前世のビシン
前世の ビシン
『おまえの種族は、痛さを、感じないようにできる者たちであったから、
おまえも、それだけは、受け継いでいるらしいな。
そのちからは、とかしてもらう。』
ビシンは、大声をあげた。尋常じゃない痛さが、身体中を駆け巡った。
意識がなくなりそうで、なくならない。
『頼む、助けてくれ。ものすごく痛い、耐えられない、もう、諦めるから、死なしてくれ。』
『いや、そのままで、前世の君、アスと会ってもらう。アスに、その痛みは頼め。』
そして、アスの声だけが聞こえてきた。
『やあ、おれがアス。おまえの前世のおまえだ。』
『痛みを止めてくれ!頼む!』
『いま、止めた。
まあ、こうなったのも、おれのせいだから、悪かったな。
もう、この世のおまえに、入ることはできなくなった。
おれを助ける者との約束を破ったのだから、仕方ないが、すごく悔しい。
しかし、サキのおかげで、チャンスがきた。
ビシンには、おれの力を与えることができない。
幸いなことに、弱いおまえを狙ってくる奴らはいないから、安心しろ。
しかし、いまから言うことは、必ず守れ。頼む。おまえを信じている。おまえも、ビシンを信じろ。
力を付けろ。何でもいいから、体を鍛えろ。殺されない体を作れ。
自分の身は自分で守れるようになれ。誰にも頼るな。
それと、いまの世の勉強をしろ。この世の仕組みを知るんだ。
そして、一番大事なことだ。愛する女を作れ。
俺がしでかした悔やまれることは、約束を破ったせいで、愛した女に逃げられたことだ。
それと、女は、ひとりだけ。
ひとを作れるのは、神と女性だけ、これが答えだ。
いま、おまえが溺れてる、酒、ギャンブル、オンナ、こんなのに頼るな。
時間は限られている。おまえの可能性は無限だ。自分を引き出せ。
それと、俺ら種族は、特別だから信じてみろ。
それと、俺にはおまえに俺の力を与えることはできないが、
もしかして、もしもだ、サキが現れたということが、何らかの意味を持つということなら、
希望があるかもな。
期待してもいいかも、俺の力を。必要としている可能性がある。
ということは、サキが俺の力をビシン、おまえに与えるかもな。
そうだと、望めばさすれば、与えられんだ。
そして。約束は破るものではなく、守るものだ。そういうものだ。絶対忘れるんじゃないぞ。
がんばれよ、俺の未来。
愛する女と生き抜けよ。』