↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/30

12・ゼフィール王子、謎の登場で更にピンチ

 第二王子ゼフィールは、知性が高いが学問以外にまるで興味のない変人キャラ。アルベルトのひとつ年下の21歳。

 あたしが今見ている通り、本当は紳士然とした学者として振舞う事も出来るのだが……それは、あたしと出会ってから、の筈だった。

 あたしのシナリオでは、ユーリッカが王宮で用事を済ませて庭園を散策していると、突然毛むくじゃらの汚い男が現れてキャアーッと驚くも、それは二年間髪も切らず髭も剃らずに学問塔に籠っていた第二王子で、ユーリッカの美しさに惹かれた第二王子は翌日身なりを整えたイケメン王子としてやって来て非礼を詫び、「これからは、巫女姫のお力とその美しさを身近で研究させて頂きたい」なんて申し出てくる予定だったのだ。いや、それってほんとに「知性」が売りのキャラの台詞として正しいのか、今は疑問に思いますが。


 まあそれはともかく、いったいどうしてシナリオ通りにいかないのか、あたしは疑問符を頭の中に散らかしながらも、かろうじて動揺を隠していた。

 今までは、『シナリオにはなかった事や台詞』が時々あたしを困惑させた。でもこれは、『シナリオの改竄』とも言うべき事で……いったいどうしてこうなった??


 二年ぶりの親兄弟の再会の喜び(と言っても、居場所は判ってるんだから、王様やアルベルトが会いたければ会いに行けばいいだけなんだけど、妙な意地張ってたという設定)の儀式? が済むと、ゼフィールはあたしに向き直り、


「これはこれはユーリッカ姫、随分とご無沙汰しておりました。なんとお綺麗になられた事か、一瞬、ラムゼラがこの部屋に降臨されたのかと思ってしまいました」


 と、柔和な笑顔を浮かべたまま、お世辞を交えて挨拶してきた。「ラムゼラのよう」というのはこの国で女性の美しさを讃える最高の常套句なので別段大袈裟でも不自然でもないのだが、どうにもこの人から言われると違和感を覚えてしまう。

 そもそもシナリオでは、二年間塔に籠っていたゼフィールは、最初ユーリッカが誰だか判らず「女神ラムゼラが降臨された!」と本気で大騒ぎする筈だったんだけど。

 元々王子と巫女姫は知り合いではあったが、二年間顔を合わせないうちにユーリッカは15歳から17歳に成長し、少女から乙女になった姿を見て、初めてゼフィールはユーリッカに恋心を抱いた、という筋書きだ。だけど目の前のゼフィールは、格別敵意とかは感じられなくても、あたしの美しさに驚き恋しました、という風にはまったく見えない。あくまで冷静沈着だ。


 黙っている訳にもいかないので、


「まあ、ゼフィール様本当にお久しゅうございます。お元気そうなお姿を拝見出来まして嬉しく思いますわ」


 と無難に返す。ゼフィールは頷いて、あたしの背後のエーディに視線を移し、


「きみは変わってないね、エーディ? 相変わらず巫女姫の護衛をやってるんだって? もうそろそろ解放されてもいいんじゃないの? そもそもきみが悪いなんて誰も思ってなかったし」


 ちょっとちょっと、いきなり出て来て何言っちゃってくれるの。エーディが軍に戻ってしまったら、殆ど会えなくなってしまうじゃん!

 現れ方の胡散臭さと相まって、あたしは他の攻略候補に会った時と違ってゼフィールへの好感度がどんどん下がっていくのを感じる。……本当は、他のキャラと違ってミステリアスなゼフィールへは、ユーリッカの方も「気になる人」と認識するイベントを大目に入れてあった筈なんだけど、実際、これはミステリー過ぎて恋愛対象としてどうかという以前に、彼の真意を確かめねばという警戒が先に立ってしまう。


 一方エーディは、突然投げかけられた言葉に僅かに動揺したようだったが、すぐにはっきりと、


「お気遣いありがとうございます、ゼフィール様。ですがわたしは、弟が見つかり、その罪を償わせる日までは、軍に復帰する気はございません。それに、ユーリッカさまをお護りする事が今のわたしの大事な使命でございます」


 と答えた。ああ、嬉しい事言ってくれる。


 王様が、


「そうなんだよ。エーディにはいつも、もういいじゃないか、って言ってるんだけど、頑固だからね~」


 と口を挟み、アルベルトは、


「なんだかんだ言って、いっつもユーリッカの傍に居られるんだから、俺は羨ましいよ。あ、でもユーリッカが俺の妃になれば、ユーリッカは俺が守るから、おまえは軍に復帰していいからな!」


 なんて言う。これは半分本気で半分エーディを気遣う彼流の冗談。しょっちゅう言われているのでエーディも解っていて、ありがとうございます、と律儀に王様とアルベルトに頭を下げた。



「で、今日は一体どうしたんだい? 母上にはもう会ったのかい?」

 

 王様のゼフィールへの問いに彼は首を横に振り、


「母上は時々会いに来て下さいますし、後でお伺いします。それより、ユーリッカ姫が丁度いらしているとの事でしたので、ご一緒に話を聞いて頂きたく、急ぎこちらへ参りました」

「話?」

「はい、わたしの研究の話です。ご存知の通り、わたしは自分の研究に没頭するあまり、学問塔に寝泊まりして時読博士らと過ごしているうちに、いつしか二年が過ぎてしまいました。まだ、全てが解明された訳ではありません。が、どうやら重大な事が判ってきたのです!」


 ゼフィールは父国王にずいと歩み寄った。こういう真剣な表情を見ていると、懐疑心は少し薄れていく。やっぱり研究命という部分は設定と変わりなさそうだ……なーんて少しほっとした気持ちになった所で、あたしはふと、大事なことに気づいた。


 ……ゼフィールの研究ってどんなんだっけ? 

 国の為に、世界の成り立ちの謎を究明したい……そんな感じだった気がする。が。そこ、大して設定詰めてはなかった! だって恋愛と関係ない部分だもんね。ゼフィールを攻略する場合、ユーリッカはとにかく彼の研究心を肯定して、女神の力で彼を支える方向で行けば良いんだけど、研究内容そのものを、乙女ゲーに盛り込む必要ないですやん?

 なのに、ゼフィールはわざわざあたしにもその話を聞かせたいという。つまり、恐らく、ラムゼラの巫女姫が関わる内容だという事だ。折角定期報告をスルー出来た安堵も束の間、どうやらまたまたピンチのようです。


 しかも。

 ゼフィールはあたしに向き直ると、こう被せてきた。


「ユーリッカ姫、貴女が二年前に仰った事……何故か最近になって急に思い出したのです。それが、きっかけになりました。覚えておいでですよね?」


 知らんわーーーーーっ!! と叫びたくなりました……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。