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奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
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3-8-4

3-8-4

 俺達が剣道場に着くと若くて体格のいい男性が鍵の掛かった扉の前でバッグを手にして俺達の帰りを待っていたがどこか見覚えのある顔だった。

よく顔を見ると武道大会で俺と死闘を繰り広げた前回の優勝者の彼だった。


「やっと帰ってきたか、待ち疲れたぞ」と気軽にアラタに近寄ってきて

「アラタ君、久しぶり、ケガをしているとは聞いていたが元気だったか?」と声をかけて握手をして何かをゴソゴソと話し終えた。

 今度は俺に向かって手を出してきので俺は一瞬躊躇したが直ぐに握手をすると

「君も一緒だったとは運がいい。でも、いやーまいったよ。1回戦でまさか初出場の君に負けるとは思ってもいなかったよ、アッハハ」と明るく頭を掻きながら笑い出すと、俺がこの人に対して持っていた真の勇者で神経質な人なんだろうというイメージが崩れてしまい、なんだ普通の人じゃないかと親近感を覚えた。


 それから、直ぐに女性部員の応援から戻った楓も加わったが、彼女にしてみると武道大会の歴代の優勝者や準優勝者が一同に目の前に並んでいるので、憧れのスター達にでも会ったかのように不思議なそうな顔をして無言で俺達を眺めていた。


 アラタの剣道場に尋ねてきた男性の名前は佐々木昴と言って年齢は27歳、職業は共和国警察庁の職員だとは知っていたが、詳しい仕事の内容や部署は当然教えてもらえなかったし、今回こっちに来た理由は秘密だったが、ヒカリが同じ部署とか言っていたのを思い出し、不用意に言って後で彼女に迷惑がかかっても大変だと、俺も極力その辺の事は訊かないでおこうと決めた。


「それで、昴さん、今度はどのような事件ですか?」と何気にアラタが尋ねると

「詳しい事は言えないが、また捜査だ」と答えたので

「えっ、以前から2人は知り合いだったのかよ」と俺が驚き、事件の捜査だと教えているし、守秘義務ってないのかな、それともここまではぐらいはセーフなのかなと考えていた。


「知り合いって言う程でもないけど、剣術仲間なので知らない間柄でもないし、

こっちに来た時はいつもアラタ君にお世話になっているよ。

なんせこの剣道場には道具一式が揃っているので俺には助かるよ」

「まぁ、お互い様かな」とアラタは笑っていたが

「聞く所によると、君達は明日が試合だとか、悪い時に来てしまって申し訳ない」

「全然気にしないで下さい。大した試合じゃありませんので、それに明日のために軽く練習でもとここに戻ってきたのですから」とアラタが謙遜していた。


「じゃ、今から練習するんだね。それじゃちょうどよかった。その練習に俺も加わっていいかな。こっちに召喚されるとどうも体が鈍っていていかん」

「こちらこそお願いします」とアラタが嬉しそうに頷くと、いつものように合意ができたようだ。

すると、昴さんは俺と楓に向かって

「夕方までまだ時間があるので皆で立会いでもしないか」と勧めてきた。

俺は朝の練習しかしていなくて、少し練習不足で体がムズムズいていたので

「お願いします」と剣道着に着替え、軽く体操すると試合形式の練習を始めた。


 昴さんと剣道で初めて立ち会う事になったが、さすがに構えが大きくて威圧感があった。魔導は勿論使わなくても、その竹刀の振りは鋭く、一本一本俺の面や胴にビシッ、ビシッと決まっていく。

あの試合の時のように体を動かすだけで上手く交わすことはできなかったし、

相手の振りを竹刀で妨げても力で持っていかれてしまっていた。

それに比べて俺の振りは体を動かすだけでヒラリヒラリと交わされていた。


偶然とは言えよくこんな人に勝てたものだと立ち会っていると、当然向こうも俺と同じように思ったのか

「そろそろ体も暖まったろうから、君も本気を出したらどうだ。このままじゃ明日の試合の練習にはならないぞ」と挑発してきたが、申し訳なかったが俺は最初から本気を出していた。前の試合だけが違ったに過ぎなかったがそれは言えずに黙々と竹刀を振って掛かって行くしかできなかった。



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