4-0-6
4-0-6 1月2日 昼
初詣の帰りに川沿いや駅前をゆっくりと散歩したので家に帰り着くと一息ついたが、ヒカリに聞きたい事がまだ沢山あったので、2階の部屋に上がり色々と聞いてみようと両手を繋いで対面した。
しかし、今度は顔が真正面に女子高生の顔なので、朝の大人の顔とはまた違い少し恥ずかしくなり口ごもり直ぐには訊けなかった。
「もう、顔が変わるとこれじゃ・・。じゃ、仕方ないですね。お年玉ですよ」と口を前に出したので、思わずキスをしてしまうと、そのままギュッと抱きしめてしまった。
「このギュッのままだと疲れるので、後ろからにしてね」と俺の膝に後ろに向きに座ると、俺は軽く後ろから抱きつくと優しい香りがするので
「やはりこっちの方が安心するな」と思わず溢してしまった。
「こら、どちらも私なんですよ。早く慣れて下さい」
「どうも、すみません」
「それで、訊きたい事ってなんですか?」
「そうだね、先ずは今度はいつまでいられるのかな?」
「少し長くいるつもりです」と楽しそうに答えた。
「長くね。じゃ正月休みの1週間ぐらいかな」
「えっ、平ちゃんは、そんなのでいいの。もっと私と一緒にいたくないの?」
「そりゃ、いたけどね。俺は5日から学校だし、君は仕事があるでしょ。それ以上はどう考えても無理だよ」
「それが無理じゃないのよ」
「そりゃ、どうしてだい?」
「だって、結婚するって言って仕事辞めてきちゃたから」とニコニコして答えた。
「おいおい、冗談はよしてくれよ」
「冗談じゃないわよ」
「本当に警察を辞めてきたのか? あんなに頑張っていたじゃないか。
もしかして働きすぎで体の調子でも悪くしたのかい。それなら仕方がないけど・・」
「少し体調は壊したけど今は大丈夫よ。本当は従姉が結婚したでしょ。それで私はこのままでいいのかなって考えたの。もう私より年上の従姉もいなくなったし、今年は次々と年下の従妹も結婚するしね」
「どうして急にまた結婚が続くんだよ?」
「知っていると思うけどお父様の容態が余り優れないのよ。万が一でも国王が崩御したら一族は長く喪に服する事になるからか・・」
「そうか、ごめんね。それで孫を欲しがっていたのか・・。それで、俺にできる事はないかい?」
「そうね、私達は未だ17歳だから今直ぐに正式に結婚するのは無理でしょうけど。是非来て欲しいんだ」
「今は冬休みだから時間はあるけど。どこに来って言うだよ」
「勿論、バンパイア国よ」
「またバンパイア国に来いってか」
「そうよ、一度お父様にちゃんと会って欲しいの。そうすればお父様も安心なされるし・・」
一度は会いに行かなくてはと真剣には思っていたが、急にこんな場面が来るとは思ってもいなかった。でも、今朝のように後悔はしたくないし、それにどうしても異世界で試したい事もあったので尋ねた。
「それで、何日ぐらいかかるんだ?」
「早朝にでも召喚してもらって。ご挨拶だけして帰れば滞在は1日もあれば充分よ。それにまた同じ日に帰ってくるから、こちらの生活に支障はない筈よ。全て大丈夫よ」
「そっか滞在は1日で済むのか。それなら明日の午後に母さんが旅行から戻ってくるので、召喚は明日の早朝がいいな。そしてまた同じ日の早朝に帰ってくる。これなら母さんにも心配をかけずに済む。でも本当に大丈夫なの。急に召喚とかできるのかよ?」
「それなら大丈夫。平ちゃんなら即断するだろうと思って、ちゃんと申請はしておいたは。だから平ちゃんが大好きなのよ」と後ろに振り向くと、またキスをしてくれた。思わずギュッと抱きしめたが、これで彼女との正式な結婚が急に進みそうだった。
「そうと決まれば時間がない。召喚前にする事とかあるのかな?」
「はいはい、それも前もって考えてきたわよ。では、先ずは作法から。じゃ、立って立って、直ぐに始めるわよ」と俺の手を払うと、なれない言葉使いや礼儀作法などの練習が夕飯を挟んで夜遅くまで続いた。
深夜全ての準備が整うと手を繋いでベッドで早朝に召喚されるのを待った。
勿論俺はいつもの赤いバッグに色んな物を詰め込んで枕元に置いたのは言うまでもないが、疲れている筈なのに少し緊張しているのかなかなか寝付けなかった。
しかし、彼女は召喚に慣れているのか、それとも上手く思惑が進んだのか直ぐに寝たようだ。