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鋼鉄のゾルダート  作者: 印西たかゆき
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第十二話一部 ある意味で異変

今回は新キャラも加えつつ、物語を進行させております!


とある部屋。

この部屋の窓からは広大な宇宙空間と青に輝く惑星が見えている。

部屋は全面を灰色に統率された無機質な部屋であり、中央には近未来的なデザインの机と椅子が置いてある。

私はそこで事務作業をしていた。

しばらく作業をしていると、入り口のスライド式の扉が機械音と共に開いた。


「ご報告いたします」


ユリアが入ってきた。

相変わらず、その容姿はトップモデル並みであった。


「工作員及び収集員、そして我々に従う賛同者達を獲得しました」

「ごくろう」


ユリアに対して私は労いの言葉をかけると、事務作業をする手を止めてユリアの方を見た。


「計画の進捗状況に問題は無いな?」

「はい、すべて予定通りに」


相変わらずの抜かりの無さだ。心強い。


「よろしい。では一つ頼まれてくれんか?

 ある組織を調べてほしい」

「はい、構いません。どこの組織でしょう?」


私は口元に笑みを浮かべて言い放った。


「民間軍事会社、ジークフリートだ」


                     ※


雲一つない晴れた空。

青く眩しい海。

通りではしゃぐ子供達。


「よっしゃー! 今日は大漁記念だっ!

 じゃんじゃん飲めい! お~い、女将!

 ビール持ってきてくれ!」

「ふふ、はい、ただいま!」

「わ~い、大漁、大漁!」


活気溢れる酒場。

微笑む女将。

喜ぶ子供。


「……かゆ……うま……」

「テルール! 変な物を食べるのはやめろと言っただろ!

 マスターに変な菌が付いたらどうするっ!?」


肉塊を食べる巨女。

キレる秘書。


「ちょっと! それはユーリンのでしょ!?

 なんでアンタが勝手に触ってんのよ!」

「あぅ~、持ってきてくれって言われたんですぅ!

 なんでそんなに怒るんですかぁ!?」


怒鳴る貧乳。

ぐずる巨乳。


「今日もここは平和だな~、ヒック」


朝から酒を飲む筋肉女。


「ねぇ~ユー君、私と遊びに行きましょ?」

「遊びに行くんならあたしの方が良いわよね、ユーちゃん?」

「あばばば」


少年の頬を撫でる熟女。

少年の内股をさする妖女。

ここはギルト共和国の最南端に位置する港町ミルタ。

気候は夏季と雨季を繰り返し、町の治安は漁師達の喧嘩を除けば極めて良い。

ここ最近は目立った事件などもなく、住人達は平穏な日々を送っているが、それはこの町に居を構える民間軍事会社、ジークフリート社も同じだった。

酒場ではアデーレとマキナの親子がゲンザン達を相手に酒や料理を提供しており、ジークフリート本社兼社員の住居であるミルタ郊外に存在するアパートの階段の下では、しゃがみこんで謎の肉塊を食べるテルールと、それを見て怒鳴り散らすカトレアがおり、そのアパートの左隣に隣接しているコンクリート製の倉庫の中では、ユーリンの私物である拳銃とナイフを取り合っているアーニャとイリス。

アパートの自室で一人、テキーラをボトル飲みするニキータ。

ユーリンを誘惑する気満々のレイカとアンドレア。

うろたえながらも、男の幸せを噛み締めているユーリン。

ここ最近、ジークフリート社に舞い込んでくる依頼はというと、住宅建設の補助だとか土木工事など、民間軍事会社に発注される業務にしてはかなり平穏なものであった。

しかも、支払われる報酬は通常の三倍ほどであった。

最初、ユーリンを含む社員の数人はラルド首相並びにギルト政府から下された『奴ら』との関わりの一切を禁じる命令を守るうえでの見返りと勘ぐっていたが、一か月ほど時が経つと気にする者はいなくなっていた。

こんな暮らしも悪くない。今や社員の誰もが心の中でそのような事を思っており、今のジークフリート社の経営状況は順風満帆そのものであった。

そんなジークフリート社の本社であるアパートの前に、白いワゴン車が砂煙を巻き上げて止まった。


「……なに?……」

「……わからん。

 とにかく、君はその肉塊をしまえ」


テルールが懐から取り出したラップで肉塊を器用に包んでコートの中に入れたのを確認すると、カトレアはワゴン車の方へ近づいて行った。

カトレアがワゴン車の横で立ち止まると、スライド式のドアから人が出てきた。


「すみません、こちらのアパートはジークフリートさんの本社ですよね!?

 お願いします、取材させて下さい!」

「……はぁ?」


カトレアは困惑した。

ワゴン車から出てきたのは女性と、テレビ局が使うような大きなカメラを担いだ小太りの男だった。

女性の見た目は二十代前半と言ったところだった。

肩まで伸びた黒髪を茶色のゴムで左右で結ぶ、いわゆるおさげの髪型であり、紺色のスーツを着ていた。


「あ、申し遅れました!

 私、プラヴァー社の記者をやっています、リン・ヴァレンタインと申します!

 よろしくお願いします!」

「……はぁ? その、プラヴァー社というのは?」


カトレアが知る限り、初めて聞く会社だった。


「あ、すみません!

 プラヴァー社はこの惑星のテレビ局の一つでして、バラエティや歌番組以外にも様々な職業に従事している方々に対して密着取材なども行っております!

 本日は突然の訪問になってしまい、大変失礼いたしました!

 民間軍事会社への密着取材はまだどの局も手を出していない分野であるため、わが社と致しましても今回の取材は必ず成功させたいと考えております!

 よろしくお願いします!」


……どうやら、このリンという女性は熱意溢れる一方で周りの様子をあまり気にしない性格のようだ。

案の定、眉をひそめるカトレアの迫力に気づき、リンは慌てて頭を下げる。


「わわっ! すいません! 私ったらつい―」

「構いません」


リンの言葉を途中で遮り、カトレアはさらに情報を引き出そうとした。


「それで……他社が手を出していないからというのはわかりましたが……なぜ、よりによって我が社なんです?」


カトレアは、めんどくさいことこの上ないといった表情で聞いた。

本来、民間軍事会社に限らず会社というものはその会社のイメージというものも経営上大切なものである。

しかしカトレアは、経営や経済のことには多少の知識はあっても、広報の重要性はあまり理解していなかった。

それどころか、マスコミは自社の評判を貶めるだけの邪魔な存在だというような思いも多少抱いていた。

カトレアの質問を聞いて、リンはさらに目を輝かせながら言い切った。


「ギルト政府の要人に取材しましたところ、皆さんのお名前が挙がりましたので!」

「……」


もはやカトレアの口からは何も出てこない。

一応、政府の要人に取材出来るからにはそれなりに信用のあるマスコミなのだろうが、カトレアにとってはゴシップしか扱わないような三流誌記者も目の前にいる記者も同じような存在だった。


「とりあえずこちらへ」

「ありがとうございます!」


カトレアはリン達をユーリンに会わせることにした。

どのみち取材許可などは社長であるユーリンが出すため、カトレア自身には決定権などない。

それに、あのユーリンならば取材などの面倒な事は断るだろうという思いもあった。

アパートへ向かうカトレアをリンとカメラマンの男、ワゴン車の運転席から降りてきて集音マイクなどの様々な機材を持った男が後を追った。

テルールは、テレビクルー達をジッと、摩訶不思議な生物を見るような目で観察していた。

カトレアはアパートの階段を上り、一番端にある部屋まで行って扉をノックをした。


「社長、テレビ局の方が取材をしたいとお越しになられております」


部屋の中からは返事がない。


「社長? 失礼しますよ」

「お邪魔します!」


カトレアとリン達が部屋に入って靴を脱ぎ、廊下を進んでリビングに出た。


「ねぇ~ユー君~、どっちにするの~?」

「もちろん、あたしよね? ユーちゃん?」

「あばばば」


そこには、二人の美女に篭絡されかけている少年の姿があった。


「なっ!?」

「きゃっ!? え!?

 な、なんですか!?」


リビングの入り口では、驚愕の表情を浮かべるカトレアと顔を赤らめるリン、そして無機質に録画を続けるカメラがあった。


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