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朝食が済み、後片付けも済んだのでいつものように両手を繋いでソファーに座ったが、今日は大人の顔を直視できていた。
「やっと直視できるようになったのね」
「でも、未だ少し恥ずかしいな、少し照れるな」
「チュはせがむくせして、何言っているのよ」
「それとこれとは話が違うけど・・」
「はいはい、それで何が聞きたいのよ?」
俺には色々聞きたい事はあったが、まず写真の事を聞いてみた。
「あの結婚式の写真はなんだい?」
「あれね、先月の従姉の結婚式に参列した時に新年はどこにいるのと聞かれたので異世界の彼氏の家と答えたのよ。それでこの家の住所を教えたので年賀状代わりに届いたの。だから新婦は私じゃなくて従姉なの、でもよく似ているでしょ、親族でも間違えるほど似ているので平ちゃんも驚いたかな」と悪気も無く答えた。
「驚いたどころじゃないよ。それに俺は死にそうになったよ。昨日は皆で大変だったんだから」と愚痴った。
「ごめんごめん。平ちゃん死にそうになったのね。そうそう。さぁ、誤解も解けたようだし、初詣に行きましょうか?」
「初詣って、君達にもそんな習慣はあるの?」
「あるわよ。ただ初詣とは言わないし、神社やお寺とは違うけど。新年のお参りはあるわよ」
「そうなんだ」
「じゃ、そろそろこの姿じゃ拙いので元に戻らないと」
「それなら母さん明日まで旅行なので、今日一日なら大人でも大丈夫だよ。でも初詣に行くなら振袖着るの? 昨日楓が振袖を着ていたけど・・」
「楓ちゃんが振袖を着ていたの?」
「初めてだって。でも、すっごく可愛かったよ。君もきっと似合うよ」
「そうね、振袖とか着たいけど一人じゃ着られなし、それは無理よ」
「ごめんごめん、無理なお願いして」
「じゃ、いつもの姿で可愛い服着て腕組んで行こうかな?」
「それもいいね」
「それじゃ着替えますので、少し時間を下さい。それとも2階で一緒に着替えますか?」
「一緒に着替えるって、新年早々大胆だね」
「もう、夫婦って事を忘れたの?」
「そうだった。新婚旅行からずっと会っていないもので、夫婦って事をついつい忘れるな。これから頑張らないと」
「変な言い方ね。何を頑張るのよ?」
「まぁ、先ずはスキンシップかな」
「あら、えらく素直になったわね。じゃ今晩はおばさんもいないので裸のお付き合いでもしましょうか?」
「行き成りかよ。でもさすがに家では勘弁してくれよ」
「はいはい」
三社参りとは言うものの同じ神社に2回参って良いのか分らないが、着替えが済むと近くの神社に今日も初詣に向かった。
神社でお参りをしておみくじを引いて、帰りの参道で今日も剣道部員や同級生に出会ったが、軽く新年の挨拶だけすると各々に用事があるので直ぐに分かれたが、俺と手を繋いでいる彼女が皆は気になっていたようだった。
「困ったな、新学期から君の事を色々訊かれるな」
「いいじゃないの、奥さんって正直に答えなさいよ」
「それは無理だよ、俺はまだ高校生だし」
「さすがに奥さんは無理ね。じゃ、なんて答えるのよ?」
「ん~、仲のいい友達とかかな」
「友達って! 彼女でもないのね、本当にそう答えるの?」と指をバキバキ鳴らして訊くので
「よろしければ、彼女と答えさせて頂きます」
「彼女ねぇ、まぁ、そんなとこかな」
と2人仲良く参道を歩いていると、今日も祭りにヒカリと2人で来た事を思い出したが、今日のそれは嬉し思いでだった。
仲良く手を繋いで2人で参道を歩き屋台でリンゴ飴を買っていると
「今日も、もてもてだね。でも、お姉さんに知られたら今度は殺されますよ」と屋台のお兄さんから今日も声をかけられたので、俺と彼女が大笑いをすると不思議がっていた。さすがに隣いる若い娘がそのお姉さんとは思いもつかないらしい。