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それにしても俺がバカだった。間抜けだったと言えばそれまでだが、また彼女に上手く騙された。
それにしても病気だと聞いてせっかくの正月休みに態々来たと言うのに・・。
部屋から出てきたニコニコ顔の彼女を横目に長い廊下を無言で歩いてサロンに着くと俺は我慢しきれずに
「おい、ずっと俺を騙していたな。どこの誰が病気だって、あの年であんな元気なおっさんを見た事ないぞ。それに俺より強そうだぞ」と詰め寄ると
「本当に元気になられてよかったわ、これもお医者様のお陰ね」とハンカチを持って目尻を拭きながら白々しく言っている。
彼女の山門芝居に怒るどころか呆気に取られていたが
「まぁ元気ならよかったし、それに俺の仕事も問題なく終わった」とホッとした。
「じゃ許してくれるのね」
「許すも許さないのも、君が俺に嘘をつくにはそれなりの理由がある筈でしょ」
「さすがに心が広い平ちゃん、その理由は後々ね」
「でも、あんな挨拶だけでいいのかよ。予行練習とは全然違っていたぞ」
「あら、そう言えばそうね。でもほら婚約もちゃんと認めてくれたし、これで2人はいつ結婚してもいいて事よね、さっそく王族会議に申請しましょうね」と非常に喜んでいた。
「本当に平ちゃんに買って貰った指輪をしていてよかったわ。それに、若い2人を回りの皆が羨ましそうに見ていたし。後で従妹達にも自慢してあげましょう」と高笑いは無かったがまるで勝者のように指輪も見つめていた。
「でも、自分の指輪しか買っていないとかおかしいだろう? 俺のを忘れるなんて信じられない」
「平ちゃんは指輪とかしないでしょ。それにお金が少し足りなかったのよ」
「それは本当かよ、金貨3枚で足りるって・・」
「どうしてもこれが欲しかったのよ、一生に一度だから奮発したのよ」
「奮発って・・、足りないのは君が高いのを買うからだろう」
「そうだけど、でもこれが本当に気に入ったのよ」
「まぁ君が気に入っているなら俺はいいけど」
「でも良かったわね、お父様から平ちゃんの指輪を頂けて」と国王から貰ったケースを開けてみると
「おいおい、この指輪って・・、宝石が異常に大きくないか。
どうみても駄菓子屋で20円で売っているキャンディーリングじゃないか。
ませた小学生の女子でもしないぞ。こんな物を誰が信じるか」と疑った。
「でも、この指輪を持っていると潜在能力が上がるわよ。平ちゃんだと魔導の力が上がるかもね。やった、ラッキーでしょ」と教えてもらうと
「それは、本当か。それなら大事にしないとな。そう言えばお話に出てくる魔法使いも指輪をしているな」
「そうよ。それと同じよ。それに、この紋章をみて。この紋章は王族の証だから。指輪を持っていると反逆罪以外は悪い事をしても捕まらないわよ。
これで交通違反も帳消しよ、これでツーラッキーでしょ」
「おいおい、それが元、いや、現警察官が言う事か」
「じゃ、ここでの用事が済んだので、今度は俺の番だな」
「分っているわよ。でも、意外と早く終わったし、せっかくのドレスだから、この衣装のままでもう一度結婚写真を撮りましょうよ」
「えっ、また撮るのかよ」
「前回は2人だけだったので寂びかったし・・、今は避寒に来ている親族もそこらにいるでしょ、今度は大勢で撮りましょう。私はそれがいいと思うの、どう?」
「そうだな、結婚は大勢の人に祝福されないといけないし・・。まぁ、記念に写真を何枚か撮るぐらいならいいけど」
「ありがとう。数枚ならいいのね。じゃ、衣装も2,3回変えて撮りましょうね。いい記念になるわよ」
「また衣装も変えるのかよ、君は大人と少女の2パターンあるので時間がかかるんだぞ。それにしても、本当に嬉しそうだな。君が幸せなら俺はそれでいいけど」
「幸せよ。今日は特にね」
「それで、俺が部屋を出た後に国王と何を話していたんだ?」
「それがね、早くこっちに帰って来いって」
「そうか、そう言う事か。さすがに俺の前では言い難いのかな。でぇ、君は何て答えたの?」
「今度は4人で帰ってきますって答えたら、お父様喜んじゃって」
「ちょっと待ってくれ4人って、俺と君と・・2人も多くないか?」
「どうせ直ぐに2人ぐらい増えるわよ、それに男の子と女の子が欲しいし。平ちゃんには確りと頑張ってもらわないと」