3-5-5
3-5-5
俺は相手の攻撃をどうにか防いでいるだけなのに、会場からは今度は凄い歓声が聞こえてきた。たぶん観衆が思っていた秒殺が免れたせいだろ。でも確実に俺への声援が増えてきたので勇気が湧いてきた。
しかし、今度は相手が本気を出した怒涛の攻撃が続いた。まだ相手の振りが遅く見えるが振りには力はあるし重い、全ての攻撃を体だけで避けようとしても無理だ、無理なものはどうにかトンファーで受け止めてはいるものの、アラタの攻撃では5分で腫れ上がった腕は、奴はアラタより格上の相手だ、このままだと3分で腫れ上がり使えなくなる。なるべく攻撃を避けようとしても、接近戦のためそれは無理だった。だが、接近戦のために俺のトンファーの攻撃も確実に何本かは相手にも入っていた。奴の体力も落ちている筈だ。
思った異常に俺が倒れないので相手は焦ってきたのだろうか、攻撃に正確さがなくなった。そして、俺が聖剣の攻撃をトンファーで受け止めると、遂に体格差を利用してそのままぶち当たってきた。
俺はそのまま奴の力に負けて床に飛ばされ倒されると、今度は逆に相手に対して観客からブーイングが起こった。
「くっそ、話が違うぞ。相手も本気だ。もうスタイルは関係ない。でもこうでなくちゃ、面白くない」と立ち上がったが、何度もぶち当たられ床に飛ばされるとその都度立ち上がろうとするが少しずつ戦意が消失してしまい、体力も消耗していった。
「このままでは負ける」と思い、少し距離を置こうとして倒れたまま床をゴロゴロと転げて会場の隅で片膝をついて構えていた。思った以上に左腕は持ってくれたが、もう上がらなくなってきた。
「俺にまだ魔導の力が残っているのか」と聖剣を見るとまだ呪文が読めていたが残りは少ないだろう。そして相手との距離は聖剣が届く距離ではなかったが、でもここで使わなければ負けてしまう・・。
「聖剣よ頼む」と強く心で念じて右手の聖剣を「うおぉ・・」と相手に向かい勢いよく振ると、聖剣にまとわり付いていた物が集まり、勢いよく剣道場の扉を壊した時のような疾風が起こり相手に向かって行った。
相手は驚いた様子だったが、それを「はっー」と気合を入れて聖剣で受け止めて振り払うと疾風は2つに分かれてそれぞれ壁に当たり大きく壁が凹むと、場内からは「何だあれは?」「かまいたちか?」「あいつもやるぞ、凄いぞ・・」等の大きな歓声が上がった。
「俺にもできた、でも風の属性には効かないか」と思ったが、相手はこの疾風を俺が自由に出せると思ったのだろうか、急に距離を置きだしたので、俺は少し攻撃から休むことができた。
考えてみると、試合開始から相手の魔導を使った大技の攻撃はなかった。
「やっぱりそうか、弱った俺に大技を使えば一撃で倒せるのに」と考えていると、俺が疾風を使わないので、相手はまた仕掛けてきた。
俺はもう上がらなくなった左手では無理だと、トンファーをホルダーに素早く入れると、両手で聖剣を構えそれを防ぎ続けたが、何本かは装備品の上から決まり、かなりのダメージを受けていた。
残り時間5分のブザーが鳴った。
「10分も耐えたのか、一応面目は立ったか。でも負けたくない。このままでは判定で負けてしまう」と、俺はまた体力を回復するために会場の隅に逃げたが相手も疲れているのか直ぐには仕掛けてこなかった。
少し時間ができた。魔導の力はまだ残っているのだろうかと精神を集中してアクアビートと強く念じると聖剣の先から尖った氷が相手に向かって飛んで行くと、また会場から驚きと声援が起きたが、相手が聖剣で次々に叩き落していくと遂に俺の魔導が尽きたのか聖剣の先から何も出なった。
「ここまでか、魔導を使い果たしてしまった。ここからは実力勝負」と気合を入れ直したが、体力はそれほど残ってはいなかった。