3-10-1
3-10-1 ある秋の休日
久しぶりの休日だ。もちろんアラタとの朝の練習は予定していたが、勇者武道大会も剣道の都大会も無事に終わり、これで今年の大きな行事は済んだとつい気が緩んでいたのかお腹の辺りが苦しいので目が覚めた。
するとヒカリが腰からしっかりと手を回して俺のお腹をと圧迫して寝ていた。
しかし、彼女は俺の苦しみとは逆に自転車で2人乗りでもしている夢でも見ているのだろうかスヤスヤと寝ていた。
「お腹が苦しいと思えば・・。ずっと連絡もせずに、急に来てこれかよ」
でもそんな些細な事は彼女の寝顔を見ていると全て許せた。なぜなら久しぶりに見るとやっぱり可愛い。
もう我慢しきれずに振り返ってそっと抱きしめると、柔らかくてとても気持ちがいい、このままじゃダメだダメだと我慢したがついに俺の限界を超えてしまった。
いけないとは思いながらついついスケベ心を出てしまい興奮して胸まで触ろうとしたら「ハァハァ」と息が荒かったのか彼女が起きてしまい目が合ってしまった。
僅かな沈黙の後に俺はまた気拙くて目を逸らし、振り返って寝たふりをするとお尻を思いっきり捻られた。
「もう平ちゃん、スケベなんだから。挨拶無しに直ぐにそれはないでしょ」
「何の事だよ。俺は寝ていたけどね」と惚けたが、幾度と無くお尻を蹴るので
「ごめんって、でも仕方ないだろう、俺も男だし、朝は特に元気がいいんだ」
「それもそうね、夜なら考えてもいいけど、さすがに朝早くからは心の準備がまだ・・。でもちょっと待ってね、準備するから・・」とモゾモゾし始めたが、俺は少し恥ずかしくなって
「ごめん、でも俺は朝からそこまでの気はないけど」
「えっ、その気にさせて、この意気地なし」とまた俺のお尻を蹴り出した。
「だって、今日も可愛いし、久しぶりに君を抱きしめたくなっただけだ」
「この最低男っ!」
「そんなにお尻を蹴るなよ。そのせいで元気が無くなっただろう」
「そうなの、ごめんね」
「それにしてもここはどこかな? 俺の部屋にしては広いし豪華だぞ」
「そう言われるとベッドも広すぎるけど。あら、ここは宮殿の私の部屋だわ。
おかしいわね、召喚場所はホテルって提出したのにどうなっているのかしら・・」
「召喚場所って・・」
「その事は後で話すけど。それにしても、宮殿で夫婦でもない2人が朝から抱き合っていると拙いわよ。一応私は未成年で独身のお姫様だから。平ちゃんでも衛兵が来ると不審者として捕まるわよ」
「そうなのか、じゃ、どうして2人同じベッドに召喚されたんだろうね?」
「お父様の仕業かも、もう孫の為なら手段を選ばない気ね」
「孫って、俺達まだ国王から正式な結婚の許しさえ貰っていないけど」
「孫が欲しいのよ。だって子供が大きくなって、誰もお父様を相手にしなくなったから寂しいのよ」
「そういうものかな。それじゃ、国王も普通の家も変わらないね」
「私も平ちゃんの赤ちゃんが欲しいけど、平ちゃんはどうなの?」
「何の事だろうね? 僕には良く分らないな。じゃ、僕の部屋はどこだろう?」
「もう、貴方は廊下よ!」
誰か来ると面倒だと俺達2人は荷物を持って宮殿を逃げるように飛び出し、地下鉄に乗って中央駅に向かった。
車内で詳しく召還された理由を聞くと彼女が国に帰った時に召喚申請の手続してくれたらしい。そのお陰で休みの日に異世界で旅行ができる事になった。
「それで私用でも召喚はできるのかな?」
「何を言っているのよ、私はこの国のお姫様なのよ。私の一言で召喚申請の許可なんて簡単におりるのよ」
「それは本当なのか! それならいつでも会えるじゃないか。でも申請理由は何て書いたんだよ。さすがに旅行は拙いだろう」
「そんな小さい事は気にしなくていいのよ。まずは旅行を楽しみましょう」