第三話~最新CGを駆使した悩殺ナグモダンスでファンをメロメロにして
見た限り僕と変わらない年齢の女性、つまり大卒後三ヶ月程の二十一歳くらいな椿波雲が、年齢には明らかに不相応ながらその大魔王顔負けの態度にはバッチシOKそれ以外はナッシングな、なかなかにゴージャスなマンションに住んでいるという紛れもない事実から、波雲氏の表の仕事、コルト社の傑作拳銃、シングルアクションアーミーのアーティラリー、象牙グリップのステンレスタイプ二挺を握らない側の、恐らく平和という単語が似合うであろうお仕事というのは、ひょっとしてとんでもなく専門的な知識と超難関な国家資格なんかが必須な、国際的活躍も後々可能で高額報酬は当たり前でその業務内容にこそ意義があるのだ的特殊分野なのかもしれない、という想像は、このお寒いご時勢で一人暮らしで3LDKは確実にあるであろう実際はまだ全部を見た事のない、波雲氏に間取り各所に立ち入り禁止エリアを厳重に指定されている絶滅危惧種候補の何とも珍しい七面鳥の出来損ないの如き僕の、波雲氏の仕事スペース片隅にあるアールデコ風シックに過ぎて何の魅力もない僕スペースで顎を捻る、履歴書上は理系な学者的観察眼からの一時的な仮説ではあるものの、その根拠の一端はそこいらの駆け出しアイドルユニット軍団は全員泣いてビックリな、ちょっとアナタ、いいところだけ持っていってこの泥棒猫と同姓に揶揄されても何ら不思議でもない波雲氏のその見た目からくるインテリジェンスでいてヨーロピアンセクシーな豪華に過ぎる見栄えからくる世界三大美人現代版的印象であって、僕の、あまり晒したくない履歴書にある、実名を伏せて某私立大学とするのが適切な懐かしのキャンパスとはそれこそ対極の、首都にあるあの国立大学のナントカ学部卒業という経歴であっても全く不思議でもない波雲氏のかもし出す博学的イメージはしかし、一旦口を開くと東な国立ではなくケーオー大学、正式名称ノックアウトカレッジ首席卒業生その一で、数々のハードパンチャーを輩出することでリング内外では超有名だが一般には全く知られていない、学部が体育学部のみでボクシング同好会に強制入会させられる学び屋から出てきたのが他ならぬ波雲氏だったと誰かに言われても、きっと、なるほどと思いっきり納得しつつ、普段からのあの根拠不明な傲慢天下無敵な類を見ない言動は実はパンチドランカー症状の末期だったのかとも納得して、ボケなのかツッコミなのか独り言なのか嫌味なのか愚痴なのか不明なあれやこれやにもついでに納得出来てしまうのだが、ならばこの、まだ全貌を知らない豪勢なマンションは世界ライトフライ級チャンピオンベルトを三年くらいキープした結果のファイトマネーの産物なのだとすれば、何だか全部の辻褄が合ってしまうので、その武器を殺人の拳から銀の拳銃に持ち替えたという経緯もまた不思議なほどピッタリと填まるジグソーの空白ピースの一つで、波雲氏を取り巻く謎の一旦はこうして地味過ぎる脇役から一転名探偵へと職変えした他ならぬ僕の最初の事件簿です、と本人が例のリクライニングシートでたるいFMをバックにすやすやと寝ているのを良いことに好き勝手を撒き散らしてみましたが、こんな文章が波雲氏の目に触れたが最後、今度こそマジと書いて本気と読ませる熱血少年マンガの驚天動地の終盤もビックリな、血飛沫大放出で見るも無残な結末が走馬灯の如くギャンギャンと走り回る、読者どころか作者もビックリ仰天な展開が待っているので、何となくノリであれこれ書いたこの記録データにはやはり、本格的データセキュリティが必要かもしれないと真面目に思いつつ、波雲大作戦、レジェンド・オブ・ナグモ、ナグモ・エンディングストーリーのパート3に入りたいと思いますが、その前に一言付け加えると、普段はひたすら怖い波雲氏の寝顔の、主に艶のある口元はとっても色っぽくて問答無用に魅力的です、とか役得な自慢をしてみたりして、改めて波雲氏の奇妙な冒険第三部・スターダストレビューのスタートです。
平凡であることが平穏であるとは限らない、と言ったのは実は僕のかつての友人なのだが、その何だか格言にも聞こえそうなそれが実は、3次元よりも2次元のほうがロマンがあるよね、とうっかり口を滑らせた学生時代の僕に対する哀れみを込めたまごうことなき格言かつ、その後の人生計画をかなり大幅に修正しておいたほうが人としていいという優しさの裏返しだと気付いたのは、2次元のロマンを追求したその更に先にあった結果として3次元に帰還を果たしたという、それはそれである意味ハードでボイルドでロマンたっぷりな人生なんじゃないかな、と素面で自覚したのはある冬の夜の出来事だったと思ふ、とか思わず旧字使い。
今時の若い者は、という言葉が紀元前エジプトの壁画のヒエログリフにあったという史実はともかくとして、ファンだマニアだと自称する連中なんてまだまだ浅いぜ、とか、どこぞのネカフェの談話ルームで、オンザメガネなリアル嗜好のぷにぷにメイドロボ限定生産レアフィギュアとフリードリンク片手に演説しちゃう当時の僕は、病んでますね、と目の前の同類だった筈の面々から真顔で診断されても文句を言えない程の重症患者だったのだが、人生を早々に挫折しちゃいそうな地獄の卒論作成とその後の氷河期再来な就職活動時期に至ってその辺の良識だか人間性だか尊厳だかソウルだかハートだかをかろうじて取り戻した僕は、それでもやっぱり人間そんなにコロコロ変われるものではないと自分で実証しちゃってる時期に波雲氏に拾われたという、面接では決して語れない経歴を持っていたりする。
冥府だタロンだ天界だ天使さんだを十秒以内で受け入れる時点で確実に病んでいる訳なのだが、初対面の際にそう渋々ながら説明する相手が他ならぬ波雲氏だったので、主にそのビジュアル、厳密に言えば色っぽい顔とエロっぽい胸辺りから全面的に受け入れましたというのは僕に限ったことだろうか? と、あえて疑問形にしてみてもやはり、口はテトロドトキシン並みに悪いが見た目は完璧に達する美人で、出来ればメガネを、とか口走ってしまいそうな僕が、古代エジプトの農民にやれやれと溜息を吐かれても、まあ、これはこれで全然アリですから、と無意味な寛容さで波雲氏とそのバックボーンらしきややこしい設定を全面的に受け入れるその態度が果たしてロマンなのかと問われると、やや戸惑いつつもロマンですよと断言しちゃうと人としてのキャパの大きい、何とも漢と書いて男な風に見えたりしないかな、と明らかにずれている論点で自分を納得させちゃうスキルは、平面的ロマンを追求していれば誰にだって自然と身に付くものだと信じています。
だって人間だもの、とか有名なポエムを持ってきて全部を収拾しようとしてみたけれど、それで収まらないから深刻な問題なんだよ、とか改めて指摘されそうだけど、フルネームを椿波雲という、今となってはもうその名前すらフェチの対象になってしまうくらいに波雲毒に染まっている僕が分析すると、波雲氏はいわゆるツンデレに属するタイプの女性なのかも知れないという理系風な仮説をまず立てて、しかしながら全くもってデレ要素が見当たらないというアインシュタインも舌を噛み切ってビックリな発見をした僕は、ならばツンツンというニュージャンルを開拓する荒野の一員かもしれないが、さすがは新ジャンルだけあってツンツンなる具体例がハリネズミ以外に見当たらないという発見もまたするのである。
あの、この下り、全く不必要だとか思ってますか? いえいえお客さん、実はここが肝の一番美味しい部位なんですよ、騙されたと思って食べてみて中毒ヒットで痙攣しつつ救急搬送されてみて下さい、と客引きをして、続けてみよう。
椿波雲、波雲氏をその構成要素から分析してみるといういかにも理系崩れっぽい展開をしてみると、まず、見た目に欠点らしきものは皆無で、腰に掛かる黒いストレートヘアがばっちし似合う、やや尖った顎と鋭くも思わずニヤリとしてしまうその二重瞼と小ぶりながらチャーミングな桜色のリップとそこから覗く八重歯と、実はサーモンが名産、温泉もありますなノルウェーとのハーフなんですでも全く通用しそうな雪の如きとは古めかしいが白い肌とスッと通った鼻筋という顔立ち。
女性にしてはかなり高い、ハイヒールでも履けば僕を軽く越えるであろう背丈と、等身を無視したような、その系列のフェチならデジカメのギガメモリ容量のギリギリまで撮影しまくるであろうスラリとした美脚と、僕の隠れた、決して明かせない自慢の一つである女性の胸のサイズを着衣の上からでも一目で言い当てますスキルから、Bに限りなく近いAであろうという、エロオヤジやマセガキや浅いマニアからすると物足りない、しかし僕を始めとするコアなマニアからすればそれがジャストですよお姉さんと拍手喝采満場一致な整いつつ控え目なバストを、小ぶりでキュッと上がった素敵なヒップとで全部組み合わせて完成するのが波雲氏で、ある人物、特に若い女性に必要な、あくまで僕の指標である要素を更に抽出すると、冷たい風の顔立ちは異国風の不思議な魅力と厳しくも真は優しいお姉さんという形容がピッタリで、BWHと書いてスリーサイズと強引に読ませるこれもまた、今時の客に媚び倒したアニメの萌え的お壌ではなく、その脇の更に後ろにいるフルネーム不明で科白も少ないながら人気投票上位ランクイン常連のあの娘とあの娘とあの娘なバランスなので満点を越えたオーバーセンス炸裂で、冬コミまでに椿波雲ぷにぷに限定フィギュアを発表して停滞している今の業界を大いに震撼させてやろう、とか僕らしくない野望がメラメラと燃え上がるもので、その際のコスチュームバリエーションの候補はまず女子高生時代波雲氏のブレザーと舞踏会に招かれた波雲氏の真っ赤なドレスとメリークリスマスイベントでミニスカサンタクロース娘の扮装をした波雲氏と、って、あの、付いて来てますか? 続けちゃっていいですか? としつこくクエスチョンしておいて続行します。
リアル波雲氏の今時期の普段着は、上からブラウス、ジーンズ、ガンベルト、ライディングヒールタイプのブーツと、列挙するとガンベルト以外は一見普通ながら、よくよく観察するとまず、襟のある長袖無地のブラウスは決まって白で、シルク風な場合もあればサテン地もコットンもあるが必ずボタンは上から四つ外してくれているのがとっても有り難い決まりで、そこから覗くのはセクシーブラではなくインナーキャミソールというコアマニアの心を揺さぶる出血サービスに過ぎる組み合わせで、ブラウスの裾は垂らすのが基本で、これはどうやらガンベルトとリボルバーのグリップを隠すのが目的のようで、しかし下側のボタンも外しているのでたまにお腹が見えたりもするというこれまたサービス精神旺盛な限りです。
それでBに近いAなんだからもうこれ以上注文はないでしょう、とか熱弁をしつつ更に続行すると、基本的に殆どスッピンで淡いピンクのルージュが唯一で、元々まつ毛が長めだったりなので審査を待たずに満点合格の優勝です。
ジーンズはオーソドックスな細身より少しだけゆったりで足首のところで折り返していて、色は日によって違うものの比較的暗い感じで飾りの刺繍などはなく、上下で明暗或いは陰陽という組み合わせなのだろうとは勝手な想像で、ベルトはシンプルな革で飾りのない男物にも見える太いもので、足元はお気に入りらしいライディングヒール、いわゆるウエスタンブーツっぽい先が尖ってヒールがそこそこある艶消しの黒で、その爪先で蹴られたら穴が空いて致命傷確実な同タイプのデザインの色違いが幾つもあるみたいで随分とお気に入りらしく、しかし何とスパー、西部劇で見かけるかかとのところにある歯車みたいな金属、歩くとカチャカチャと音を立てる、馬の腹をこするためのあれが玄関収納に幾つかあったりするが、さすがにそれを付けて歩いている姿はまだ見た事がないので波雲氏なりのジョークなのだろうと思うものの、それでかかと落としとか喰らったらちょっと洒落にならない大惨事だ、と内心ビクビクです。
唯一のアクセサリはシルバーのネックレスで、僕はそういう知識がないので高級なのかどうかは不明ながら、チェーンの先に小さな十字架だからといって敬虔なクリスチャンかというと、確認はしてないものの汝の隣人を愛せよ的要素とは天文単位で遠いので絶対にそうではなく、あくまでアクセサリらしく、しかしこちらはアクセサリ目的ではなさそうな男性用っぽいクロノグラフの腕時計がどうしてか利き手である右手側にあって、僕のささやかな自慢のデジタル腕時計、Gショック・タフソーラーの三倍から五倍はしそうなあきらかに高級であろう腕時計は、色合いこそ赤と黒とシルバーに黒バンドという一見するとカジュアルファッション風なやや大振りなもので、確か軍用腕時計として有名なブランド、ルミノックスの高額ラインナップに似たようなものがあったようで、しかしミリタリマニアでもある幅広い僕が知らないモデルなのでこれは素直に本人に尋ねて幸いにも教えてくれたのだが、ブライトリングというスイスの老舗時計ブランドのラインナップの一つ、ナビタイマー・クロノマチック1461というものなのだとか。
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昨今を問わずのヒーロー、ヒロインはピンチな場面やウィークポイントがあるからこそ光るのだ、という理屈は2次元のロマンを追求し尽くしつつ特撮の類も網羅していると自負する他ならぬ僕自身の意見でもあって、それを克服する修行シーンだったりパワーアップアイテムの登場なんてものもそれはそれで燃える訳なのだが、ピンチな場面はともかく波雲氏にウィークポイント、いわゆる弱点がないかというと、いやいや、さすがの波雲氏もあれでいちおう人間だと思うので弱点の一つ二つくらいはあるだろう、とこちらも懸命に思い出してしてみるのだが、具体的にと訊かれると、うーむと黙ってしまうのであります。
強いて言えば煙草が切れた際の波雲氏の、あのイライラを漏れなく怒りに変換した際のとんでもない破壊力、ってパワーアップしちゃったよ。
僕は煙草とは無縁なのだけど喫煙家な知り合いは波雲氏以外にも少しだけいて、あの煙がない辛さというのを必死に語られたという経験もあって、弱点かどうかはともかくあれこれと大変だね、と主に金銭面から同情はするが、正直、ピンと来てなかったりする。でも、煙草ってちょっと渋いな、と思ったりもしているけれど、煙草一箱の値段で食玩が買えちゃうからやっぱりそっちに行き、それが買えない辛さだったらもうビシバシ解りますよ。ミニフィギュアのレアを含めてコンプリートしようと箱で買っちゃってその月末に食糧難になるなんてアホの体たらくは日常なので。
ならばで、波雲氏が自宅マンションでくつろぐ時にたいてい手にあるマグカップの中身はブラックのコーヒーなのだが、カフェインが切れた波雲氏は一体どうなるかというと、別にどうもならない。ブラック無糖派なようで実は何でもいいとか言っていたことがあるので、つまり何でもいいのだろう。試しにケロシンでも注いでみようかな、嘘ですけど。
アクション活劇的ヒロインかどうかはともかく、一端のヒロインならやっぱりウィークポイントはあるほうが盛り上がるというものだが、不機嫌な態度と文句こそ四六時中撒き散らしているがその内容は、ダルい、面倒、眠い、邪魔臭い、腹減った、勝手にやれ、と、人間言語を何個覚えられるのか試されてるペットのポメラニアンの如くで、具体的に何が不満なのかは全くもって不明なので、その相槌を打つのに苦労しているのだ、とか裏話をしてみたりして。
あえて言えばまだ空を飛べないので、仮に空を飛ぶタロンなんかが登場すれば苦戦するかもしれないが、波雲氏のことだからそのうち飛べるようになっても不思議でもないので、弱点というより一種の見せ場になってしまいそうだが、燃えるというより笑えるシーンに仕上がりそうなのでやはりご期待とは違うだろう。ナグモスクランダーとかはやっぱり笑い要素ですから。
ならば、タロンと対峙してる普段はどうかと言えば、どうしてか完璧に西部荒野ナンバーワンなダブルハイパークイックドロウからのツインシルバーブレットはピンポイントのジャストヒットで、大袈裟でなく現代のガンマンなので、やっぱりピンチとは無縁なんです。
ちなみに早撃ちの達人ヴィンことマックイーンやリーダーのクリスことユル・ブリンナーの拳銃はピースメーカーだが、アーティラリーという変わったSAAはマニアックなようで、実はウエスタンヒーローでガンクレイジーとしても有名な俳優クリント・イーストウッドが公私混同で愛用していて、イーストウッドのファストドロー、早撃ち競技の演技ではない腕前は映画ローハイド時期のまだ若かりし頃にコンテストで好成績なほどだったりするが、勿論二挺拳銃なんてことはしてません、なんて西部劇な豆知識を入れてみたりしつつ、七人の時のヴィンの終盤の早撃ちときたらもう、惚れ惚れですので一見の価値ありです、とここでもまたしつこくマックイーンをぐいぐい押します。
それやこれやはさて置きつまりファンタジックアクションの定番として、タロンもっと頑張れよ、根性見せろよ男だろ、動く死体とかな怪物なんだろ、反則っぽく悪魔技使えよ、とかアンチなエールが出そうなのが波雲氏を取り巻く現状で、ビッグタロンとかブラックタロンとか、タロンシャドウとかタロンガールとか、そういうタロン側のバリエーションは現時点では気配もなく、悪役がそんなだから主役が引き立たないんだよ、なんて無責任な発言をしちゃってもいいものかどうか大いに悩むところだが、リアル志向なら現状維持からの状況解消が万事オーライながら、盛り上がり系を期待されるならやっぱりビッグタロンとかタロンガールとかシャドウタロンとかネオタロンとかロボタロンとかスペースタロンとか、まあ名前はどうでもいいが、毎回、波雲氏に秒殺されて、見付かるのを怖がっているであろうタロン連中にここは一つ大いにパワーアップしてもらい、不謹慎ながら波雲氏にはちょっとピンチになって頂いたほうがユーザーライクというもので、その場面では血ノリとかを大放出して衣装なんかもセクシー風に破けて貰ったりするんですよ。
そうすればほら、冬コミの椿波雲ぷにぷにレアフィギュアはダメージ版との着せ替えヴァージョンに進化してファンを納得させて、同人誌登場からそのまま月刊コミック連載スタートで、テレビシリーズアニメ化決定でOVAも登場して、2D波雲氏ぷちフィギュアとかDX超絶稼動椿波雲ガンマンスタイルとかも発売されて、ゲーム化は全ハードにが当然でアニメ版のOPは最新CGを駆使した悩殺ナグモダンスでファンをメロメロにして、CDアルバムも当然振り付け解説パート収録DVD付きが発売されて、某動画サイトで踊ってみましたMADなんかが出回った挙句に海外版も登場のNAGUMOブーム到来で、既存の二番三番煎じで飽き飽きしてる多くのユーザーも大満足で業界にも活気が戻り、気が付けば万事オーライ綺麗サッパリ丸く収まるという、見事なグッドエンドではないですか。
このアジア発の世界規模のNAGUMOブームの火付け役にして原作者たる僕には印税がたっぷりと流れてきて、細々に過ぎる蜘蛛の糸の如き絶滅待ちフリーターから一転ウハウハのダバダバのシャバダバだし、今は調合を間違えて強烈に過ぎて致死量に相当する練り辛子の親戚みたいな波雲氏も、どこかの段階でコロッとその態度を一変させて、ニュージャンルだったツンツンからツンデレに、ツンデレからデレデレになったけどその姿は僕にしか見せないという至極当然の設定を要求したら何とビックリ受け入れられて、次の誕生日の頃には僕の人生なんだか真っ白な薔薇色じゃないかウハ、となり、リアル世界もまんざら捨てたものじゃないんだな、と僕の方も心を入れ替えて、日曜朝の某最新プリティー娘軍団も納得のウルトラハッピーエンドなのである。
OVAシリーズのフィナーレの映像は幾多の戦いを終えた僕と波雲氏が南の小さなリゾート地にあるシンプルなチャペルで二人っきりでひっそりと、しかし当人同士は熱々で手作りのブーケを押し寄せる波に投げてそのまま柔らかく抱き合って、フェードアウトからのスタッフロールで次期OVA、椿波雲リターンズ、鋭意製作中乞うご期待と筆文字でドカンと出して、続編冒頭で遂に僕が天使さんから荒野なヴィン仕様のコルト・シングルアクションアーミーのピースメーカーを譲り受けてそれをキリキリとガンスピンさせつつ波雲氏と肩を並べ、とうとう現れたビッグタロンシャドウデーモンズ軍団の猛攻に二人っきりで敢然と立ちはだかる熱い展開を惜しげもなく序盤から展開して、OVAシリーズは意味ありげで終わらせて劇場版にシフトして、椿波雲・覚醒編は崇拝するスティーブ・マックイーンもビックリなスペースタロン襲来に対し、最新VFXにワイヤーを駆使したマーシャルアーツアクションを組み合わせたナグモ・ガンファイトによる熱くも甘いスリリングな展開盛り沢山な痛快ジャパニーズガンアクションアニメ新時代の幕開けで、カンヌとヴェネティアとアカデミーを総舐めにしてNAGUMO西部劇というジャンルが確立されて、いよいよの実写版はハリウッド作成の全六部作の大シリーズで、渡米した波雲氏を主役にマーベル的アメコミテイストを盛り込んだニューウエスタンとして歴史に刻まれて、ってあれ?
何だか話題というか論点というか何もかもか明らかにズレ倒してるような気がするのは僕だけだろうか。
この何やら意味不明な怪奇文章は確か、椿波雲という少々風変わりな彼女の日常をお届けするとかの第四弾だった筈だが、どうしてか名優マックイーンがビックリしているという僕もビックリなこの展開はつまり、平凡であることが平穏であるとは限らない、という友人からの有り難くも少々痛い忠告を無視するな、という教訓なのかもしれない、とブーイング覚悟でかなり強引に締めくくって、ナグモ・サーガだかレジェンド・オブ・ナグモだかナグモ・ザ・グレートだかの第三弾の幕にしたいと思います。
というか、ここいらで止めないと収拾がつかなくなりそうなので。
……寝顔が可愛いというのは犬猫に限らずで、当然ながら見た目だけは完璧な波雲氏もこの例に漏れない訳だが、ふかふかでフリース満載な枕を抱いてウフフと微笑みをこぼしつつだったりすれば、もうそれだけでハートキャッチなのだけど、波雲氏ときたら寝姿もまた男前というのか何というのか、随分と豪胆なその様子はとても人様には見せられず、椿夫妻、まだ見た事もないご両親が見たが最後、娘よ一体何があったのだ、と号泣するのはまず間違いないのだが、まだ昼間の平日の、残念ながら天候は悪いが比較的平穏なひとときをどう過ごすのかなんて波雲氏の勝手だし、あれこれ注文したところでこの人は誰かに従うというタイプでは断じてなく、自分より上の人間はそれこそ天界以外にいないとか言い出しても納得してしまう迫力を持っているので、その対照としての寝顔という意味では、今、すぐ目の前で豪快に睡眠を謳歌している波雲氏は、それはそれで可愛らしいと思ってしまう僕は、若干どころではないNAGUMOマニアの第一人者なのだろうが、黙っていれば美人、寝ていれば更に倍、みたいな典型が正にこの人で、かなりなリアリティで躍動感あり過ぎな等身大フィギュアか何かだと思えば、やっぱりこれはこれでアリだと頷くのである。
……って、寝言で、死ね、って言われましたが、どうしましょう?
出来ればもうしばらく人間やってたいので聞かなかったことにしますけど、直球ストレートに過ぎて胸にグサリと刺さる寝言というのは人生で初めてです。