3-7-3
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南を訪ねるといつものように制服姿で部屋にいたが、何故か珍しくイライラしている様子だった。それは、日曜日の朝の勉強会に行く時間だったが、俺を心配して行けなかったみたいだからだ。
「おはよう、よかった、まだ部屋にいてくれて」と俺が声をかけると
「遅い、遅い、それで試合の結果は」と俺に声をかけたが左腕の包帯に気が付くと
「その左手は大丈夫なの」と心配してくれたが、俺が暗そうにしているので次の言葉が出ないようだった。しかし、俺の元気な姿を見て気を取り直し、無事に帰ってきてホッとしているようだった。
「心配かけてすまなかった。左腕は大した事はないよ、単なる打撲だ。
それで、試合が早く終わったのでお前のお土産を探す時間ができたよ。
はい、お前から頼まれていたお土産、結構高かったんだぞ」とアラタの時のようにカバンからトロフィーと分らないように出して手渡した。
すると、トロフィ-を手にしても驚きもせずにキョトンとしているだけだった。
「なんなのこのトロフィ-、準優勝って書いてあるけど、誰がしたのよ」と最初は意味が分らなかったのか
「誰って、俺さ。俺が準優勝したんだよ」と答えると、彼女はトロフィ-よく見ているうちに涙目になり、彼女と知り合って初めて俺に抱き付き
「嘘じゃないのよね。おめでとう、平助」と喜び出した。
「これも、君のお陰さ、あのお守りが凄く役に立ったよ。本当にありがとう」と俺も右手できつく抱きしめると、ヒカリと違い胸が大きな南は柔らかくって気持ちよかったので顔がにやけ出してしまった。
「はい、ここまで。そろそろニョキニョキとスケベが出てきたでしょ」とズバリと俺の心を読み当ててしまい、今までの感動は何だったのかと思うより早く、簡単に俺の右手を払い除けられてしまい俺から離れた。
それから、左腕の状態を話して彼女を安心させると、本当のお土産の本とサクラから預かった手紙を渡した。
「そう、やっぱり、私が思っていた通りだったのね」と直ぐに手紙を読み終えて少し嬉しそうにしていたので
「思っていた通りって、何がだよ」と訊いてみたが
「それは秘密」と、あっさり断られてしまった。
「サクラの言う本ってこれね、後でじっくり研究するわ」と童話をパラパラと捲ると興味が湧いたのか真剣な目になった。。
それから、彼女が一番興味を持っている第1回戦の内容を詳しく彼女に話すと
「うん、うん。そうなんだ」と、これまた自分だけで納得していたが
「たぶん、相手も気付いたと思うから。残念だけど、来年はこのお守りは使えないかもね。また、新しい方法を考えましょう」と更に真剣な目で言っていたので
「たぶん来年は俺は出ないだろうから、その時はアラタにでも新しいお守りを渡してくれないか」と頼むと
「えっ、もう出ないの。賞金いいのに、それに、次は私も連れて行ってもらおうと思っていたのに、それと珍しいお土産は」と非常に残念そうにしていたが
「ごめん、お土産はアラタに頼むといいよ。でも同行は無理だと思うよ」
「ご心配なく、アラタさんならどうにかなるかも。それに、来年は心配しなくてすむわね」と答えた。
これで朝から一通りのお礼の挨拶回りが済んだので、自分の部屋に戻ってベッドに横になった。