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血塗れたチュートリアルという出目がでました

ただ一言、難産。

違う、サイコロが悪いんや(サイコロ判定は後書きにて)。

大丈夫、まだ5話だから見てる人は少ないから。

久しぶりに覗いた前作のPV100万には届いていない。

あれ、100万って何?

動き出した奴はさっきの魔物に比べ、動きは早いようだ。

ズカズカと地表に響く足音を立てて、近くにいた俺の方にその肥大した右手を振りかぶった。

俺は下から掬い上げるように棍棒を奴の右手に振りぬいた。

力比べは俺が勝ったらしく、奴の右手は上へと跳ね上げられる。

ここで普通は追撃、といきたいのだが俺は後ろへと距離を離した。

予想以上に手が痺れて不安だったのだ。

地面を叩いた時の威力で実感した俺の力は正直、相手を圧倒すると考えた俺の過剰な自信は奴との一撃で盛大に揺らいだ。

魔物は俺に再び、今度は横に右手を振るった。

俺は両手で棍棒を支え、それを凌ぐ。

ビリビリと手が痺れと共に実感した。


俺は凡人なのだ。

貰い物の力で何でカッコつけてるんだ。


魔物は再び、棍棒を振り下ろす。

それをまた、支え、凌ぐ。

衝撃で地面に足が埋まり、風圧で押しつぶされそうになる。

業を煮やした魔物は奇声をあげて、俺を棍棒で滅多打ちにする。

まるで子供の癇癪のように、奇声と共に風圧が俺を押しつぶしにくる。

それをただただ、俺は受け、凌ぐことに徹する。

それを受けている間に先ほどまでの自分を思い出し、どうしようもなくイラついていた。


貰い物の力でヒーロー気分だった自分。

それは今までの自分とはあまりに違い、理想で、遥か過去に諦めた自分。

ヒーローとか特別というのは…


魔物が大きく右手を振り上げた。

そして、振り下ろす…


【特別というのはあいつの事だ。】


直前、光の矢が奴の目を抉った。

奇声をあげ、暴れる奴から離れ、俺はあいつを見た。


誰よりも美しく


誰よりも頭がよく


誰よりも運動が得意な


俺が心のそこから■■■、幼馴染。


俺はその姿を複雑な表情で見つめ、目線を前に戻した。

その瞬間に、頭に火花が散った。

目玉が沸騰し、喉が焼け、心臓が一瞬止まる程の衝撃。

見ると俺の左腕が抉られる様に大穴が開いている。

前には血が滴る左腕の針と笑うように奇声をあげる魔物。

崩れ落ちる直前に奴の針が光るのを見て、奴の名前と戦う直前に針から電気が流れているのを思い出した。


だから、俺は凡人なんだよ。


そう、自分で自傷するかのように笑みを浮かべ、倒れる直前に踏みとどまる。

顔を上げると奴はいなかった。

見渡すと奴は俺を放置し、葵の方へと向かっていった。

俺は慌てて、奴を追った。

しかし、その差はドンドンと広がる。

というか走れない。

まるで走り方を忘れたかのように体が思うように動かないのだ。

俺が四苦八苦している間にも葵は後ろに下がりながらも矢を放つ。

しかし、それは甲殻の鎧に阻まれ、特にダメージを受けているようには感じない。


「あ~、もうッ。…こっちだよッ!」


葵は無傷の相手に苛立ちながらも俺の方をチラッと視線を向けると奴をそのまま森の奥へと誘導し始めた。

そして、その戦場は徐々に俺から離れていく。


そう、いつもそうだ。

俺が足踏みしている間にお前は先に行く。

俺が転ぶと足早に戻って問題を解決し、俺が強がって突き放し、また俺はお前の背中を見る。

こっちでもそんな生き方になるのか。


唯でさえ、遅い歩みを止め、いつまでも変わらない情けない俺に対して俯く。

すると、葵の行った方角から大きな音が聞こえた。

顔をあげると遠くからこちらに何かが吹っ飛び、近くの大木に衝突した。

見間違いであろう。

心当たりがあったその物体を恐る恐る見に行く。

大きな大木の影、見ると幹が少し赤く染まっている。

まるで…、恐る恐る大木の裏へと回った。

少しずつ、少しずつ見えたそれ。


「いや、おい…何だよそれ?」


それの手足は骨すら見えるほどにぐちゃぐちゃに曲がっている。

それの頭からは体と周囲を真紅に染め上げる、こぼれる様に血が流れている。

そして、吐きそうになる、むせ返る様な血の臭い。


葵だ。


俺は動かない足で恐る恐る葵に近づく。

生きているのかもわからない。

いや、この怪我で生きているとは思わない。

なんだよ、なんだよこれ。

棍棒が自然と手から落ちた。

胸が、涙が、表情が、全てがおかしくなった。

自分でも何がなんだかわからない。

ただ、無性に声をあげた。


「…ぁぃ……」

「葵ッ!?」


葵の声が聞こえた気がした。

葵の横に、血で濡れた地面に膝をつき、顔を覗き込む。

大声で呼びかけると葵はうっすらと目を開けた。

俺は比較的無事な葵の左手を掴み、大声で呼びかける。


「ねこたまとダグラスに助けを呼んでくるからッ。だから、しばらくッ…」

「…ぁぃょぅ…、…ぇ…ぃ」


葵が俺の手を強く握り、何かを囁く。

俺は葵の口元に耳を近づけた。

そして、途切れ途切れの口調で囁いた、何度も、何度も。


『大丈夫、弁慶?』


弾かれたように顔を離し、この死に体でも俺の身を案じる葵は笑みを浮かべていた。

いつものように、強がる俺を守ろうとする葵。

それが情けなく、ふがいなく、目からこぼれる涙を乱暴に拭いた。


「今、助けを…」


俺の言葉に葵はにこっと血濡れの笑顔を向けた。

その顔が何かによって潰された。


「…ぁ」


血飛沫が俺の顔に掛かった。

それはとても温かく、視界の半分を赤く染めた。

横から奇声が聞こえた。

血と涙で歪んだ視界には両手を、左手の針で俺の、右手の目の前の棍棒で葵の血に染まった奴だ。

涙を拭くのも忘れ、ただ奴を呆然と見た。


「…ぁ」


もうどうでもいい。

前の世界の自分とか、今の世界の自分だとか。

葵を守れなかった俺とか。


「…ぁあ」


ただ、ただ、この内に燻る何かを吐き出したい。


「…ぁああ」


それ以上に…


「…ぁぁぁぁあああああああああああああああッ!!」


俺は葵を殺したお前を、こんなにも殺したいッ!!


動かない左手を垂らし、走れもしない足を地面に突き立てる。

迫るほどに奴の顔に接近し、ひたすらに奴の目を睨みつける。

奴が奇声をあげ、頭上に大きく右手を振り上げた。

その際に棍棒に付着した葵の血が俺の顔に掛かり、視界を完全に真っ赤に染めるもなぜか目を閉じる事はなかった。

奴の攻撃が頭に迫るのも気にせずに、俺はいつのまにか掴んでいた棍棒を横に、力の限り、奴の胴体に振るった。

音は聞こえない。

ただ、奴が横に吹っ飛び、血に染まった針が砕けたのを見た。

それを視界の隅に入れつつも、ただ何も考えもせずに追撃を行う。

しかし、思うように動かない足は奴に体制を整える隙を与え、奴も肥大した右手を振るった。

何処かで何かが折れる音が聞こえた。

でも、もはや気にすることではない。

少し、体が浮き、横を見ると俺の左半身に奴の棍棒がめり込み、左腕も千切れて、地面に転がっていた。

痛みも、喉の奥から血がこみ上げる感じもわかる。

だが、それがどうした。

それ以上に…


「ア゛オィのほうガイタいにぎまっでるだロウガァァァアアアッ!」


血を吐き出し、棍棒を奴の足を叩き落とした。

奴は崩れるように膝をつき、痛みで奇声をあげるが耳には入らない。

俺は頭上に棍棒を振り上げ、


「ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!」


棍棒を奴の頭に振り下ろした。

顔はへこみ、緑色の血が流れる。


棍棒を奴の頭に振り下ろした。

さらに顔はへこみ、緑色の血で胴体を染める。


棍棒を奴の頭に振り下ろした。

緑色の血は地表に流れる。


棍棒を奴の頭に振り下ろした。


棍棒を奴の頭に振り下ろした。


棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を…


「オーライオーライ、それまでだ。…ベンケイ、もう大丈夫だ」


棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を棍棒を…


「そいつはもう死んでる。そろそろ光になるだろうな。そしたら、その棍棒を何処へ振るう」


…………


「もう、終わったんだ」


棍棒を離し、それが大きな音を立てて地面に落ちた。

手は緑色の血を、赤い血と、紅い血で染まっていた。

口には血の味と涙の味と…


声をあげて、泣いた。

子供の頃のように、葵がいた時の様に、泣き叫んだ。


あんなに妬んで、憎んで、嫉妬して


あんなに憧れて、見守って、尊敬して


あんなに嫌いで、好きな葵が


葵が…


ただただ、泣き叫んだ。

勝敗=3以下勝ち、4以上負け

サイコロ判定=2勝ち

弁慶負傷=1に近いほど死、6は無傷

サイコロ判定=1…!?

葵負傷=1に近いほど死、6は無傷

サイコロ判定=1…!?

き、緊急判定弁慶サイコロ判定=2…皮一枚

緊急葵サイコロ判定=…1

サイコロが主人公達を殺そうとしている!?

(注)公平を期すためにサイコロは携帯アプリです

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