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黒点の上に立つ  作者: ああああ
日暮夕陽
8/18

日暮夕陽-3

ブックマークありがとうございます。励みになります。


今から謝っておきます。これは見切り発車で書き始めた作品なんですが、書きたいものを書くためには結構な量の舞台設定の変更が必要そうだという結論に至りました。男女比みたいな根幹設定とか主要人物に変更はないんですが、今まで書いた部分も大幅に加筆修正することになりそうです。


とりあえずこれまでの分と既に書いて予約投稿を済ませてしまった分(これを含めて4部分)はそのまま公開することにします。でも、加筆修正のあとはまた物語の冒頭から読んでもらわないと話の流れがわからなくなってしまうと思います。


これまでブックマークしてくれた方、申し訳ないです。ごめんなさい。

日が沈んで夕闇が街を覆うころになって、校門前で待つぼくのもとに剣道部の活動を終えた侑理がやってきた。



「今日は少し遅かったね」


「少し練習が長引いたんだ。総体予選が近いから」


「いいところまで行けそう?」


「さあね。ただ精一杯やるだけさ」



そんな風に軽い会話を交わしながら横に並んで歩く。昨日の険悪な雰囲気はもうそこには存在していなかった。ぼくと侑理がぶつかり合うことがあるのは『パーティー』をはじめとしたイベントの後だけで、むしろ今のような状況の方が普通なのだ。


ぼくは滅多なことがない限り、侑理と一緒に帰っている。去年、1年生の5月ごろからずっとだ。


理由は二つ。ひとつは、ぼくが独りで帰ろうとすると、駅前の繁華街でどうしても注目を集めるということ。


制服に身を包んでいる高校生男子がひとりで歩いている、なんてことはまずない。彼らは放課後になると「婚約者」か目をつけている女子を誘って遊びに出かけるからだ。ぼくは最初のころ、女子を連れて歩いていないだけで好奇の視線に晒されることが馬鹿馬鹿しくて意地でも独りで帰ろうとしていたのだけど、途中から根負けして侑理に一緒に帰ってもらうことにした。


もうひとつは、侑理もひとりで歩いていると声をかけられたりと色々面倒だからだ。


彼女は「婚約指輪」をはめていないから、誰かの「家族(モノ)」になっていないことが一目で分かる。するとうちの高校や近くの高校の男子が我先にと声をかけてくる。彼女もそれが非常に鬱陶しかったらしい。こうしてぼくらの利害は一致したのだ。



そういえば、とさっきのことを思い出して話し始める。



「昼に1年生の女子と二人きりで会話をしたよ。日暮さんって子」


「へえ……よかったじゃないか。ようやくボクの言葉を聞き入れる気になったってことかな」


「からかうなよ」



ぼくは口を尖らせるが、侑理はくすくすと笑ったまままだ。



「彼女は料理部に入りたかったらしい。部室を間違えてたまたま文芸部の部屋に来たんだ。一昨年廃部になったって教えてあげた」


「そっか。それで? 君が話を出すからには、それだけじゃないんだろう?」



相変わらずこの幼馴染はぼくの会話パターンまでもよく把握している。ぼくは彼女との会話の内容を伝えた。



「いい子そうじゃないか。さっぱりしていて」


「ああ、最近にしては珍しくスレてない子だった。ぼくやきみとは違う」


「にしても、異母兄弟がいない、か……。なら、何も知らないんだろうな」



侑理が深くため息をついた。たぶんぼくと考えていることは一緒だ。


ぼくは前を向いたまま言葉を続ける。



「彼女は『パーティー』に参加すれば間違いなく傷つく。余裕があったらでいい。少し気にかけてやってくれないか」



ぼくのお願いに対して、侑理はくつくつと笑って返した。



「君が女子を気遣うとは、珍しいこともあるものだね。どんな女子との接触も徹底的に避けるのが君の信条ではなかったのかい?」



口ごもってしまうぼくを見て、侑理は目を丸くし、次に心底面白そうだという表情を浮かべた。



「おや、ついに君も頑固な信念を曲げる時が来たのかな。それならボクもそこに加えてくれよ」


「彼女はそういうんじゃないんだ。ただ……」


「ただ?」


「自分でもよくわからない」


「へえ……。ならもう余計なことは聞かないよ。それで、その子の特徴は?」



冗談交じりではあるが、どうやら彼女も協力してくれそうだ。


――()()()()()()()()()()()()()()


頭を振って流れ込んできた言葉をなんとか追い出したあと、ぼくは電車内や駅からの道で、彼女の風貌について説明を試みた。



「相変わらず説明が下手だな……。君、全校の女子生徒の名簿をまた配られたんだろう? あれに顔写真があるはずだ。見せてくれよ。その方が手っ取り早い」


「あんなもの、もらったその日に捨てたよ」



吐き捨てるようにぼくは言う。侑理はそんなぼくを見て、安堵と不安が入り混じった視線を向けてきた。ぼくが相変わらずなことに安心しつつ、婚約者探しがいっそう難しくなったことに頭を痛めているのだろう。



「ボクは君たちのデータが載った名簿をまだ持っているよ」


「へえ、きみも婚約者探しにようやく本腰を入れ始めたのか?」


「君の欄はあまりにも情報が少なくて、『魔法少女リトル☆ウィッチ』の鈴ヶ原このみという眼鏡っ娘ヒロインがお気に入りなことくらいしか目新しい情報がなかった。おさげっ娘から鞍替えしたのかな?」


「余計なお世話だ! あとそれ絶対名簿に載ってないやつだろう!」



また侑理はくすくすと笑った。ぼくは呆れながらも、こうした会話をどこかで心地よいと思っている。でもそれを認めたくはないから、顔には出さずに怒っているふりをする。



「……とにかく、日暮さんについては今話したことがすべてだ。それで見つけられなければ別にいい」


「わかったよ。他ならぬ君の頼みだからね。できるだけやってみる」


「ああ、よろしく」



そこでちょうど侑理の家の前に着いた。ぼくの家はここから2分ほど歩いた先にある。



「じゃあ、また明日」



そうしてひらひらと手を振りながら、侑理は家の中へ入っていった。それを見送って、ぼくも残りの短い家路へと足を進めた。



もし気に入っていただけたら評価をいただけると幸いです。まだ全然話が進んでいないので、評価するも何もないかもしれませんが。

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