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鋼鉄のゾルダート  作者: 印西たかゆき
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第七話二部 ライバル登場

「社長」

「ん? なに?」


パンツァー・クリーガーのモニター越しに夕日に見とれていたユーリンの耳元に、ヘルメットのスピーカーから流れるカトレアの声が聞こえた。


「今回の作戦ですが、どのように?」

「まず、僕とカッチャンで敵の機甲戦力とバンツェルを破壊する。

その後は、テッチャンの指揮する歩兵部隊で残存勢力を掃討しておしまい。どう?」

「了解しました。しかし、テッチャンというのは?」

「テルールのことだよ」


カトレアからの無線が、突然ブツッと切れると、ユーリンは溜息を漏らした。


(嫉妬してるのかな?)


ユーリンとしては、カトレアに後ろから撃たれないように気をつけるだけだった。

やがて時刻は夜になり、ユーリンの座るコクピットのモニターは暗視装置によって映像化されたライム・グリーンの風景になった。

中央の液晶パネルを見ると、作戦地域まであと五分と表示がでた。


「それじゃ、行ってくるね」

「はい、ご無事で」


ユーリンが中央の液晶パネルを操作すると、フライトポーターに設置された取っ手が後退し、パンツァー・クリーガーはフライトポーターから機体を露出する体勢になった。

ユーリンがさらに液晶パネルを操作するとクリーガーは取っ手から手を離し、暗闇に包まれた空に解き放たれた。

しばらく降下してバンツェル専用のパラシュートが開き、パンツァー・クリーガーは着陸態勢に入った。

パラシュートのおかげで速度が落ちてるとはいえ、空挺降下はいつも恐怖を伴うものである。

ユーリンは自身の無事を祈りつつ、中央の液晶パネルを操作してモニターを望遠モードにすると、敵勢力の状況を調べた。

かつて大戦前に砂漠のオアシスとして栄えた街の廃墟の四方にある入口には、それぞれ二体ずつバンツェルが配備され、廃墟の中にも数体配備されている。

他にはちらほらと四脚戦車や装軌戦車があるばかりで、人の姿はあまり見えなかった。


(寝てるのかな?)


ユーリンは左右の液晶パネルを操作して百ミリ突撃小銃二丁を装備した。

やがて地上に近づくと落下制御用ブースターが作動し、パンツァー・クリーガーは無事に着陸した。

しかし、ブースターの噴射音と閃光によって相手も襲撃を察知したらしく、廃墟の中から三体、廃墟の南側入口から二体のファイントが襲い掛かってきた。

パンツァー・クリーガーは二丁の百ミリ突撃小銃を真正面に構えると、敵のファイントに向かって乱射した。

弾丸は次々とファイントに命中し、薬莢は地面を穿つ。

襲い掛かってきたファイントのほとんどを穴だらけにした後、パンツァー・クリーガーは廃墟の東側の入口へブースターを噴射して移動した。

しかし、すでにバンツェルはカトレアの搭乗するイェーガーの狙撃を受けた後であり、所々を赤く融解させながら大破していた。

ユーリンが茫然としていると、ヘルメットのスピーカーからカトレアの声が聞こえた。


「社長、廃墟の入口に配置されたバンツェルを殲滅しました」

「了解。援護の方よろしくね」

「了解しました」


通信が切れると、ユーリンはパンツァー・クリーガーをその場で待機させて、テルールの指揮する歩兵部隊の到着を待った。

本来、敵勢力の大規模機甲兵力やバンツェル部隊との交戦を意図して生まれたバンツェルは、市街戦などの狭く、どこに敵が潜んでいるかわからない地域での戦闘は不利である。

そのため、ユーリンは今後は廃墟周囲からの歩兵部隊の援護に徹することにした。

しばらくすると、廃墟上空にヘリ部隊が来るのが見えた。

ヘリ部隊は非常に高い高度を保ち、地上からの対空攻撃を警戒している。

ユーリンがその様子を見ていると、テルールから通信が入ってきた。


「マスター……今、廃墟の上……どうする?」

「わかった。それじゃ、掃討作戦開始!」

「……了解」


通信が切れると、廃墟のはるか上空に待機していた武装ヘリや輸送ヘリが急降下し、輸送ヘリの中からテルール率いる歩兵アンドロイド達が降下した。

それと同時に廃墟の中から小火器の物と思われる小さな閃光やロケットランチャーなどの噴煙が見え、ユーリンはその火点目がけてパンツァー・クリーガーの頭部バルカン砲や胸部のバルカン砲を発射した。

大口径の機関砲弾が劣化したコンクリートの建物を穴だらけにし、そこから再び閃光や噴煙が上がることは無かった。


「……マスター……北側に敵の機銃陣地がある……何とかして……」

「うん、分かった!」

「その必要はありません」


ユーリンのヘルメットのスピーカーからカトレアがそう言うのが聞こえると、直後に上空から閃光が走って廃墟に落下した。


「陣地は沈黙した。引き続き掃討作戦を続けろ」

「……チッ」

「貴様ぁっ!!」

「お、落ち着いてカトレア。今は作戦の方を優先してよ」

「……かしこまりました」


その後、パンツァー・クリーガーやイェーガーの援護を受けながら、テルールとアンドロイド歩兵達は廃墟に存在するテロリストを掃討していった。

ユーリンがしばらく正面のモニターを見ていると、やがて閃光の数が小規模になり、やがて見えなくなった。

ユーリンが作戦の終了を予感して今晩の夕食を考えていると、テルールから通信が入った。


「マスター……敵部隊の掃討を完了……これより帰投する……」

「了解、お疲れさま」


テルールとアンドロイド歩兵を乗せたヘリが飛び立つのを確認すると、ユーリンはすでに地上に着陸させてあったフライトポーターにクリーガーを載せ、ゴルゴグラードの方向へ全速力で離脱した。


                   ※


ゴルゴグラードで所定の手続きを済ませてアパートまで帰り、自分の部屋でユーリンはくつろいでいた。ユーリンはカトレアに話しかけた。


「ねぇ、カッチャン」

「なんでしょう?」

「ひょっとして今日の物語ってこれだけ?」

「は?」


カトレアはユーリンの質問の意図をまったく理解できないでいた。


「いやいやいや! え!? これでおしまい!? いくらなんでも短すぎない!?」

「……なにを言ってるんですか?」


リビングに置いてある拾い物のボロいソファで深いため息を吐くユーリンの左右の腕には、カトレアとテルールの太い両腕がガッシリと絡められていた。


短い話でしたが、三人の関係性を書きたいなと思っていたので、ご容赦ください!

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