とある女子たちの会話
駅前のオブジェのそば、旧知の仲らしい女子二人が話している……。
「エミ、久しぶり! 中学卒業以来だねー! 柳原高校はどうよ?」
「アツコ、まだ入学から2週間も経ってないんだよ? あたしなんかまだ中学気分だわ」
「ちょっと、エミ! そんなんじゃダメだよ! 高校と中学は全然違うんだよ? さっさと男子といい仲にならないと、将来悲惨だよ?」
「いやー、まだ始業式から2週間も経ってないし…… これから3年間あるんだしさー」
「甘い……甘いよエミ! ガムシロップくらい甘い! ウチと同じクラスの女子なんて、もう『婚約』した人がいるくらいなんだよ!」
「ガムシロップって何さ。でも、もうそんな子がいるんだねえ。あたしはまだどんな男子がいるかくらいしかわかってないよ」
「いやいや、色んなイベントがあるでしょ? 入学式での顔合わせとか、お見合いランチとかさ。ウチはこの前の『親睦会』で話しかけまくって、1人目の連絡先ゲットしたし! 1学期終わったら『入れ替え』だから、早くしないと!」
「アツコは行動力すごいねぇ。でも、あたしの高校はちょっと特殊でさ、競争率高いんだよね……」
「うん? エミのとこ、なんかあんの? 男子がイケメン揃いとか?」
「違う違う。一個上にね、『入れ替え』を拒否してる男子がいるんだぁ」
「えっ? 『入れ替え』拒否? もう30人くらい『婚約』済みとか?」
「ううん、それが誰ともまだ『婚約』してないんだって。すっごい変わり者」
「えー! じゃあ男子の枠1個減ってるってこと? 運悪っ!」
「うん、マジ最悪。ただでさえ10人しかいないのにさ……」
「その人どうするつもりなんだろうね? 『婚約』しなかったら、男なんて文字通り生きてくこともできないのに」
「そこはわかんないわ。とにかく、残りの9人から目ぼしいの探すしかないなー」
「そっかー。話変わるけどさ、知ってる? この先のカフェで期間限定のパフェがあるんだって! しかも3時まで!」
「えっ、もうすぐじゃん! 急ご急ご!」
そして彼女たちは急ぎ足でその場を離れていった。