第九話一部 異変
……マスター、女の人とイチャイチャしてた……ムシャムシャ……
「じゃあね、おっさん。
お菓子ありがとう!」
「いえいえ、またいつでもお越しください、ユーリンさん」
ヤルタ大陸南部に位置する国家、ギルト共和国。
そこの首相執務室で、もうそろそろ髪の毛に白いものが混じり始める時期に差し掛かった紳士が、煌めく銀髪と、世の女性達もうらやむ白くきめ細やかな肌をした少年を送り出していた。
彼らは依頼主とそれを請け負った業者という関係であり、この日は報酬を受け取る傍ら、茶菓子を食べながら雑談に興じていた。
本来なら、この役割は少年の部下である生体アンドロイドの秘書が行うことなのだが、あいにく彼女は定期メンテナンス中のため、自宅から動くことができない。
少年は執務室を出て、廊下を渡って中央の大階段を降りると、先程の紳士、この国の首相であるラルドが手配したであろうタクシーに乗って、首相官邸を後にした。
ギルト共和国首相ラルド・ホーケン。
彼はかつてハイド共和国が犯した事実上の『侵略行為』を許したとして、議会から内閣不信任案が出て可決されたが、その後、ハイド共和国を占領していた地域から撤退させたうえ、その後もハイド共和国に毅然と声明を出したことと事態収拾に巧みな手腕を発揮したことから、不信任案可決に伴う総選挙で議員に返り咲き、議会の多数の可決を以って、再び首相に任命された。
裏事情を言うと、その功績の裏には先の少年が代表を務める民間軍事会社の存在があったのだが、それは世間に公表されていない。
しかし、少年とラルドは今も良好な関係を保っている。
その少年がタクシーから見つめる先の景色は素晴らしく、街道の樹木と近代建築が自然と文明の調和を如実に現していた。
彼、ユーリン・ヴォルフがいる場所は、彼の住まいから北東に位置するこの国の首都である。
ユーリンは駅に着くと、タクシーを降りて駅の改札へ向かった。
普段であれば自前のヘリで自宅まで帰るのだが、この首都ゴルゴグラードに向かおうと自宅裏に駐機されたヘリに乗り込んで操縦しようとしたら、あいにく燃料が切れていた。
しかも予備の燃料も在庫が尽きていたため、ユーリンは仕方なく電車やバスを乗り継いでここまで来たのである。
本来なら、彼の暮らしている港町からこの首都まで来るにはそれなりの出費を覚悟しなければならない。
しかし、彼はギルト共和国政府から「永年通行許可証」の携帯を許された人物である。
この許可証があることにより、ユーリンはゴルゴグラードと自身が居を構える港町ミルタの往復はおろか、ギルト共和国の端から端まで、公共交通機関の存在するかぎり自由に、無料で、行き来ができる。
それもこれも、ユーリンが民間軍事会社ジークフリートの代表取締役であり、この国が抱える重要案件や国益に関わる問題の多くを解決してきた見返りである。
ユーリンは改札のタッチパネルに許可証を押し付けて改札を抜けると、人で溢れかえっている一般電車用のホームとは違う入口へ向かおうとした。
改札を通ってすぐ左に曲がり、階段を上って二階の連絡通路を渡った。
(やっぱ帰りくらいはラクしたいよね!)
その後階段を降りるユーリンだったが、階段を降りた少し先で人とぶつかってしまった。
「うわっ!」
「っ! ごめんなさい!」
声からして、ユーリンにぶつかったのは女性だった。
しかし、女性の背は高く、テルールと同じくらいありそうだった。
女性はすぐに立ち上がって深々とお辞儀をした。
身に着けた服やフードは所々擦り切れ、隙間から見える顔や手足は垢まみれだった。
その容姿で、ユーリンはこの女性が浮浪者であることを感じた。
「いや、こちらこそ失礼」
ユーリンは努めて紳士的に振る舞い、その場を立ち去って一般電車用ホームの横に設置された特権階級や富裕層しか利用できない高速鉄道の、豪奢な入口の改札に差し掛かったその時。
「あ、あれ?」
ユーリンは通行許可証を取り出そうとして、自分のズボンのポケットに財布が無いことに気付いた。
ユーリンの周りを歩くそこら辺の金持ちと違って、この蒸し暑い季節にスーツを着たりすることは無い。
もう一度、半ズボンやタンクトップの中を探してみたが、一向に見つからない。
(ぶつかった時に落としたかな?)
ユーリンはあの女性とぶつかった場所へ小走りで向かい、辺りをよく探してみた。
しかし、財布は見つからず、女性の姿もなかった。
(もしかして……)
最悪な事態が起きた。
(財布を盗まれたっ!)
自身の無能さを露呈させたばかりか、紳士ぶって振る舞った挙句、自分の財産が盗まれたことにこのマヌケな社長はたった今気が付いた。
ユーリンは慌てて使い捨てのプリペイド携帯を取り出し、秘書のカトレアに電話した。
「はい、なにか御用ですか? 社長」
電話の主は、ユーリンの会社に勤める有能な生体アンドロイドであるカトレアだ。
普段はカンにさわる無機質な声も、今のユーリンには頼もしく聞こえた。
「盗まれたっ!」
「……たとえ他の女性に心を盗まれてしまっても、私はいつまでもマスターの忠実な下僕で―」
「なぜそうなる!?
そうじゃなくて、僕の財布が盗まれちゃったんだよ~」
「警察の方には届け出ましたか?」
「……まだ」
電話の向こうから静寂が流れる。
おそらくカトレアは今、その電子脳をフルに活動させて妙案を考えてくれている最中なのだ。
しかし、電話口からは残酷な一言が発せられた。
「……マヌケ」
「はっ!?」
そう言って、電話は切られてしまった。
「あいつ~!」
怒りに体を震わせるも、ユーリンは現実的な一歩を踏み出すことを決めた。
まずは駅前の交番に行って被害届を出し、次にラルド首相に電話してヘリでアパートまで送ってもらうことだ。
そう決めたからには善は急げ。ユーリンは脱兎のごとく駅前の交番まで走って行き、駐在の警官に事情を説明した。
「いや~それだと財布を取り返すのは至難の業ですよ?」
「どうしてです?」
恰幅のいい警官は額の汗をタオルで拭いながら、説明を始めた。
「ここ最近、富裕層や特権階級を狙った事件が頻発してましてね。
なかには惨殺された家族の死体を家の前に投げ捨てられたという事案もあるくらいなんです。
あなた、財布だけで済んで運が良かったですよ」
そう言いながらも警官は書類手続きを進めており、ユーリンはその書類にサインをして交番を出た。
まずは第一段階終了。次は電話だ。
ポケットからプリペイド携帯を取り出し、首相執務室直通の番号に掛ける。
しかし、返ってくるのは無機質なピーという機械音だけだった。
(まったくあのボケジジイはここぞという時に!)
頭の中でラルド首相の顔を百発ほど殴ったユーリンは、携帯をしまって駅から少し離れた表通りに出た。
通りは人の波であふれ返り、所々で民間軍事会社反対だの富裕層はくたばれだの、実に活発なデモ活動が行われていた。
「平和だねぇ~」
ユーリンがその光景を滑稽に思って眺めていると、一人の男性がユーリンに近づいてきた。
「そこの君! ひどい身なりじゃないか!
ささ、こっちへ来なさい!」
「は?」
「君だよ君!
君も民間軍事会社やそれらに寄生する富裕層や特権階級の犠牲者だ!
僕たちは君のような人間を助けたい!
さっ! こっちへ来なさい!」
はっきり言って心臓を抉り出して黙らせようと思ったが、彼の指差す先からはおいしそうな料理の匂いがして、実際にユーリンの見つめる先の公園では炊き出しが行われていた。
「あ、ありがとうございます」
「うんうん! ぜひともゆっくりしていくといい!
君のような人間は他にもゴマンといるんだ!」
ユーリンの肩をバシバシッと叩きながら、男性はユーリンを公園へ案内した。
公園のほとんどは浮浪者ばかりであり、皆うつむきながら食事をしていた。
ユーリンが公園に張られた天幕の中に入ると、豚汁の入った鍋をかき回していた女性が、男性に向かって、
「まぁ!
また一人、奴らの手から救い出したのね!」
「ああ、そうさ。
僕らはまた大きな一歩を踏み出したんだよ!」
正直ユーリンはハラワタが煮えくり返っていた。
一応こんな身なりでも、二日洗ってないタンクトップと半ズボンと下着を着ていても、ユーリンはちゃんと設立登記をした会社の社長である。どんな零細企業でも社長は社長だ。
そんなユーリンの思いも知らずに、二人は自己紹介を始めた。
「僕はタモン、彼女はシャーロットだ!」
「よろしくね!
ところで、あなたのお名前は?」
タモン、という男性の見た目は三十代後半ぐらいで、メガネを掛けて栗色の髪をヨーロピアンスタイルにまとめ、四センチほどの髭を口、頬、顎などに生やしている。いわゆるヒゲモジャという状態だが、その髭はよく手入れされているようだった。
シャーロットと紹介された女性は、艶やかな金髪を背中の辺りまで伸ばし、上下の衣服が濃紺のジャージ姿であったが、その立ち居振る舞いには上流階級の仕草が所々に感じられた。
ユーリンもそういった上流階級の主催するパーティーに招かれて参加したことがあるので、なんとなくわかる。もっとも、退屈すぎて今まで三十分以上も会場にいることはできなかった。
「僕は―」
シャーロットに促されて自己紹介をしようとした時、ユーリンはふと思った。
さっき、タモンは民間軍事会社がどうのこうの言っていた。
だとすれば、今ここで本名を名乗ってタモンが自分の職業を知っていたら、おそらくここから生きて出ることは出来ない。
タモンの腰にぶら下がったスタンロッドを目にして、ユーリンはふと思った。
「僕は……ジーク・ヴォルフ」
「ジーク! 勝利か! 良い名前だ!」
「えぇ……ご先祖様の名前です」
「それは良いわね!」
そう言ってシャーロットは、ユーリンに豚汁を渡した。
朝から何も食べていなかったユーリンは、じっと豚汁を見つめてしまった。
「さぁ! 遠慮せずに食べたまえ!」
「あ、ありがとうございます」
二人の前で瞬く間に豚汁を食べ終わると、シャーロットがまた豚汁を注いでくれた。
タモンは、他に助けなければならない人がいると言って、その場を後にした。
シャーロットにお礼を言ってユーリンは天幕を出ると、近くの空いているベンチに腰かけた。
財布のことも気になっていたが、今はここからどう出るのかが悩みの種なってしまった。
この公園は首都の中心にあるにも関わらず広かったが、四方はちょっと意識高い系の熱血ボランティアに囲まれており、黙って出ていこうとしたら色々と面倒なことになりそうだった。
ユーリンが豚汁を食べながら辺りを見渡していると、見覚えのある姿を見た。
炊き出しの天幕の裏にあるベンチ。そこに寝転がる女性の姿は、まさしく今朝、駅でぶつかった女性と同じだった。
ユーリンは豚汁を持ったまま彼女の傍まで近寄り、隣に腰掛けた。
「おはよう」
「あぁ?」
今朝とは打って変わってしゃがれた、ガサツな声を上げる女性だったが、ベンチから起き上がってユーリンの姿を見ると固まってしまった。
「お、お前……」
「また会ったね」
「っ!」
「あ、ちょっと待ってくれる?」
反射的に逃げようとする女性の足を踏んで、ユーリンは冷静に言い放った。
「僕は財布を返してくれればそれでいい。
警察にも言ったりしない。だから返してよ」
「……本当だろうね?」
不遜な態度を崩さない女性に、ユーリンははっきりと言った。
「最悪、二人ともここであの怪しげなボランティアに軟禁され続けられるハメになるけど?」
「フン! 迷惑な連中だよ。
民間軍事会社反対だの弱者救済だの、アタイは好き勝手に生きていくのさ!」
「……ふっ」
「何がおかしいんだい!?」
自分をギロッと睨む女性に対して、ユーリンは飄々とした態度で言い放った。
「いまどき一人称がアタイとか……
超ウケるんですけど、はははは!」
「てめぇ!」
女性は怒声を上げてベンチから立ち上がった。周りにいた何人かのホームレスがユーリン達の方を見る。
「いいの? 僕らの正体ばれちゃうよ?
お互いヤバい立場なんだから、ね?」
「……ちっ、そういうことかい」
ゲス顔のユーリンに言われて、女性は再びベンチにドカッと座った。
ユーリンから目をそらして、女性はさりげなく自己紹介を始めた。
「アタイはニキータ。
……あんたは?」
「僕はユーリン」
ユーリンの自己紹介が終わってからしばらく、沈黙が流れた。
「ハッ!
アタイの名前を聞いてビビらないなんて、アンタ、見た目の割になかなかのワルなんだねぇ!」
「……想像にお任せします」
どうやらニキータはユーリンのことを、自分と同じ泥棒だと思っているようだ。
ニキータは懐からユーリンの財布を出すと、他に見えないようにユーリンへ手渡した。
「これで言いっこナシだぜ?」
「うん、わかった!」
二人は笑みを浮かべると、今後のことについて話した。
「で、これからアンタ、どうすんのさ?」
「とにかくここから出ないと、なんにもならないよ」
豚汁を啜りながら話すユーリンに対して、ニキータははっきりと宣言した。
「言っておくが、ここから出たらお互い知らぬ存ぜぬだぜ?」
「もちろん」
ユーリンがそう言うと、ニキータは公園に備え付けられた柱時計を見て、顔を近づけて話した。
彼女の顔はよく見れば非常に美しく、垢を落とせば普通にモデルとして生活出来そうだった。
「ここだけの話、あと三十秒でこの公園に警官隊が押し寄せてくる。
このボランティアを解散させるためにな。
逃げ出すならその時だ」
「……どこでそんな情報を?」
「ま、アタイにもコネってものがあるのさ」
ニヤリと笑ったニキータは、そのままベンチに寝転がってしまった。
ユーリンが豚汁の入った発砲スチロールの容器を両手で持ってホームレスのフリをすると、三十秒の時が流れた。
すると、遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえ、やがて十数台のパトカーが公園の前に次々と停車した。
パトカーのドアが開き、中から防弾チョッキを着用した筋骨隆々の警官が現れた。
「警察だ! さっさと解散しろ!」
警官から威勢のいい怒鳴り声が発せられると、ホームレス達はそそくさと退散し、公園にいたボランティア達は一斉に警官隊に対して陣形を組んだ。
「キューブを独占するなっ!」
「民間軍事会社反対っ!」
様々な年齢層の男女が怒号を響かせている姿にユーリンが見とれていると、突然左肩を掴まれた。
「何してんだい! さっさとズラかるよ!」
そう言って、ニキータはユーリンを公園から引っ張っていった。
公園から抜け出し、しばらく通りを歩いてからビルの間の路地に入ると、ニキータはユーリンの手を離して、歩き去ろうとした。
「じゃあな」
「ま、待って!」
「なんだよ?」
「……もう少し一緒にいたい」
ユーリンからの意外な言葉に、ニキータの顔がいやらしい笑みに染まっていく。
「ん~、ひょっとして一人きりになるのが怖いのかな~?
いいでちゅよ~、お姉ちゃんがたっぷりかわいがってあげまちゅからね~」
「僕子供じゃないもん、大人だもん!」
それは事実なのだが、今のニキータにはまったく理解されなかった。
「心配しなくても、アタイがお前の面倒見てやるぜ。
だから―」
「なに?」
「アタイの事は『ニキータ姉ちゃん』って呼びな」
「……ニキータ姉ちゃん」
「ははは! よしよし、それじゃアタイについてきな!
ユーリン!」
実を言うと、ユーリンがニキータに付いて行こうとしたのにはワケがある。
先程の騒ぎから逃げる途中、携帯と通行許可証を落としてしまったのだ。
ユーリンは普段、ギャンブルぐらいにしかお金を使わないため、財布には小銭ぐらいしか入っていない。
公衆電話を探して電話を掛ければ良いのだが、またカトレアになんて言われるかわからない。
そのため、しばらくこの目の前にいる巨大な小麦色の肌をした女性と行動を共にしていた方がおもしろそうだという、なんとも楽観的な考えだった。
二人は再び表通りの方に出てしばらく歩くと、交差点に差し掛かった。
ユーリンはふと交差点の向こう側にあるビルに設置された、巨大な液晶テレビに目を向けると、驚くべき事実を聞くことになる。
「本日午後未明、首相官邸が襲撃され、ラルド首相含む二十数名が犠牲となりました。
ラルド首相は現在行方不明であり、警察はこの事件の容疑者と思われる民間軍事会社ジークフリート代表取締役、ユーリン・ヴォルフを指名手配し―」
さっきまで、少なく見積もっても一時間前まで、ユーリンはラルド首相と話をしていた。
ということは、ラルド首相は自分が官邸を出てすぐ襲撃された可能性が高い。
「お前……」
「そんな……僕は知らない、知らないよ!」
おそらく、この女性は自分を警察に差し出すだろう。
国家権力の象徴たる首相が住む官邸を襲撃した人物と一緒にいて、メリットになることなどないのだから。
「……安心しな」
「え?」
「アタイは、自分で面倒を見ると決めた奴をサツに売り渡すことはしねぇ」
ニキータの心意気に感動したユーリンは泣きそうになった。
二人はそのまま交差点を渡って高層ビルのジャングルを抜けて、やがて剥き出しの丘に築き上げられたスラム街に入った。
ニキータは汚れたバラック小屋の家々を抜けて、丘の頂上付近にある一軒のコンクリートとレンガで組み立てられた家の前に着いた。
「ここがアタイの家さ。
正式に登録したワケじゃないがな」
ニキータはそう言ってユーリンを家に招いたので、ユーリンもつられて家の中に入った。
家の中は広かったが、ガラクタのジャングルになっており、少し埃っぽかった。
ニキータは部屋の奥から出してきたコンビーフの缶詰を開けて、ユーリンに手渡した。
「それで、これからどうするんだ?
お前、指名手配されちまったぜ?」
ニキータはどこからか拾ってきたのか、シーツの所々が破れているキングサイズのベッドの端に座ると、コンビーフを頬張りながら、ユーリンに聞いてきた。
「……とにかく、知り合いに電話したいかな」
豚汁を食べたばかりでいささか腹はふくれていたが、ユーリンは近くに置いてあったビールケースに腰掛けると、コンビーフを食べながら答えた。
コンビーフには程よく塩気があり、ユーリンはあっという間に食べ終わってしまった。
「それだと、もう一回街に出ないダメだな。
ここら辺には公衆電話なんかねぇからよ」
「そっかー……」
二人がそんな話をしていると、外から急に爆音がして辺りが悲鳴に包まれた。
「な、なに!? なんなの!?」
「ちっ、サツだ!」
二人がその場から逃げようとした時、家の扉が爆薬で吹き飛ばされて、外から警官達がなだれ込んできた。
「警察だ、動くな!
ユーリン・ヴォルフ及びニキータ・ドラゴヴナ!
ラルド首相誘拐の容疑で連行する!」
(……いったい、どうなってるのさ……)
思考の波に呑まれて気を失いかけるユーリンの頭の中で、ニキータと警官の言い争う声がこだまする。




