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4・よろしくね、あたしの作った世界さん

 アルラ……アルライラ・ローゼは、ユーリッカと同じ年のいとこで大親友。主人公の疑問や悩みに優しく答えてくれる、いわゆるお助けキャラである。まあ、作者であるあたしにはあまり必要ないかも知れない、微妙な存在なんだけども。


「ユーリッカ、よかった、元気そうね! さあ、お医者さまの診察です。男性陣はお部屋から出られて下さいな」


 そう言ってアルラはアルベルトとエーディをさっさと部屋から追い出してしまう。アルラはユーリッカのいとこでラムゼ家の一員ではあるが、巫女姫ではないのだから、本来なら王太子殿下にこんなぞんざいな口をきいてはいけない筈なのだが、いちいち大げさな敬語も面倒なので、攻略対象の男性陣はまとめて、彼女のしゃきしゃきした性格の前には頭があがらないことにしてある。


「わかったよ、また明日見舞いに来るから結婚しよう」

「わたくしは隣室に控えておりますゆえ」


 そんな言葉を残して二人は出て行った。キラキラギラギラしたイケメンたちがいなくなって、同性のアルラと老医師だけになり、あたしはちょっとほっとした。


「ユーリッカさま、無事にお目覚めになられてようございました。もっとすぐにお気がつかれると思っていましたのに、なかなか目を覚まされないので、随分心配致しました」


 と老医師が言う。こんな場面はシナリオにはなかったんだけど、シナリオ世界が現実になった以上、勿論シナリオにはない細々とした事が起こるのは当たり前。食事をしたりお風呂に入ったりの日常。そういえば毎朝二時間女神ラムゼラに祈りを捧げる事になってたんだっけ。めんどくさ。せめて一時間にしとけばよかったよ。まあとにかく、その中でどの日のいつ、イベントが始まるかは分からない。それだけは気をつけておかないと、気づかないうちにおかしなフラグを立ててしまったら大変です。


「ユーリッカ、よかった……誰の事も助けられるあなたが、自分の事だけは助けられないんだもんね。どうしてだろうね、自分の怪我や病気は癒せないなんて……あんなにいつもみんなの為に頑張ってるのに」


 アルラは涙ぐみながらも安堵の笑みを浮かべて優しい言葉をかけてくれる。だけど、すみません、ユーリッカが自分を癒したり守ったり出来ないのは、か弱い乙女属性をつけようとあたしが考えたからに過ぎません。みんなの為には最強の魔力を振るうけど、自分の為にその魔力を使う事は出来ない。これって、イケメンたちの庇護欲を充分そそってくれそうな設定でしょ?


「ごめんね、アルラ、心配かけて」


 あたしはアルラの手を握ってにっこりする。アルラとの間にも好感度があり、あまり下がるとイベントの妨害になるような行動をしてくるのだ。

 だけど、多分そんな心配はない。あたしは、茶色い髪の優しい目をしたアルラの事がすっかり好きになっていた。あたしの方から冷たくしない限りは好感度は下がらないので、これからどうぞよろしくね。


「ああ、おなかがすいたなぁ」

「スープとパンでも持ってきましょうか。よろしいでしょうか、先生?」

「二日も眠っておられたのだ。いきなりはいかん。スープだけになさい」


 えええー。モブ医師の癖にあたしの食事を邪魔しないでよぅ。チートなあたしがパンの食べ過ぎでどうかなる訳ないじゃない! そんな恨めしい気持ちが顔に出たのか、医師は笑い、


「それだけ食欲が出る程お元気になられたとは本当に良かった事ですが、固形物はまだ駄目ですよ」


 と柔らかく諭してきた。あたしは少し恥ずかしくなって、はい……と呟いておとなしくベッドに潜って、アルラがスープを運んで来てくれるのを待つことにした。

 暫くするとアルラが湯気の立つおいしそうなスープを持って来てくれた。まだ自力で起き上がれないあたしに、アルラはあーんさせて飲ませてくれた。うう、元気が出る。空っぽの胃にほわっとしたコンソメのような味がしみわたり、冷たい川の底からこんな素敵な世界に転生出来て本当に幸せだと感じた。


 そして、元気が出ると邪気も出ます。エーディかアルベルトがあーんさせてくれる役だったらなぁ、なーんて。


「あらどうしたの? 熱かった? 顔が赤いわよ。まさか熱でも……」


 いえ違います。余計な事を考えました。ごめんねアルラ、こんなに優しくしてくれるのに。


 スープの食事が終わり、アルラがゆっくりおやすみなさいと言って出ていくと、あたしはぼーっと天井を眺めながら考えた。これから、あたし好みのイケメンにモテまくりの毎日が始まるのだ。だけど、ここがあたしの現実世界になって、やがては年もとっていくのだから、いつかは相手を選ばなくちゃならない。でもでも、まだ会っていない攻略対象者も含めて、みんな大好きなんだよ~!


「……まぁ、いっか」


 思考をじたばたさせた後で、あたしはそっと呟いた。手を、ゆっくり上に伸ばしてみる。白くて細くて綺麗な手。こんな綺麗な手の持ち主は今まで見た事もなかった。


「あたし、ユーリッカ・ラムゼ。よろしくね、世界」


 言葉にすると、なんだか少しだけこの世界の空気が柔らかくなった気がした。

 そう、あたしはこの世界に来たばかり、ゆっくりと新しい人生を楽しみましょう。ばいばい、冴えなかった由理香。地雷さえ踏まなければ、きっと誰とだって幸せになれる筈。だってあたしの世界、あたしのキャラなんだもの……そんな事を考えながら、あたしは気持ちのいい眠りに落ちていった。

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