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鋼鉄のゾルダート  作者: 印西たかゆき
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第十一話一部 発覚

今回は新キャラを登場させつつ、物語の展開を早めました!

「……で、ソファに座ったら壊しちゃったってこと?」

「はい」


腕組みをして足でトントンとイラついた調子で床を叩くアーニャに対して、ユーリンは返事をする。


「あらあら~それは大変ね~。

ふふ、どうしてくれようかしらね?」

「……申し訳ありません」


ソードオフショットガンをクルクルと回しながら微笑むレイカに対して、ユーリンは謝罪する。


「けっ!

せっかく金持ちになったと思ったらこのザマかい!」

「いやはやなんとも……」


悪態をつきながら部屋に置いてあるテーブルを蹴り飛ばすニキータに対して、ユーリンは相槌を打つ。


「……マスター、大っ嫌い……」

「……」


テルールの嫌悪の言葉に、ユーリンは何とも言えない表情をする。


「まったく、あなたという人は……」

「しょうがないじゃん!

壊れちゃったものはしょうがないじゃん!」


ネチネチと責めたてるカトレアに対して、ユーリンは逆切れした。

ここはおなじみ港町ミルタに存在するアパート。

しかし、その外観は度重なる改修、増築によって当初とは似ても似つかぬほどに立派なものとなっていた。

そのアパートの一室、ユーリンの部屋には六人の男女がおり、部屋の中心でユーリンは鎖で手を後ろにして拘束されており、床に正座をさせられ、顔は原型をとどめないほどに赤く膨れ上がっていた。

ユーリンが昨日早くに就寝した際、なぜかクレジットカードの破片が隣のカトレアのトイレの中から発見され、カトレアはユーリンを拘束し、朝を迎えた後にジークフリート社の全社員を招集して破片を見せつけ、ユーリンに説明を求めた。

それがこのザマである。


「はぁ~、それにしてもどうしようかしらね?

この駄犬を!」

「うっ!」


レイカがそう言いながら、ユーリンの頭をソードオフショットガンの銃床で殴った。


「ごめんなさい……本当にごめんなさい……

お願い、もうやめて。

 コメディーの場面じゃなかったら僕もう死んでるから」


ユーリンの命乞いも効果を発揮せず、その後も暴行を加えられ続けたユーリンは、自分の犯した浅はかな行いを心の底から後悔した。ざまぁみさらせ、いい気味だ。

それから数日後、ユーリンの傷はほとんど目立たなくなっていたが、別の問題が起き始めていた。


「それで、これからどうするの?

言っとくけど、偽造カードはもう無理よ?」


再びユーリンの自室にて、アーニャがキッチンに寄りかかって全体に答えを聞くように質問した。


「とにかく、今すぐにでも依頼を受けて報酬を頂かなければなりません」


アーニャの問いに、新しく新調した黒革張りのイスに座るユーリンの隣に立つカトレアは、優等生のような答えを出した。


「けどよ、最近ほとんど依頼がこないぜ?

どうすんだよ?」

「そうね。

私のお店から、いくらか頂きたいところだけど、それだとお店の経営に差し障るでしょうし……」


新しく購入した、これまた黒革張りのソファに座るニキータとレイカからは、ため息交じりの解答が帰ってきた。


「……マスター、どうする?……」


ユーリンの横の床に座るテルールは、イスに座るユーリンの方を向きながら質問した。

ユーリンは頭を抱えて何事か考え込んでおり、皆の会話には興味がなさそうだった。

やがて全員がユーリンの解答を待ちわびるかのように見つめると、ユーリンは重く口を開いた。


「自己破産でもしよっか!?」


ユーリンがそう言った瞬間、ユーリンの右こめかみにショットガンの散弾がぶちまけられた。

散弾はユーリンのこめかみを通って後ろの窓に当たり、ガラスを激しく散乱させた。

その影響で、せっかく冷房で涼しくなっていた室内に外からの熱波が押し寄せた。


「……死にたいの?」


見るとソファに座ったままのレイカが、ソードオフショットガンを構えていた。


「……いえ、まったく」


ユーリンの体中から滝のように汗が噴き出る。


(う~ん)


レイカに半ば脅された形で金策を考えるユーリンだったが、正直なにも思いつかなかった。

ユーリンは会社の経営者ではあるが、経済に関する知識があるわけではなく、あくまでも傭兵であるために経営や経済に関することはすべてカトレアに任せっきりであった。


「何か良い案はない? カッチャン」


自身の隣で立っているカトレアに向かって、救いを求めるかのようにユーリンは言った。


「一つございます」


カトレアの言葉に、一同は驚きの表情を浮かべた。


「な、なによ! 早く教えなさいよ!」

「そうだ! もったいぶるんじゃねぇ!」


アーニャとニキータに急かされて、カトレアはタブレットを操作し始めた。


「こちらになります」


そう言って、カトレアはユーリンにタブレットを提示した。


「ん? 新型兵器のテスト?

なにこれ?」


タブレットをカトレアに返しながら、ユーリンは質問する。

これまで数々の依頼をこなしてきたが、このような依頼は珍しい。おそらく初めてであろう。


「正確に言えばシュタール・パンツァー社のバンツェル用兵装と、新型バンツェルのデータ収集が内容のようです」

「ふ~ん、いいんじゃない?

 それしか選択肢は無さそうだし」

「それではすぐに準備を」


それから、ユーリンとカトレアは残りの社員達を置いて一通りの準備を終えると、ヘリで飛び立った。

いつも通りにヘリ専用発着所にヘリを預け、トリストン地区のシュタール・パンツァー社の本社ビルの前まで来た。

二人がビルの中に入ると、周囲がざわめく。

カトレアはその様子を見て怪訝そうな表情を浮かべているが、ユーリンには心当たりがあった。


(また追い出されそうになったらどうしよう……)


ユーリンが小さな胸に大きな不安を抱えながら受付係のロボットに身分を明かすと、ロボットは手元から二人分の身分証を差し出した。


「奥のエレベーターから四十階へどうぞ」

「ありがとう!」


愛想の良い、しかし無機質な声色の言うとおりに、二人はエレベーターで四十階へと向かった。

やがて目的の階に達して二人がエレベーターから降りると、見慣れた人物が目の前にいた。


「あなたは……」

「久しぶりね、カトレアさん」

「おはよう、アンドレア」


そう、お色気ムンムンのお姉様にしてユーリン達の専属外商を務めるシュタール・パンツァー社社員、アンドレアであった。


「おはよう、ユーちゃん。

 ここへ来たってことは、依頼を受けるって解釈して良いのよね?」

「うん、まぁね」

「それじゃあ、こっちへ来て?」


そう言うと、アンドレアは両隣に無数のオフィスが並ぶ一本道の廊下を進んでいった。

二人もその後を追うと、突き当りに大きな扉があった。

アンドレアはその扉を開けてユーリン達を部屋の中に招くと、扉を閉めて鍵をした。

部屋の中は広く、シャンデリアによって室内は明るく照らし出され、床には大理石に赤い絨毯が敷かれており、高級そうな棚にはこれまた高級そうな酒や葉巻が置いてあった。


「どうぞ、座って」


アンドレアに促されて、ユーリン達は牛革張りの大きなソファに腰掛けた。

アンドレアは向かいのソファに座ってスーツのポケットから葉巻を出して火を着け一服し、ゆっくりと話し始めた。


「実はね、二日ぐらい前にウチの会社が開発した新兵器と新型バンツェルが完成したんだけど、実戦データが不足しているのよ。

 一応、ウチの専属パイロットや評判のある民間軍事会社に依頼を出してテストしてもらったんだけど、途中で機体や兵器に振り回されちゃって……」


そう言って、アンドレアは葉巻を一服した。


「……そういうこともあって、株主の反応も良くないワケ。

 このままじゃマズいって思ったんでしょうね、今日の午前四時ぐらいに本社から呼び出しがあったの。

 会議室に行ったら幹部たちが勢ぞろいしてて私に言うワケ。

 『誰か腕の良いパイロットは知らないか』って」

「それで我々に依頼を?」


再び葉巻をふかすアンドレアに向かって、レイカは座ったまま微動だにせずに聞いた。


「えぇ、そうよ。

 もしこの依頼が達成出来たら、あなた達の会社に二億アルク。

 私は外商本部長のポストがもらえるの。

 どう? やる?」


はっきり言って、アンドレアの態度は世間一般で言うところの外商と比べてあまりにも不遜なものであったが、それもこれもユーリンやカトレアとの個人的な付き合いがあってこそである。

二人はアンドレアの仕事ぶりを近くで見る機会があったが、いかにもキャリアウーマンといった様子で仕事をこなしていた。

そんな人物が、顧客である自分達の目の前で、余裕たっぷりに葉巻を吸っている姿を見て変な気分になるが、これはユーリン達にとって千載一遇のチャンスである。


「わかった、引き受けるよ」

「うふ、よろしくね」


そう言ってアンドレアは葉巻の火を灰皿に押し付けて消すと、二人に付いてくるように言って部屋を出た。

ユーリンとカトレアも続いて部屋を退出し、先を行くアンドレアに付いて行く。

三人が再びエレベーターに乗り込むと、アンドレアが階数の書いているボタン類の下にあるパネルを外した。


「それは?」


ユーリンの質問にアンドレアが得意げになって答える。


「うふ、秘密の入り口よ」


そう言ってアンドレアが液晶パネルに表示された数字を押すと、エレベーターが下の階へ降りて行った。

やがて一階を通り過ぎ、社員専用の駐車場がある地下二階の表示がされた後はそのまま画面の表示が止まったが、エレベーターは降下し続けていた。

やがて降下が止まってアンドレアが先に降りると、二人を手招きした。

つられてエレベーターを降りた二人は驚きの声を上げた。


「うわぁ!」

「ほげぇ!」

「え?」


今、ユーリンはカトレアから聞いてはならない声を聴いてしまった気がする。


「……いえ、なんでもありません」


しかしユーリンがカトレアの方を向いた時には、カトレアはいつもの調子に戻っていた。


「ようこそ、我が社の研究施設へ」


驚く二人に向かって、アンドレアはいつの間にか取り出した葉巻をさすりながら、色気たっぷりに言った。


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