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本と魔法と6人の高校生  作者: 伊月
図書館ではお静かに
4/6

閑話 能天気のひとり歩き

今回はハルたちが口喧嘩してる間のクウトの話です。クウトは口喧嘩は苦手です。

「…よいしょっと。」


 腕に抱えた本を持ち直す。


「(やっぱり後でみんなで行けば良かったかなぁ…。)」


 こんな厚い本6冊とか何考えてんだろう、と今更ながらにクウトは悔やんでいた。


* * *


 真剣に本を選んでいたカナの邪魔をしないようにと少し離れた場所で本棚を眺めていたが、いつの間にかはぐれていた。別段急ぎの用もないので捜索がてら本を物色することに決め、周りの話し声の中で苦手なものを聞き分け避けながら館内を歩き回っていた。クウトが行き着いたのは二階のもっとも奥。誰もいない、誰も来ないその場所はただのホコリっぽいだけの通路……だったはずだ。


 彼女は三階への階段を発見した。


「(こんな所に階段なんてあったんだぁ。)」


 能天気に思いながら好奇心のままに登りはじめる。蛍光灯も窓もないのに視界は明るいことに気づいても


「(現代科学すげぇ。)」


 的はずれに感心していただけだった。壁も階段も白い、コンクリートとは少し違う材質だ。登りきり見えたドアの取っ手に躊躇なく手をかけ回し引く。開かない。すぐさま押してみる。開かない。


「(カギでも掛かってるのかな?)」


 確認するがカギ穴がない。ここまで来て自分の抱いているワクワク感を手放すのは惜しかった。何かないかとドアに手を這わせる。


「(壁と同じ材質。少し脆いなぁ。こんなの建物に使っていいのかな?)」


 地震でも来たらポッキリいってしまいそうだ、などと考えているとドアに這わせていた指になにかが当たった。周辺を撫でると凹凸があった。肉眼では確認しづらく何かがあるということしかわからない。


「そうだ!」


 もはや遠慮する気は無い。どうせこの場には自分しかいないのだ。制服のポケットというポケットをあさりはじめる。


 ハンカチやティッシュのほかに飴が十数個、ペーパーナイフ、赤青緑の蛍光ペン、メモ帳などなど。引っ張り出した物のなかに目当ての物をみつけた。


「鉛筆はっけん!!」


 先端を指差すように持ち、凹凸に擦り付けると文字が浮かび上がった。


「ビンゴ!」


 興奮が収まらないのか大声を出すと、さすが響いたので一度落ち着くことにした。深呼吸をし、文字に向き直る。


「えっと…。見たことないなぁ、こんな文字。ん?」


 一目見て読めないと思った。だが、解ってしまった。見たこともない文字をクウトは『理解した』。


「『メシアの呼びかけにのみ応えよう。』」


 メシアって何?理解はしたが単語の意味が解らない。呼べば開くのだろうか。


「…すみませ~ん。開けてくださ~い。」


 彼女はいたってニュートラルだ。もう一度ドアノブに手をかけ押してみる。


「…開いた。」


 流石にないと思っていたため唖然とするがすぐ我にかえる。


「失礼します…。」


 散々無遠慮に振る舞ったが誰かいるのかと思い恐縮する。恐る恐る中を覗く。誰もいない。足音も聞こえない。ドアの後ろにもいない。


「どなたかいらっしゃいますか?」


 返事がない。


 部屋全体を見渡すと3メートルほどのやや高い天井と白い壁。そして色とりどりの大量の本が目に入った。全てしっかり本棚のに収まっているが配色がバラバラだ。おまけに全てが原色に近いため目がチカチカする。


 一体どういうジャンルの本だとこんなことになるのかと手近にあった本を取る。厚さや大きさは週刊の少年漫画雑誌くらいだ。作りはハードカバーに近い。硬いし重い。色は白。壁よりも白く表紙には何も書かれていない。軽く表紙を撫でた。


「…これって。」


 息をのみ弾かれたように本棚に目を走らせる。目的の物はすぐ集まった。赤、青、黄、緑、紫、そして最初に見つけた白い本。これらを平積みにして持ち部屋を飛び出した。


* * *


「(何であんなに焦ったんだろぉ…。)」


 あの後勢いそのままに階段をかけ降り、気がついたら中二階への階段の前だった。階段前では不良がたむろしていて通りづらいので一度一階に降りることにした。


 一階への階段の前で一階から聞き覚えのある声がし1,2段降り声をかける。


「あれ?みんな、どうしたの?」






お読み頂きありがとうございます。


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