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鋼鉄のゾルダート  作者: 印西たかゆき
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第十一話三部 再会と戦闘

翌朝、ユーリンとカトレアはミルタのアパートからゴルゴグラードへ行き、ヘリ発着所で給油を済ませた後、実地試験の場となる砂原へと赴いた。

雲一つない快晴の空をヘリで進んでいき、朝にカトレアのタブレットに表示された座標の元へ向かうと、例のバンツェルとイリスとアンドレアがいた。


「おはよう、いい天気ね」

「お、おはようございますぅ……」


ヘリから降りたユーリンとカトレアに向かって、アンドレアとイリスは挨拶をする。


「うん、おはよう!」

「おはようございます……」


ユーリンとカトレアも挨拶をした。

しかし、ユーリンは辺りの様子を見るなり、ある疑問が浮かび上がった。

人がいないのだ。

新型バンツェルの実地試験だというのに、それらを支援する機材や人材がまったく見当たらなかった。

あるのはユーリン達が乗ってきたヘリと、アンドレア達が乗ってきたランドポーターと少々の機材だけだった。

ユーリンはアンドレアとイリスに対して質問した。


「えっと……他に人はいないの?

 もっといてもいいと思うんだけど……」

「いいえ、私は何も聞いてないわ」

「あ、あたしもです……」


しかし、アンドレアとイリスは何も知らないようだった。

ユーリンは改めてバンツェルの方を見た。

機体の特徴やカラーリングは昨日見たものと変わらなかったが、武装が追加されていた。

背部はクリーガーのブースターやスラスターを発展強化させたようになっており、右腕には突撃小銃よりも大きな小銃が握られている。

左腕には何かの装置を取り付けた長方形の、未塗装の鉄塊が据え付けられていた。


「ま、そんなことより、この機体についてイリスから説明があるわ」


そう言いながら、アンドレアはイリスの方を振り向いた。


「は、はい!

 え、えっと……まず推進装置類ですが、シュタール・パンツァー社の最新作を用いてクリーガーの三倍ほど推力を強化できました。

 武装なんですけど、右腕のライフルに関してもパンツァー社初の荷電粒子を用いた銃器です。

 まだ技術的に性能不足の面もありますが、実弾を用いるマシンガンよりは大幅な威力向上が達成できています。

 セレクターを変えることによって、威力の高い単発発射と連射を切り替えることが出来ます。

 左腕の装備はパンツァー社が独自に研究開発を行っていた超振動破砕兵器の一種です。

 名前はラズラシェーニエ。

 これは一般的な実体剣に使われている高周波発生装置を改良、再構築し、いわゆる超周波と呼称しても差し障りないほどまでに昇華させ、その超周波を流し込む装置を特殊加工を施したカーバイン鋼の塊に設置したものです。

 これは、いわゆる周波によって物体の表面積における分子結合を―」

「ゴホンッ!」


イリスの説明が早口になっていくのを察して、アンドレアはわざとらしく咳払いをする。


「ハッ!? す、すみませんっ!!

 私ったらまた自分の世界に―」

「いや、大丈夫だよ、ありがとう!」


そう言って、ユーリンはイリスに微笑みを浮かべた。

ユーリンの視線に気づいたイリスは、顔を赤らめて伏し目がちになってしまった。


「まぁ、習うより慣れろよ。

 早速始めちゃいましょう?」

「……うん」


アンドレアの楽観的な態度を改めさせようとしても仕方ないので、ユーリンはバンツェルの傍まで行ってコクピットから伸びるハーネスを使ってコクピットに入り、パイロットシートに座って目の前にある液晶パネルを押してバンツェルを起動させる。

目の前にある大型化したモニターに、砂原の風景が映し出される。

ユーリンがヘルメットを被って一息ついていると、ヘルメットのスピーカーからイリスの声が聞こえた。


「あの……大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫」

「それでしたら、試験を開始しますぅ」


そう言うと、モニターに数々のナビゲーションが表示された。

これらはバンツェルを操縦するための基本的な動作を学ぶためのものであるため、ユーリンにも見覚えがあった。

ユーリンが一通りの基本的動作を難なくこなし、武装の試験を行おうとしたその時、バンツェルのレーダーに反応があった。


「っ!! 何か来るっ!」

「ふえっ!? な、なんですかぁ!?」


ユーリンの突然の警告に、ヘルメットを通じて通信回線を開いていたイリスは驚いてしまった。

イリスの様子を見て、アンドレアとカトレアも怪訝な表情を浮かべてイリスからワケを聞こうとしたとき、上空から轟音と共に物体が落ちてきた。

その物体はユーリン達の数百メートル先の地面に激突すると、すさまじい砂埃が巻き上がり、ユーリン達に迫ってきた。


「カッチャン、お願い!」

「かしこまりました!」


そう言うと、カトレアはアンドレアとイリスを両肩に担いでバンツェルの右足に隠れた。

直後、砂埃を纏う突風がユーリン達を襲い、ユーリンの搭乗するバンツェルのモニターは茶色の風景一色となった。

カトレア達は、バンツェルの足元で必死に突風が収まるのを耐えていた。

やがて突風が止み、バンツェルのモニターが元の砂原の景色になると、ユーリンは驚愕の声を上げた。


「うわっ!? なんだ、あれ!?」


それは円錐の形をしたポッドのようだった。

全長は二十五メートルから三十メートルほどで、表面は白い塗装が剥げかかっており、ユーリンから見て正面に大きな扉が付いていた。


「っ! あれは……いったい?」

「ふ~ん……隕石じゃなさそうね」

「た、たぶん、衛星軌道上から大気圏内に突入するための物だと思いますぅ……」


バンツェルの足に隠れていた三人も、ポッドを見てそれぞれの感想を述べる。

ユーリン達がそれぞれ思索にふけっていると、ポッドの扉が煙を吐きながら開き、中から巨大な影が現れた。

それはバンツェルであった。

しかし、この惑星で知られているようなバンツェルではなく、その見た目は生物的であり、薄紫を基調としたカラーリングと装飾が施されていた。

右手には巨大な実体剣を持ち、左手には巨大な盾を持っている。

背部には天使の羽を思わせるようなアタッチメントが取り付けられていた。


「なっ!? あれはいったい!?」

「はわわわ……」

「……ちょっとヤバいんじゃない? この状況……」


カトレア、イリス、アンドレアの三人はそのバンツェルらしきものを見てひどく動揺していたが、試験用のバンツェルのコクピットにいるユーリンは怒りで額に血管が浮き出ていた。

ユーリンは反射的にライフルを発射した。

ビームは直線の軌道で薄紫のバンツェルへと向かっていった。


「ふっ、甘いな」


薄紫のバンツェルが上空へジャンプし、ビームを避ける。

ポッドがビームの直撃を受けて溶解、爆発するのも気にせずに、ユーリンは上空へと逃れた薄紫のバンツェルめがけてセレクターを切り替えてビームマシンガンを発射した。

しかし、そのことごとくを機体の機動だけで避ける薄紫のバンツェルはそのまま地上に向けて急降下し、ユーリン達の数十メートル手前でスピードを落として着陸した。

その様子を見て、イリスは持っていた無線機でユーリンに話しかけた。


「ユ、ユーリンさん、気を付けてください!

 あの機体は大気圏内飛行が出来るようですぅ!」

「わかった!」


そう言って、ユーリンはビームマシンガンを発射した。

しかし、ビームは薄紫のバンツェルが持っていた巨大な盾に当たって霧散してしまった。


「また会ったな、狼」

「……うん、そうだね」


ヘルメットから流れてくる声に、ユーリンは冷たく応答する。


「我々だけで話をするのも忍びないな」


そう言って、薄紫のバンツェルのパイロットは外部スピーカーを用いて話し始めた。


「聞こえるか? 私はアルベルティーナ・エヴァンジェリアだ。

 ティナと呼んでくれて構わん。

 この機体の名はカヴァリエーレ。

 今日はそこにいるユーリンに会いに来た」


ティナの声を聴いて、カトレアの電子脳にある記録が復元される。

イリスから無線機を借りて、ユーリンと話そうとする。


「社長、彼女はまさか―」

「うん、首相誘拐事件の時に会った人だよ」


そう、ティナはラルド首相誘拐事件の際に地下聖堂であった『奴ら』のリーダー格であった。


「それで、今日は何しに来たの?」

「君に会いに来たと言っただろう?

 まぁ、正確にはこの惑星の最新軍事技術を詰め込んだバンツェルに乗った君に会いに来たと言うべきなんだが……」

「そう、じゃあ、もういいよね? さっさとやろうよ」

「うむ……そうだな」


そう言って、カヴァリエーレは身構えた。

ユーリンは外部スピーカーを起動してカトレア達に避難するように指示し、カトレア達がヘリで退避するのを見届けると、カヴァリエーレの方へ視線を向けた。


「それじゃあ……行くぞっ!!」


そう言って、ユーリンの搭乗するバンツェルはカヴァリエーレに向かって突進した。

ビームマシンガンを連射しながら突進するバンツェルに対して、カヴァリエーレは再び上空へ退避した。


「させるかっ!」


ユーリンは上空へ退避するカヴァリエーレに対して予測射撃を行った。


「くっ! やるな!」


しかし、カヴァリエーレはビームをギリギリの距離でかわしつつ、ユーリンのバンツェル目がけて急降下した。

ユーリンもビームマシンガンで連射するが、回避機動と巨大な盾に阻まれて直撃はせず、カヴァリエーレの振り下ろされた剣によって右腕を切断されてしまった。


「ぐわっ!」

「どうした!? もう終わりか!?」


地面に着地したカヴァリエーレは剣を横一文字に薙ぎ払ったが、ユーリンは間一髪で後方へ避けた。

しかし、コクピットを守る装甲は横一文字に裂かれてしまった。

ユーリンはバンツェルの態勢を整えて再び突進し、頭部の機関砲を発射した。


「ふん、愚かな」


しかし、ティナにはその動きは予測されていたらしく、機関砲弾が発射されたと同時に再び上空へ退避した。


「これで最後だな」

「まだまだぁ!!」


ユーリンはフットペダルと操縦桿を巧みに操作し、バンツェルの態勢を屈めて地面を蹴り、上空へジャンプすると同時に背部のブースターやスラスターを全開にして、カヴァリエーレの眼前まで迫った。


「なにっ!?」

「くらえっ!!」


ユーリンのバンツェルは左腕に装着されたラズルシェーニエを全力で振り下ろした。


「くっ!」


ラズルシェーニエはカヴァリエーレが構えた巨大な盾を左腕ごといとも簡単に破砕し、そのショックでカヴァリエーレは地面に急降下した。


「これで終わりだっ!」


ユーリンは勝利を確信して叫んだ。


「ふむ、今日はこれくらいでいいだろう」


ティナの声がユーリンのヘルメットから聞こえた後、カヴァリエーレは紫色の光に包まれて空中で跡形もなく消えてしまった。


「なっ!? えっ!?」


突然の出来事に驚くユーリンであったが、やがてバンツェルが地面に激突した際の衝撃で意識を失い、砂原にはカトレア達の乗るヘリの音だけが響き渡った。


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