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鋼鉄のゾルダート  作者: 印西たかゆき
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第六話四部 新しい仲間

その日、ミルタではゲンザンとユーリンの生還を祝して、レイカの酒場で宴が催された。

宴は日付が変わった深夜まで続き、やがてほろ酔い気分の客達がそれぞれの家に帰ると、ユーリンはカトレアに耳打ちした。


「ところでさ……」

「なんでしょう?」

「なんであの子がいるの?」

「社長が『連れて行って』と言うので」


二人の目線の先には、玄関の先で警備員のように両手を後ろで組んで、直立不動の姿勢をしたテルールがいた。


「う~ん、それじゃカッチャンの部屋の隣に住んでもらうか」

「わかりました」

「それとさ……」

「はい?」


ユーリンはただでさえ小さくなっている声をさらに潜めてカトレアに質問した。


「彼女達について、何かわかった?」


ユーリン自身は宴を楽しんでいたが、彼はカトレアに命じて今回の事態における、あらゆる情報を調べさせていた。

先程カトレアが酒場に来たことから考えて、彼女が調べられる範囲での情報は持ち帰ってきたのだろう。

カトレアは右手に固く握りしめていた黒のアタッシュケースから、タブレットと書類を持ち出して説明を始めた。


「まず、彼女とオルールは前大戦時に生み出された初期型の戦闘特化型アンドロイドで、あの施設はそのようなアンドロイドの管理や研究施設でもあったようです」


手元のタブレットを操作しながら、カトレアは言葉を続けた。


「元々は敵陣に単体で投入後、徹底的な破壊活動を行う目的で作成されたようです。

ですが、完成間近に大戦は終結。

彼女達はあの廃棄された海中ドッグに設置された研究施設のポッドの中で、長期間に及ぶ休眠状態になっていたそうです」


カトレアはタブレットから書類に持ち替えて説明を続けた。


「しかし、今から三日前に突如起動。

破壊された設備から抜き出した記録媒体によると、外部からのハッキングによって強制的に起動させられたそうです。

世界統一機構は彼女達が起動してから数時間後に事態を把握したそうですが、それは匿名による情報提供によるものだそうです。

彼女達が作られた理由を知った世界統一機構は協議の結果、秘密裏に鎮圧用の特殊部隊を送り込んだそうなのですが、逆に返り討ちになりコンテナに入れられたそうです。

なお、彼らは施設にいる人間も例外なく排除するように命令されていたようで、プラントの周囲には彼らに殺害されたとみられる従業員や漁師達の死体がありました」


ユーリンは息を飲んだ。

予想していた事だが、あの施設でそのような虐殺が行われていたとは……


「……そう、レイカさんの言っていた通信不能の件は?」

「テルールの証言と設備の破壊状況からして、テルールとオルールが争った際に破壊されてしまった模様 です。

また、コンテナに詰め込まれていた死体には特殊部隊以外にもあのプラントで働いていた従業員の物もありました。

幸い、この町の出身者はいないようですが……」

「そう、良かった」


亡くなった者の遺族には申し訳ないが、ユーリンからしてみれば自分の知り合いの葬式に出るような悪夢を見ずに済む。

チラッとテルールの方を向いたユーリンは、不敵な笑みを浮かべた。


「面白くなってきたね」

「……本当に理解していますか?」

「べ、別に理解できないから話をはぐらかそうってワケじゃないもんね! それに―」

「理解していますかっ!?」

「……してません」


カウンターにカトレアの深い溜息が漏れる。

ユーリンは恥ずかしそうにうつむくと、再びカトレアに向き直って話しかけた。


「他にわかったことはないの?」


ユーリンはカトレアの調査能力を信用している。

彼女の能力なら「奴ら」のことも何かわかるんじゃないかと期待していた。


「ひとつ、気になることがあります」

「何?」


カトレアは、真っ直ぐにユーリンの目を見て話し始めた。


「海中ドッグのアンドロイド関連の施設に、見慣れないマークが描かれていました。

不思議に思って調べてみると、かつて第十三次宇宙戦争中にその姿を現し、当時覇権をかけて戦争中であった数々の超大国に深刻な被害を与え、戦争終結後は忽然と姿を消してしまったある部隊のマークだそうです」


カトレアの話を聞いているうちに、ユーリンの頭の中では「奴ら」に対する怒りが沸々と湧き上がってきた。


「しかし、そこでひとつ気になることがあるのです」

「へぇ~、何が?」


カトレアは、ユーリンにとって思い出したくない事実を知らせてきた。


「かの部隊と唯一戦闘し、全滅した部隊がございます。

彼らはかの部隊との戦闘の際、当時の技術の数十年先を行ったバンツェルをはじめとする兵器の襲撃に遭い、全滅したそうです。

その部隊の名はギルト共和国宇宙軍独立第八遊撃大隊―」

「奴らはあそこにいたのっ!?」


自分の話を遮るかのように突然語気を荒げるユーリンに、カトレアも一瞬たじろいでしまう。


「……確証はありませんが、あの海中ドッグにはおそらく一か月前から生活していた痕跡があります。

先ほど町の漁師の皆様に問い合わせましたが、『その場所は知らない』と仰っていました」

「……そう、わかった」


いつもとあきらかに様子が違うユーリンに向かって、カトレアは質問した。


「あの、よろしければ教えて頂けますか? いったい―」

「ねぇ、カッチャン」


カトレアの声を遮って、ユーリンは話し続ける。


「暇があればでいいから、『奴ら』のことをもう少し調べてくれない?」

「……承知しました。それと」

「まだ何かあるの?」


いつもの声色に戻ったユーリンがカトレアに訝しげな視線を向ける。


「私が社長に命じられた兵器や歩兵の貸借申請をしたのですが、普段黙認されていた審査を受けました。それも通常よりも長く……」

「……そう、わかった。ありがとう」

「いえ」


カトレアにお礼を言うと、ユーリンはイスから降りて、テルールの方へ歩いて行った。


「ねぇ、テルール」

「……なに?」


テルールがギロっと目だけを動かしてユーリンの方を見る。

彼女は現在ネックウォーマーを外しているが、フードは被っている。


「良かったら、僕らのアパートに住まない? それと、僕の会社で働いてほしいんだけど?」

「……うん、いいよ……マスター」


テルールはニコッと笑うと、ユーリンを正面から抱きしめた。


「ちょ、ちょっと、恥ずかしいよ! やめてってば!」

「ふふ……恥ずかしいの?」


イチャつく二人の様子を見て、カウンター席から恐ろしい表情を浮かべるカトレアがいた。


新しい仲間が加わったことにより、今後ジークフリートがどうなっていくのか、見物です!

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