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奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
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3-6-1

3-6-1

 控え室に戻るとヒカリが心配そうな顔をして待っていた。俺のやられている試合を途中から見られずにここで待っていたようだ。

彼女が直ぐに一人では立っていられない俺の装備を外してくれた。

アザや擦り傷が酷かったが、それよりも左腕のサポータを外してみるとやはり紫色に腫れ上がっていた。

既に限界だったのは誰の目にも明らかだった。

レイさんに氷水で左腕を冷やしてもらいながら俺はできるだけ明るい声で

「無事に終わった。俺の大会はこれで終了だ。心配かけたな」と傍にいたヒカリを右手で抱きしめると、彼女も何も言わずに頷いていた。


「決勝戦は出ないんですか、あと一勝で優勝ですよ」とレイさんが確認したが

「そりゃ出たいですけど。もうこの手じゃ無理ですよ。それに体力が残っていませんし。もし、俺が棄権しても賠償金の支払いは無いですよね」

「もちろんですよ。それどころか準優勝ですので賞金が出ますよ」

「そうですか、よかった。それじゃ、残念だけど棄権します」と、あっさり言い出すと、レイさんは事務局にその旨を報告するために急いで部屋を出て行った。


 そのままヒカリを抱きしめていると彼女の顔が異常に嬉しそうなので

「おいおい、俺の心配より賞金の事を考えているんでしょう」と少し突くと

「違うわよ。平ちゃんが無事で嬉しいのよ」と答えたが、次第に顔が少しずつゆがみ出し、遂に心配そうな顔が壊れて

「でへ、どうして分ったのよ」と笑顔がこぼれんばかりに俺を覗き込んできたので

「そりゃ、当然ですよ。君との付き合いも長いんでね。

でも、悪いけど賞金のうち3万ポイントはアラタの借金の返済に使い、それに1万ポイントは応援してくれた南と楓とその友人に何か買ってあげようかと。だから指輪は3万ポイントで許して下さい」と頭を下げて頼んだ。


「そんな事になるかとは思っていたわ。もう初めから、そう決めていたんでしょ。もっと大きい指輪を買うって嘘でしょ」と最初はプンプンしていたが

「いいじゃないか、それで。俺もこの通り大丈夫だったし」

「そうね、たぶんそんな事を考えているんだろうとは思っていたわ。それでいいのかもね」と彼女も素直に頷いた。


 俺は余りにも彼女が素直に俺の提案を受け入れたので、怪しい、これには裏があると思い

「でぇ、俺にいくら賭けて儲けたの。残念だったけど、俺が優勝しなかったから、全てハズレでしょ」と尋ねると

「何だ、私が賭けてたのは、お見通しだったの。でも、平ちゃんはお子様だから知らないのよ。賭け方には色々あって優勝者だけを当てるのもあれば、優勝者と準優勝者を当てるのもあるのよ。それに連勝単式と連勝複式もあるのよ」と日頃競馬でもやっているかようにニコニコして話してくれた。


「なんだ、それは。俺にはよく分らんが、でぇ、上手く当たりましたか」

「まだ決勝戦の対戦相手が決まらないので確定ではないけど、はいはい、給料半年分ぐらいかな。だって平ちゃんの準優勝は、万馬券だもの」

「はぁ、半年分。俺の賞金より多いじゃないか」と少し呆れ、今度は出場するより賭ける方に回ろうかとも思ったが、

「おいおい、お前はまだ17歳じゃないのか、賭け事はいいのか?」と嫌味を言うと

「今はね。でも賞金の引き換え日には、あら不思議、朝起きると大人になるのよ」と笑っていた。

 

 その後、ヒカリは俺の棄権に安心したのか、大金を儲けて安心したのか、これ以上抜け出すと顰蹙を買うからとまた対戦相手の方に戻っていったが

「夜に一緒にごはんでも食べましょう。もちろん平ちゃんのおごりでね。それじゃ後で連絡します」と言っていた。


 それにしても、給料半年分だと。掛け金の倍率は何倍だったのだろうか。

もし俺が負けていたら、きっと俺は彼女に半殺しの目にされていたなと笑いが出そうになった。

それにしても、あいつが俺に素直に全部を話す訳がないよな。

きっと儲けたのは給料半年分じゃなくて1年分ぐらじゃないかな。

そう考えると、お礼に化粧品でもと思っていたのがバカらしくなった。

化粧品どころか、あいつは儲けたお金で思う存分エステ通いができるぞ。

そうそう、夜のご飯はあいつのおごりだ。



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