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奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
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 俺の頭の中は南と一緒に家に帰りながらも、家に帰り1人でテレビを観ていても、ヒカリにこちらの世界に知り合いなんているのだろうか、誰だろう、誰と一緒にいたのだろうか、んな疑問がグルグル巡り、イライラしていた。

 彼女だってプライベートはあるのだからと自分を抑えようとしたが俺の心が狭いのか、既に彼女の虜になっているのか、知りたくて、知りたくてしかたなかった。


「ただいまぁー」明るくヒカリが帰って来たかと思うと、俺に何も言わずに直ぐに2階の自分の部屋に上がってしまった。

「おーいヒカリちゃん、お昼ごはんはどうするの」

「すみませんけど、さっき外でごはん食べてきたから要りません」

普通なら「分かった」と聞き流す平凡な返事だった。でも今の俺には、なぜか少しむかついた返事だったので2階に上がろうとしたが、タイミングよく着信が鳴った。南からだった。

「家に来ない? 話しがある」これで少し頭が冷えたのか、俺の独りよがりのせいで彼女と揉めなくてすんだとホッとした。

「飯食って行く」と返信すると

「了」と直ぐに帰って来た。

朝の話の続きでもあるのだろうと、さっさと1人でお昼を食べて、

「ちょっと出てくる」と2階のヒカリに声をかけたが、聞こえなかったのかそれともまた寝てしまったのだろうか返事は無く、俺はそのまま隣の南の家に出かけた。

 

 久しぶりに南の部屋に行くと、相変わらず俺には訳も分からない本がずらーっと棚に並んでいる。

「俺が遊びに来ないうちに、また本が大分増えたな。夏休みにバイトもしないで、どっからそんなにお金が出るんだ」

「もちろん、お小遣いだけど、うちはバイトより勉強が優先なのよね。でね、これ読んでみて」

南は、今度は「西洋の妖怪の謎」と書かれた本と鏡を持ち出してきた。

「朝、図書館で会ったときに気になったけど、平助の首筋赤くない、ほら、ここんとこ」南は鏡を手にして俺の首筋を映すと

 俺も気づいていたので「あぁ、これ痛くもなし血も出ていない。公園で虫にでも刺された跡だよ」と否定すると、南は真剣に俺の首筋をガンミして

「ほら、よーく見て、こことそこの2ヵ所噛まれた跡があるでしょ」

鏡で首筋の辺りをよーく見ると、そういえば2ヵ所ある。

 俺はそこまでは見ていなかった。さすが南、見るところが違う。


 南はやっぱりみたいな顔つきで本を開いて解説と挿絵を示して

「ほら、この挿絵と似ているでしょ。バンバイアの噛み跡じゃない」

「噛み跡って、映画のドラキュラみたいにヒカリちゃんが俺を噛んで、ズーズーっと血を吸ったとでも言いたいの」

「うんうん」と南は首を立てに振るが

「ちょっと待ってくれよ、この科学技術が進歩した現代にそんなバカな話があるか」と否定してみたものの、確かヒカリちゃんは「自分はバンパイアの系統」とか言っていたよなと心配になって

「でぇ、噛まれた俺はどうなるのさ」

「噛まれた平助は、彼女の虜になるのよ」と南は答えたが

「虜って、ロボットみたいに彼女の言いなりになるの」

「具体的にはよく分らないけど、たぶん彼女の言いなりで、拒否できないかも」

俺は違う意味で既にヒカリの虜になっていたので、既に彼女の言いなりかもしれないが「じゃ、俺はどうしたらいいの、俺にどうしろと」と尋ねると、彼女は真剣に考え始めた。


 そして、真剣な眼差しで「彼女が寝ている間に勇気を持って彼女を倒すしかないわね、これを持って帰って」と十字架と木槌と杭を出してきた。

「おいおい、十字架はまぁいいとして、俺に杭を木槌でヒカリちゃんの心臓にでも打ち込めっていうのか」

「そうそう、昼間に寝ているときにね、できれば思い切り深めにガンガンって」

南は頭が良いのか悪いのか、素直なのか無知なのか俺には分からないが

「それは犯罪だぞ。盗撮どころの問題じゃないぞ。それだけは絶対に断る」と仕方なく十字架だけを受け取ったが、あまりにも十字架が露骨すぎて

「お前も女子高生だろう、もっとかわいい十字架は無いのか、十字架のピアスとかは?」

「あぁ、そうそうストラップなら有った筈」とあっさり別なものと交換して、俺は家に帰った。


 俺が家に帰り2階に上がるとヒカリの部屋からカチャカチャとキーを叩くような音がするので、お昼寝は終わったなと俺がドアをノックすると

「はーい、どうぞ」と返事がしたので「ヒカリちゃん、入いるよ」とドアを開けると、彼女は、何か勉強でもしているのか机に座ってノートパソコンを叩いていた。

「何していたの、勉強?」と部屋に入ると

「そうなの、今朝友達からメールが来てね、レポートちゃんとしているかって?

それでね、午前中にその友達と会って話をしていて、驚いたことになんと締め切りが明日の午前中までだって、それで急いで書いていたのよ。よかったは間に合いそうで」

「ギリギリセーフでよかったね。それで、異世界からこっちの世界へのメールってできるの、異世界のスマホってこっちの世界でも使えるの」

「えっー、なに言ってるんですか、最初に平ちゃんにメールしたじゃないですか、同じ世界にいる者どうしは、もちろん使えますよ」と猫のキャラクター柄のスマホを俺に見せるとこっちの世界と同じスマホ、それも最新型だった。


 大会本部事務局からのメールはあれだけ気にしていたのに、俺は一番大事なヒカリからのメールを完全に忘れていた。

確か最初彼女の方から俺にメールで「公園でお待しています」って着たんだった。

異世界からは無理としても、同じ世界どうしなら当然に使える筈だ。

「ほら、平ちゃんのメルアドもちゃんと登録してありますよ」と登録名簿を見せてくれると、そこには中村助平になっていた。

「助平、おいおい、君は俺の事をそういう風に思っていたのね。わざとだろう」と笑いながら彼女に言い寄るとばつが悪そうにしていたが、

「じゃ、平ちゃんは、私のメルアドをちゃんと登録していますか」と反撃してきた。

「ごめん、俺はすっかりメールのこと忘れていてヒカリちゃんのメルアド登録してないや」と正直に白状した。

「だめですよ、ほらほらスマホ貸して下さい」

俺は彼女の反撃にあっさり負けてしまい、戦利品まで取られてしまった。

 ヒカリは俺からスマホを受け取るとメルアドを登録し、名簿に森ヒカリと登録したが、そこには彼女とか許婚と登録して欲しかった。でも、あとで書き換えればいいなと思った。


 そう言えばヒカリのスマホにストラップが付いていなかったので

「これどう?」と南から貰った十字架のストラップを見せると彼女は笑って

「最悪、これ、南さんでしょ」 

「どうして分かるの?」

「誰でも分かりますよ、私は十字架なんて大丈夫ですよ。

明日、南さんに見せて疑いを晴らしましょう」とストラップをあっさり付けて

「ほら、触っても大丈夫。そうそう、平ちゃんも私のお土産のストラップ付けて下さいね。それから、レポートは今日で終わりますので、明日の午後一緒にどこか行きませんか」

おっ、なんとラッキー、これも神のご加護か、前もって調べていてよかったと思い

「では、プラネタリウムはどう、行く?」

「何ですか、そのプラネタ・・」と初めてその言葉を聞いたらしいので、

あちらの世界には無いのかと思い「昼でも星を見られる施設だよ」と教えると

「こっちの人は変わっていますね。自然に夜見ればいいものを昼間に見るなんて」と不思議そうにしていた。


 確かにそうだな、自分達で星を見えなくしておいて、星を見る施設をお金をかけて作るなんてと思ったが「そこはね、夏でも昼間暗くて涼しいよ」と言うと彼女は「ぜひ行きます」と即答だった。

「それじゃ、ヒカリちゃんの勉強の邪魔になるので自分の部屋へ」と俺は彼女の部屋を出て、自分の部屋に戻るとすぐさま登録名を彼女ヒカリちゃんに変更し、お土産の鬼ストラップを付けたのは言うまでもない。

 なんだがさっきのイライラがバカらしくなってきた。未だ夕飯には時間があるので明日かっこよく説明するために星の配置でも検索するかと怖い顔の鬼の付いたスマホをいじり出した。


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