抱き締める夜
失うことを恐れていた
薄灰色の雨雲
降りしきれば消え去る
磨り減った
柔らかな土
流れて行く泥水
頑なではいられなかった心
あなたを抱き締めずには
いられなかった夜
雨上がりの空
泣き晴らした後に輝く
雲の合間から覗く満月
その影の凹凸
ひと知れず失われた形
あなたの失ったもの
私の失ったもの
過ぎ去った悲しみが
懐かしく思えても
すべて元のようには
埋めることなど
出来ないけれど
あなたのかたち
私のかたち
失ったもので
形づくられていく
ただ
抱き締めずには
いられなかった、夜