのかな?」
「なんだそんな事か」
「そんな事って、君は気にならないの?」
「暢気な平ちゃんでも疑問に思ったのね」
「やっぱり何か裏があるんでしょ?」
「正直に言うとね、平ちゃんをお父様に会わせる準備に3ヶ月はかかったわ。それに私の力だけじゃ無理だったかも・・」と本当の事を話しだした。
「3ヶ月って、それであれからなかなか戻ってこなかったのか?」
「ごめんね、平ちゃんの所に直ぐに戻りたかったけど、この問題は早く片付けたかったの、だって長引けば長引くほど結婚の許しが難しくなるから」
「難しくなるって?」
「年頃の私には当然に見合いの話が沢山来ているのよ、今は全て断っているけど、裏では政略結婚の話が進められているかも、もしそれが表に出たら立場上断れないし・・」
「そうなのか、お姫様は結婚の自由は無いのか」
「仕方ないわよ。それが姫様の運命みたいなものだから・・。だから、平ちゃんに会いたいのを我慢して、策を練っていたのよ。やっとそれが上手くいったのよ」
「でも君だけじゃ無理って・・。もしかして誰かが助けてくれたのか、それならその人に俺からもお礼を言わないと」
「そう、助けてもらったのよ。王族の規則とか仕来りとか、あとは国王のスケジュールとかで全然無理だったのよ。それで私も諦めかけていたんだけど、
でもね、きっと神様がいたのよ。貴方が武道大会で勝ったおかげで、どこかの馬の骨から超有名人になったでしょ。そうしたら不思議とすんなり時間が取れたのよ」
「なんだ誰かと思えば神様かよ。でも、きっとその神様は女神だな、それも素敵な女神様」
「ねぇねぇ、どうして平ちゃんには女神って分るのよ?」と不思議がったので
「それは俺の傍にいつも一緒にいてくれるからだよ」と恥ずかしそうに答えた。
「平ちゃん、私の他に女神とも付き合っているの?」と変な質問をするので
「時々ね」と答えたが、俺は大人のヒカリも少し間抜けかなと苦笑いをした。