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2人が帰えると南が後片付けを始めた。俺はテーブルの上の写真を片付けるとまたソファーに横になったが、南は俺が心配になり
「大丈夫なの、おばさん旅行なんでしょ。今夜は久しぶりに泊まっていこうか?」
「バカ、俺達もう高校生なんだから、お泊りは拙いだろう」
「そうね、じゃ夕飯うちに食べに来る。うちもお母さんと2人だから平助が久しぶりに来てくれると、お母さんも喜ぶわよ」
「ありがとう、やっぱ俺にはお前しかいないな」
「はいはい、いつもの口癖は止めてよね。また二股になると大変よ」と片付けを済ませると、着慣れない振袖がきついので早めに着替えたいと南も家に戻った。
夕飯までには少し時間があったそのまま横になって色々ぼーっと考えていてもどうしようもないので、気分を変えるために駐車場で竹刀を振り始めた。外に出て運動をするとなんだか嫌な気分が紛れていく感じがした。
そして、南の家で夕飯をご馳走になリ、南のお母さんと久しぶりに雑談すると少し気が晴れた。部屋に戻り汗臭かったけど今日は風呂も入らずに、元旦にみる夢が初夢だともいう人もいるので、いい夢をみようと今日も早めに寝てしまった。
今日も早く寝すぎたせいか朝方に目が覚めてしまった。さすがに1月の早朝の部屋は真暗で寒かった。
「あぁ、寒いな。でも、みょうに背中が温いぞ。それにお腹が窮屈だ、誰か俺の腹に手を回して寝ているな。まさか、これが初夢かな」と、ゆっくり振り返ると
「あっ、ヒカリ、どうしてここに寝てるんだ。結婚したって?」と少し寝惚け眼で見るが
「私が結婚したって、したわよあんたと、したわよ・・」と半分寝惚けていた。
「夢じゃない。ほら筋肉質の人と」
「私疲れているのよ。その話は明日、明日・・」と不反応で寝てしまったので、俺もこれは夢だとまた寝てしまった。
朝起きると、俺の横にはやはり誰もいなかった。
「何だったんだ、あの夢は、初夢にしちゃ中途半端だし。縁起が良いのか悪いのか分らないぞ」とお腹が減っていたのでいそいそと誰もいない筈の1階に下りると大人のヒカリがエプロン姿で楽しそうに朝食を作っていた。
「おはよう、もう起きたの。もう少し待ってね、朝食できるから。まるで新婚さんのようでしょう」
「あっ、ヒカリ。どうしてここにいるの?」と少し眠い目を擦って尋ねると
「どうしてって・・、もう帰れとでも言いたいの?」
「いや、結婚したって」
「また私が結婚したって、したわよ、去年貴方としたのよ、嫌ね昨日の変な夢の続きなの」
「俺じゃなく、他の男と・・夢じゃない。ほらそこに葉書が」と彼女に葉書を示した。
「あら綺麗に撮れているわ。これは先月の結婚式の写真ね」と葉書を手に取り嬉しそうだった。
「何! 先月に結婚しただと、俺としてから直ぐじゃないか、信じられない」
「はぁ? 確かにしたわよ結婚。私の従姉が」
「従姉って、また、俺を騙すつもりかよ。写真は君だぞ」
「なに怒っているのよ。ほら、写真をよーく見なさいよ、私じゃないでしょ。私の方がスマートで美人でしょ」と否定するが、俺にはどうしても同じ顔に見えてしまっていた。
「平助はこの私を信じられないのね」
「信じるも信じないのも・・」
「それに私の顔の区別がつかないなんて最悪よ。本当に私を愛しているの?」
「だって、そっくりだし・・」
「分ったわ。平助は私の大人の顔を直視できないから見間違えるのよ。はい顔を近づけて下さい」
そういえば俺はまだ大人の顔を直視できなかったので
「これでいいのかよ」と近づけると
「それでは、新年のご挨拶」と彼女が熱くチュをすると俺の気分が晴れた。
「はい、おめでとう御座います。さぁ、食べましょう」と茶碗にごはんをよそいで俺にくれたが
「ん・・、もう1回してくれないと分らないな」
「はぁ? それは、食後のお楽しみ」と、軽くあしらわれた。
仕方なく朝食を食べ始めたが、朝飯が以前と比べて格段に美味しいので
「今日の朝飯はとても美味しいよ、本当に君はヒカリなの、これも夢なのか?」
「ちゃんと顔を洗ったの、まだ寝ぼけていない。でも本当に美味しいでしょう」
「どうして美味しいのさ」
「だって、花嫁修業をしてきたから」と笑った。