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はじめましての小説
大きな図書館のすみっこに
その子供たちは集まっていました
だれにも邪魔されないように
だれも来ない場所をえらんで
話し合って
笑って
自分たちのキズをうめていました
大丈夫大丈夫
みんないるから
ひとりじゃないから
これは
ひとりぼっちだった6人と
本と魔法の物語
「はーい、今日のこの時限は図書館で自習です!なので皆さん、静かに自習してください!」
どこぞの歌のおねえさんのように高らかに宣言したのは、中年の女性教師。有って無いような忠告もそこそこに、散っていった生徒たち。どこにでもある公立のちょっと図書の充実した高校。その図書館の中二階で声があがる。
「よし。これで良いかな。」
赤茶色が揺れる。
彼は芹尾明羅。
少し気難しい性格の彼は、あまり人の来ない中二階で読書の為の本を探していた。図書館の一番使いやすい場所はうるさくてアキラにとっては不快でしかなかった。騒がしさから逃げるために中二階に来たが、特に読みたい物があったわけでもないので適度な厚さの本を手に取る。
「(結局みんなといると、だべって終わっちゃうんだけど。)クル、そっちは決まった?」
考えた後に近くにいるはずの人物に声をかける。すると、声をかけられたであろう人物が本棚の反対側から手を振った。
「もうちょい待って。確かここだったはずなんだけど。……あ、あった。アッキーお待たせ。」
科学雑誌片手に眼鏡の少年が顔を出す。
彼は枢戸和久。
少年という表現はあまり適切でないような高い身長と黒に近い群青の髪を持っている。外見からよく取っ付きにくそうと誤解されるが、本人はいたって穏和である。冷静な優等生タイプといえば分かりやすいだろう。
「いつもの所でいいんだよね。」
この学校の中二階は2つある。1つは今、二人のいる比較的小さい方でこちらは本と読書のための椅子が多い。もう一方は自習室として使われるために椅子と机しかない。四隅にはグループでの自習用に個室がある。この中二階にはほぼだれも来ないため、一番入口から遠い個室に彼らと仲間は集まる。
ちなみに、この2つの中二階はつながっていないので一度、騒がしい一階に戻らなければならない。
「あぁ。多分みんなもそのつもりだと思う。」
「だよね。」
そう言って二人のは仲間と安らげる場所にいくため、足早に階段を降りていった。
読んでいただいてありがとうございます。
更新は不定期です。