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黒点の上に立つ  作者: ああああ
日暮夕陽
11/18

日暮夕陽-5

今見たらジャンル別で23位になってました。おかげでPVもかなり伸びました。


ブックマーク&評価して下さった方、本当にありがとうございます。皆さんのおかげでより多くの人に読んでもらえています。感謝感激です。


いま、ふわふわした設定のまま書き始めたキャラクターやストーリーにちゃんとした肉付けをほどこしているところです。もしかしたら明日19時の予約投稿のあと、整合性のための修正で少し間が空くかもしれません。ごめんなさい。


しばらくの沈黙のあと、ようやく舞花が口を開いた。



「あれこれ説明するより、『名簿』を見てもらった方が早いわね……。薫、それ貸して」


「えっ? あっ、うん」



舞花のきれいな指先が『名簿』をめくっていき、途中のあるページで止まる。



「これが普通の男子のページ」



舞花が開いたページには、右上に顔写真、左上に名前(「星野泰樹」という人物のようだ)、そして真ん中から下にプロフィールや趣味などが書かれている。写真では髪はしっかりとセットされ、さわやかな笑顔を浮かべていて好青年らしさが伝わってくる。プロフィールもしっかりと丁寧に書かれていて相手のことがよくわかる。


さらに舞花が『名簿』をめくると、全身が写った私服のものや、横顔のもの、カフェで撮ったらしきものなど、さまざまな角度やシチュエーションでの写真が見開き2ページにわたって載っていた。



「で、これが紫藤さんのページ」



舞花が一番後ろのページまでめくり、夕陽に見せる。


それは先ほどの、華やかで魅力的な男性像を映し出したページとは全く異なっていた。



「この顔写真、学生証のもの……?」



まず右上の顔写真だが、全く笑っていない。真面目な表情というわけでもない、公式書類のために撮る無表情なそれだった。そしてわずかに見えている襟元の服は、この学校指定の紺のブレザーだとわかる。


さらにプロフィール欄もさっきの男子と比べてスカスカだ。たとえば自己紹介の欄では、星野は「趣味はバスケットで、フットサルもやります。身体を動かすことは大好きです。 料理はイタリアンが得意ですが、けっこうなんでも作れちゃいます……(本当はもっと書かれていたが、ここで割愛)」などと詳細に書かれていた。ところが紫藤の欄には「読書。和食が得意」との記述があるだけ。他の欄も埋めてこそいるものの、そのほとんどが一単語で完結していた。


そして紫藤だけはなぜかページが1枚の表面だけで、プロフィールの裏側とその次のページにあるはずのアルバムが無い。これでは自らの容姿や印象をアピールできないだろう。


夕陽が混乱している間に、薫が「うーん」と唸りながら続ける。



「陸上部の先輩に聞いたんだけど、その紫藤って人、去年1回もイベントに出てないんだって。毎週の『パーティー』も、『親睦会』とか特別なイベントも、ぜーんぶ! でも、誰もその理由を知らないって。すごい変わり者だって有名だよ」



舞花も薫に続く。



「それだけじゃないわ。この人は1年の1学期に柳原高校(うち)に来て、そのあとの2回の『入れ替え』を拒否してるらしいのよ。それでいてこの学校の誰とも婚約してないみたい」



『入れ替え』は、学期ごとに男子が学校を変える制度のことだ。女子は基本的にずっと同じ高校に通うが、男子の側は1学期ごとに学校を変えることができる。こうすることによって、男子も女子もより多くの異性と出会える仕組みになっている。


『入れ替え』先はだいたいが近場の高校なので、学校が変わってもそれほど付き合いに支障は出ない。だから普通の男子は同じ高校にいる間にそこの女子と連絡先を交換し、その後『入れ替え』で転校する。それからはデートなどで定期的に会って婚約に漕ぎつける、というパターンが多い。


けれど実秋はそれをせずに柳原高校に居座り続けているのだ。



「うちもこのページを見たときはわけわかんなかったわー。こんなに情報がないのに『パーティー』にも来ないなら選びようがないし。ゆうひがこの人と話したって聞いてびっくり」



美乃莉も全く理解できない、という反応だ。


夕陽は混乱していた。舞花と薫の話から見える「紫藤実秋」が、自身の見た「紫藤先輩」の像とあまりにも違っていたからだった。交わした会話はものの30分程度だっただろうが、周りが言うほど「変わった人」だとは思えない。彼はこの学校にまだ慣れていない夕陽にいろいろな知識をくれたし、料理好きなところも認めてくれた。


それにこの『名簿』――無表情な写真、スカスカのプロフィール、あるはずの写真の欠如、その全てがひとつの可能性を支持しているように思えた。



(まるで、『わざと誰からも選ばれないようにしている』みたい……)




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