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奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
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3-8-3

3-8-3

 俺は朝食を直ぐに済ましてしまうと自転車で剣道場へと急いだ。

さすがにいつもより相当早かった。アラタはまだ練習前の柔軟体操をしていたが、楓は大会に出場する女性部員のサポートのために朝早くから会場に行くので、今日の練習はお休みのようだ。

「さすがに今日は早く来たか。さぁ早く着替えてこいよ、さっさと練習を終わらせて皆の応援にいくぞ」とアラタが俺を急がせたので直ぐに剣道着に着替え、まずは軽く体操から初めて素振りなどの基本練習で体を動かしていた。


 アラタも準備ができたので早速2人で試合形式の練習を始めたが、繰返して立会いをやっているとどうしても俺の癖がついつい出てしまっていた。

「平助、明日は剣道の試合だからな、左手で竹刀を受けようなんてするなよ、

左手は竹刀を確り持っておけ」と注意をされたが、これまでの練習でやって来た事を急に禁止されると逆に意識してしまっていた。

「どうしても、タイミングが合わないな。それにまだ籠手を避けるのが難しい」と弱音を吐いていると

「でも、嫌な勉強をしないで大学に入れると思えば少しは楽しいだろうと」と笑ったが、頭のいい奴とは違い剣道だけが大学合格への俺の頼みの綱になっていたので俺は笑えなかった。


 どうにかアラタのお陰で癖は治りかけたが、さすがに武道大会から試合までの時間が短すぎたようだ。

今日はもう少し練習をして行きたかったが、もう、皆の応援に行かなくてはならない時間になったので、心残りだったが直ぐに制服に着替えて、アラタの用意していた車で2人して会場へと向かった。


 俺の学園は全国大会出場の常連校であり、どの大会でも毎年シードされる強豪校なので第1回戦から3回戦はすんなり勝ち上がったが、お昼を挟んでからの準々決勝や準決勝になると他の強豪校とも当たるのですんなりとは勝たしてはもらえず苦労する場面もあったが、どうにか決勝戦までは駒を進めることができた。


 俺は会場で試合をしている選手の動きを近くから見ることができたので明日対戦する相手の動きを前もって見ていたが、その中には不思議な事に何人かは初めて観る様な気がしない者もいた。

たぶん、中学生の頃に対戦したんだろうか、もっと思い出せるといいのだがと思っていると、その構えと戦い方ではっきりと思い出せた奴がいた。

「あいつは公園で俺を襲ってきた1人に違いない」と分ったが、こんな所で騒いで問題でも起したら大変だと、高校名と名前だけを確り覚えた。


 準決勝を終えて、決勝まで時間があったので出場選手が休んでいる中を俺は冷たい水やタオルを配るっていると

「やっぱりアラタがいないときついな」

「そうそう、あいつがいないと試合数が増えるばかりだ」等々の声が出場した選手から聞こえてきた。

「やっぱり、アラタは凄いのか」と訊くと

「大将にあいつがいると気が楽だし、あいつは負けないのでな」と当然のように言っている。奴の部員からの信頼は相当なものだった。どうしてそんな男が校内一嫌な奴とまで噂されるのか以前から不思議だったが、これは、きっと持てない男達の嫉妬だろうと分ってきた。


 その後の決勝戦でも学園は苦戦しながらも優勝できたので選抜剣道大会への出場が決まったが、出場選手がそんなに喜んでいるようには見えなかったので俺には信じられなかったので尋ねた。

「おいおい、優勝したの嬉しくないのか?」

「それは嬉しいけど、これからが大変だ」

「そうだな練習が大変だよな、次は全国大会だものな」

「お前は団体戦の選手に選ばれていないからまだ分らないだろうが、次の大会はアラタも団体戦に出るんだぞ」

「そうだよな調子が戻れば団体戦に出るよな」

「奴が出れば出場枠が一つなくなるのさ。だから俺達は今から大変なのさ」


 そんな話を聞くと団体戦に出場した部員はこれからが大変なのだろうとしかその時は俺は思わなかった。

大会の表彰式が終わり、まだ午後3時前だったが今日は剣道部の練習はなく、明日は俺達が出る個人選に今日出場した選手が応援に行くようにと話が付くと、各部員はばらばらに帰宅したが俺とアラタはまた少し練習でもするかと剣道場にまた戻った。


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