夢の中
夢の中
夢の中だ、これは夢だ。こころのなかで、ビシンは、思っていた。
しかし、いやに現実感があったのだ。
薄明かりの、スナックのカウンターに座っている自分がいる。
カウンターの中には、ビシンに、ビールを注いでくれている店の若い女性がいた。
少し酔っている自分、ぼんやりしていた視界が、少しずつはっきりとしてきた。
そして、前にいる店の女性の顔が、はっきり見えた。
初めて見る顔だった。
「だいじょうぶ、お客さん。じっとこちらを見たりして。恥ずかしいわ。」
「ビシンと言います。よろしく。見惚れてしまって、すいません。」
「謝ること、ないわよ。ビシンさんのこと、初めてのお客さんだけど、
好みの・お・と・こ・よ。」
とめどのない話が続き、最後にビシンが言った。
「一目惚れしたみたいだ。名前教えてくれないかい?」
「あした、会わないか。」
「これからでも、いいわよ。」
これからというところで、ここで目が覚めた。名残惜しいような夢の終わり方だった。
しかし、はっきりと、一目惚れした女性の顔は覚えていた。
最初は、誰かわからなかった、初めて見る顔だと思っていた。
しかし、目が覚めて、現実に戻って誰であったのか、はっきりとした。
夢の中で、一目惚れした女性は、自分の妻のミオでではないか。
【次日曜日につづく】